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俺、死んだの?  作者: と〜や
神の国編
7/73

7.夢

短いです。

「はーい、神原さん、回診の時間ですよー」


 白衣の天使が今日もやってくる。この病院、ナースのレベルだけはめっちゃ高い。――但し、俺の担当ナースを除いて。

 まあ、担当って言っても名ばかりで、実際は病棟のナースたちはシフトで入れ替わり立ち代わりやってくる。

 このフロアにいるナースは八人ぐらいかな。三日ぐらいで一回りして、最初のナースがやってくる。

 昨夜のナースと今朝のナースは結構好みだった。昼で交代なのか、昼以降は本来の担当ナースだ。

 これが実は看護師長だそうだ。道理でオバさ……年季の入ったベテランなわけだ。

 とはいえ、手術前は大してナースのやることはないようだ。

 ああもちろん、バイタル取ったりするのはルーチンワークで処理済みだし、点滴と注射と採血もルーチンワーク化してるから、特に何かってことはない。

 まだ自力で歩けるし、風呂も自分で入れるし。メシも歩ける人は自力で取りに行くし、下膳も自力だ。

 手術後はたぶん全部やってもらうことになるんだろうな。

 痛いのと引き換えに楽ちんライフに突入なんだろう。

 まあ、手術が終わって目が覚めたら分かるさ。

 回診の先生と話をして、薬剤師が薬を持ってきて、メシ食って薬飲んで風呂入って寝る。

 ただのルーチンワークだ。


 ◇◇◇◇


 おかしい。

 何日経っても手術が始まらない。

 気がついたのは何回目だったろうか。

 ナースと馬鹿話しながら、この話、前にもしたなあと思ったのに、ナースは全く覚えていなかった。

 いつもと同じ日。手術の前日。

 何度も同じようにバイタルを取られ、回診を受け、風呂に入る。点滴され、注射され、採血される。

 食事もいつも同じ。飽きた。

 いつになったら『明日』になるんだ?

 明日が来ないと手術にならない。

 いつまでも俺はここにいなければならない。

 一度、意を決して病院を脱走した。金がなかったからバスにもタクシーにも乗れなかった。歩いて家に戻った。家のベッドに潜り込んで、電話も無視、やってきた客も完全無視して夜を迎えて。

 自分ちのベッドに潜り込んで寝たのに。

 目が覚めたら病院のベッドの上だった。

 もう、おかしいのは間違いない。


「誰か! ここから出してくれ!」


 頭がおかしくなりそうだ。誰か、俺を救い出してくれ。

 ここは俺の知ってる世界じゃない。

 頼む、誰か。

 誰か……。

 不意に銀髪の子どもが脳裏にひらめいた。

 俺に外国人の子どもの知り合いはいない。なのに、なぜこんなにも懐かしく思うのだろう。

 振り向いて欲しい。

 こっちを向いて、笑って欲しい。

 いつものように、前歯を全部見せる笑い方で。

 舌っ足らずなその声で、遊人と呼んで欲しい。

 中身がおっさん臭かろうが、そんなことはどうでもいい。

 頼む、俺を呼んでくれ。

 頼む。


「りお……」

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