ここはどこ
いつも、僕は空を見上げていた。
これといってすることがない。いつもそうだ。やることといえば自分の視界に入ってくる長い爪を研ぐか、毛づくろいをするか。もしくは、真ん中の部屋の噴水に浸かるか。
大きく伸びをして、欠伸をした。これも347回目。
噴水の上にはステンドグラスのような色彩豊かなガラスが張られている。そこから日差しが降り注ぐ。・・・はたしてこれは、日差しなのだろうか。何となく想像で言ってみただけだ。きっと、「日差しはこんなものなんだろう」と。
噴水からはとめどなく滾々と水があふれている。幾ら水を飲んでもなくなりはしないし、食糧はレバーを押すと勝手に出てくる。どこから出てくるのかということも231回考えた。結局答えは出ない。だから衣食住には困っていない。水も食糧も、あたたかな部屋もある。だが、ここが何処なのか、今がいつなのか、朝なのか昼なのかさえ(夜は真っ暗なので分かる)よく分からないままに生きている。
僕は、ライオンである。
あの百獣の王である。(と言われているらしい)
しかし僕が生きているのは、広大なサバンナではない。
生き物を狩り、仲間と共に生きる、集団の中で生きているのではない。
僕は、もうずっと、気付いたら、一人ぼっちだった。