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サイバネに誓って  作者: 窒素
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Hello World



【Hello World】



【ようこそ、名前を教えて下さい。】


真っ白な空間に座っている私と、画面がひとつ。


何故か疑いもせずに名前を入れる。

これは転生するための行為だと、知らずのうちに理解している。



【認証しました。】



【転生先への特典を求めますか?】



【yes or no】



もちろんyesを選択する。


【特典を挙げてください。】



「身体能力の向上、それも人類を遥かに凌駕くらいのチート性能がいい。それと基本と思わしき魔法と、魔法の習得能力にも補正をかけてほしい。情報とかは特にいらない、最初から全部知ってるなんて面白くなさそうだ。ついでに剣技も一通り欲しいな、最低限の身は守れないと。」



【許可しました。】




瞬間、白い空間は消え、闇に飲まれる。

意識が、消える。










 なんだか知らないが、所謂異世界転生モノってヤツか、なんともご都合主義だが楽しそうな話じゃないか。

 さあ何をしようか、王姫との恋愛?ネズミ講でもして金を稼ぐのが先か、ドラゴンでも倒して肉を食べるのも夢だ、蛮族と共闘するのもいい、魔王に自分がなるのだって悪く無いだろう。

何せ素晴らしい特典付きだ、多少の努力はもちろん必要だが、何どんな世界でも役に立たない事はないだろう。 さあ、楽しい楽しい転生生活で第二の人生といこうか。









目を開けるとそこは、異世界だった。

いや多分異世界だろう。

見たことがないモノだらけなんだ、異世界には違いない。

記憶はある、転生した。その記憶だけはある。


しかし、それ以前の記憶はない。

まあそこは今問題ではないとして……。


空を覆う鬱々とした灰色の雲。

遠くにかすかに見えるのは、空に向かって生える超高層ビル、それを守るように乱立

するタワーと工場のような巨大な配管だらけの建物。

目の前の通りには、建築法も何もあったもんじゃない増改築まみれの建物。過剰に飾り付けられた電飾がギラギラと町並みを照らし、通りのいたるところに設置された大小様々な液晶モニターが、思わず身をすくませる程の音量で宣伝の口上を垂れ流している。

そして、奇妙なカタカナと漢字の組み合わせの大量の派手な看板。

【クネクネ違法】【新鮮魚介類!汚染度E以下】【プレイスメント美味街ヘヨウコソ】

意味がわかるようでわからないものだらけだ。

通りを行き交う人々の姿もまた異様だった。頭から色とりどりの発光するケーブルを生やしているなんていうのは大人しいほうだ。肌そのものが発光している者、手足や顔を機械に置き換えた者、今こちらに歩いてきた男など3m近い長身だ。


今ここから見える限りの範囲に植物らしきものはなく、用水路らしきところには黒々としたどろどろした液体が泡をたてて流れている。


「なんだってんだよ……。おい、なんだこれ……。」

見たことのない町並みに、おかしな風体の人々、鼻をしかめたくなるようなすえた臭い。



「まさか、おいまかさだけど。転生って、こんな世界にか? 俺のファンタジーは? ドラゴンは? 現代知識チートは!?」



「おい、おいおいおい、クソッ!ファック!ファーーーック!!」

混乱した頭で叫ぶ、大丈夫、声を出せば少しは落ち着くはずだ。

俺の叫びすらも、この通りの騒々しさの中ではすぐに掻き消える。


よし、よしまて。 落ち着こう。 現状を見つめないといけない。 よし、俺はできる、できるはずだ。


「ふぅー。ッグフッ!ゴフッ……」

大きく息を吸おうとして、匂いでむせてしまう。 

なんだってんだこの街は。


周囲を確認しよう、よくわからないが商店街みたいなところだ。日本語のような言葉で書かれた文字、少なくとも言葉はなんとかわかりそうだ、単語の意味はわからない物も多そうだけれど。

続いて認識しないといけないのは何だ、落ち着け。


「お兄さん!どうしたの?キマっちゃった?」

不意に声をかけられた俺は激しくビクついて振り返った。

声をかけてきたのは露出度の高い服を来た若い女だ。

女はその複眼じみたサイバネアイでこちらをにこやかに見つめている。

「悪いの掴まされたんでしょ。最近多いんだよね、そういうの。」

「その点ウチのは絶対安全だよ!私だって毎日射ってるけど……ほら!なんともないでしょ?」


見てって見てってと手を引っ張る女を振り払って走りだした。

どこへ?とにかくここ以外だ。俺はできるだけ静かで人の居ないところを目指して走り続け、高層ビルの立ち並ぶ区域に出た。


クソッ……さっきまで俺は何を確認しようとしていたんだったか

あ、そうだまずは手持ちだ。 それと俺は今どんな格好をしてる。そこからだ。


近くの建物のガラスに姿を映す。

まるで浮浪者みたいだな。

髪はボサボサ、切りそろえてすらいない伸び放題。

払い下げのサイズの合わないミリタリージャケットみたいな物をそのまま着続けてますみたいな服。 腰のポーチも随分くすんでいるようだ。

俺、生前どんな生活してたんだ? というかこんな格好だったのかそもそも? 記憶がない。


「まあいいか、そこまで醜男ってわけでもないし、身だしなみ整えれば悪くはない程度だろう。」


口に出して慰めるように言う。

さて、と。

その場に座り込んでポーチを確認する。


小ぶりのナイフがひとつ

四角い不思議な形をした500mlペットボトルの水がひとつ。

なんだこれは、端子? チップ? なんか銀と緑に光るチップみたいなものが5つづつ。


「クソッ、まったくわかんねぇ、わかんねぇぞ……。何しろってんだこんなの……。」


また混乱で頭がいっぱいになってくる、声を出している間は少しは冷静になるはずだ、落ち着け、まずは落ち着かないといけない。


「クソッ!ファックだ!まったくファックだクソッ!!」

立ち上がってふらふらと歩き進む、まずは情報だ、情報がないと何も出来ない……。


ふと、通路の奥からライトがふたつ、こちらを照らしている。


人か? 人ならとりあえず助かった、まずは話してみないと何もはじまらない。


「誰かいるのか?」


そんな風に声をかけながら近づくと、同じ服装をした男が二人。

制服か何かか? 青みがかった黒の背広と、チョッキ。

ああ、なるほど警察か。 まあそりゃ町中でこんな見た目のが叫んでたら通報もされるもんか。まあでも警察なら悪いようにはしないだろう、少なくとも情報はある程度仕入れられるはずだ。


二人組の男が近づいてくる、何も言わずに。


「あ、どうも、こんばんわ?」

こっちからとりあえず話しかけてみないことにはな。


すると男たちは無言で、お互い視線を見合わせ。


警棒で、殴りかかってきた。


「はっ?」


思う間もなく、額に鈍い痛みが襲ってくる、バランスを崩して倒れてしまう。


そして、男達は容赦なく倒れた俺を殴り続ける。


「や、やめ!やめて!やめて!!」


必至で抵抗するも、体を丸めて守る事しかできない。



「チッ、こんな時間に通報かと思ったらヒッピーかよ。ったく外出禁止時間に外に出て大声でわめきたてるなんて、薬漬け共め。仕事を増やすなゴミが。」


大柄の男に腹を思い切り蹴られる。口から嗚咽と空気が漏れる。


「まあいい、さっさと脳焼ききって帰るぞ、おい首出してくれ。」

「なんでこんな汚らしい連中を触らなくちゃいけないかね、汚染されそうだまったく。」


大柄の男が髪を掴んで首筋を露出させる。

もう一人が何やらスタンガンみたいな形の機械を押し当てようとする。


「あ?コイツコードが無い?生体認証コネクタはどこだ?」

「まさか無いわけがねぇだろ、見せてみろ。 ったく、ってあ? 無い?」

「おい、この場合どうなるんだ、こいつは何だ?スラムですらコードがない人間なんてのは存在してるわけがないんだぞ?」

「クソッ、めんどくせぇな、手間だが殺してミンチにして見なかったことにするのが1番楽か?」

「手間だし手柄にすらならねぇ、クソッ!」

掴まれた頭を地面へ叩きつけられる。


このままじゃ、死ぬ。 こんなよくわからない世界で、何一つできないまま。


俺は何だ?俺は? 俺、俺の名前、そういや俺の名前……。


「アアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


無闇矢鱈に腕を振り回した、無理やり男たちを引き剥がし、逃げ出す。



「クソが!暴れるなクソッ!なんて力だめんどくせぇ!スパイダー!スパイダーの準備は!!撃ちこめ!殺せ!」


背後で何か音がする、ようやく思い出した。 そういえば、俺チートだなんだって力もらったはずなんだよな。 振り返り、飛んでくる蜘蛛みたいな弾を認識する。

10mもない距離で、その弾道を予想して避けきる。


「は? なんだあいつ、今スパイダーを見て避けた?」

「サイバネか!しかも神経までいじってやがるな畜生! 見た目にも出てねぇってことは相当高級品だ!ただの中毒者じゃねぇぞ、応援を呼べ! 久々の大捕り物になるぞ!」





応援、まずい、まずは逃げないと。


全力で走りだす、目の前のビルの壁の突起を伝い、壁へ駆け上がる。


下では罵声がしている。





逃げる、まずは逃げるぞ。 どこへ。 どこでもいい、ここ意外へ逃げなければ。




知人に編集をお願いしましたので更新しました。

続きは近々

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