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徒然なるままに

作者: じょぜまる


 レンジで温めすぎてしまった。熱くなりすぎたコンビニ特性チャーハンおにぎりを、指先でつまむようにして持ち上げて、もう片方の手であらかじめ引っ張っておいたTシャツの上に落とす。

 連休が明けた、深夜と明朝の間のような時間。ものの見事に崩れ切った生活リズムと、バラバラな天気がもたらした夏にしては寒すぎる空気とが、僕の眠りを妨げていた。

 いやはや夏バテとは怖いもので、食欲がなくても何かを食べたり飲んだりしていないと大変なことになるのだ。今年もそれのせいで一度トイレに深々と礼をしてしまった。

 昨晩、友人たちと自室で遊んだ際に開けた500mlのペプシ缶をあおりながら、なんとなく温くなったチャーハンおにぎりをもそもそと食べる。特にやることもないので空いてる手にスマホを持ちアプリで将棋をパチパチと指す。窓の外はまだ薄暗く、部屋には控えめな音でアプリの安っぽい効果音が鳴っている。

 食べ終えたごみをレジ袋に落としてふと気づく。そういえば数日前に買った冷凍物のチャーハンがまだ残ってた。開封して半分ほど食べてまだ冷凍庫の中で眠ってる。はは、家にチャーハンがあるってのに昨日の僕は晩飯の一つとしてチャーハンのおにぎりを買ってしまったらしい。

 コンビニの食べ物は大体少し高い。そして量も少ない。我が家ではコンビニでご飯を済ませるっての稀なことだった。今思えば毎日しっかり料理を作ってくれた母親には感謝の気持ちが尽きないけれど、中学までお小遣いというものもなく数十円の買い物でも頭を抱えるような少年だった僕には、化学調味料で刺激的に味付けされた彼らは非常に魅力的に見えた。

 僕はもうじき二十歳だ。両親のおかげでお金もいくらかある。一人暮らしをしているから食べるものも自分で決めることがほとんどだ。今の僕には好きなものが買えた。好きなものが食べれた。どちらもあまりにも贅沢なことをしなければという条件付きだけど、おおむね今の生活で困っていることなんてない。

 とても、とても自由だ。けれど、自由な僕の口の中で崩れるチャーハンには、あの時駄菓子屋で唸っていた少年が確かに感じていた何かは、もう残ってはいなかった。


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