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57話:装備品を求めて

「ピクルス様。これなんかどうですかね?」


 サイ君が勇者一行装備品一覧と書かれたカタログを開きその中の一つを指差す。


霜焼の槍(しもやけのやり)。攻撃力も申し分ないですし使い慣れれば吹雪をおこす事もできるみたいですよ。ただ物凄く冷たい金属でできているので長時間使用すると霜焼けになってしまうのが難点ですが」

「う~ん……ちょっと違うんだよなぁ」


 ミックスベリー城へ戻った俺はノワクロ対策と今後の事も含めて強力な効果を持つ武具のリストアップを開始していた。このミックスベリー城に限らず魔王軍には人の装備品はほとんど置かれていないし、そこら辺で手に入る武具では高い効果は望めない。折角なら特殊効果付きの伝説級武具を手に入れる為サイ君に手伝ってもらい俺に合う武具を探しているのだった。


(できれば防具はノワクロが装備していた透明化の白装束が欲しいんだけどな……)


「あっ、ピクルス様。これなんかどうですか、乾坤一擲の斧けんこんいってきのおの。相手を一撃の元葬りさるか自分の腕が吹き飛ぶか二つに一つの強力な……」

「サイ君。呪われた武器ばかりチョイスするのをやめてもらえるかな? それに俺はどちらかというと剣派だ」


 色々な呪装備品をグイグイ進めてくるサイ君にくぎを刺す。


「それならそうと早く言ってくださいよ。それに特殊効果付きの武器なんて大体が曰くつきの代物ですよ。大なり小なりリスクがあるのは覚悟してもらわないと」


 そう言ってまた別のカタログを持って来るサイ君。


 調べて行く内に分かった事だが所在が分かっている強力な装備品のほとんどは勇者が持っているか『聖域』と呼ばれる洞窟に保管されている。『聖域』は『聖水結界』と同等の効果を持つ場所でその装備を持つに相応しいかを判断するため天然のゴーレムやエルフが守護しているらしい。つまり現状魔王軍の管轄外の場所にしか強力な武具は無いという事になる。


「あ、防具の方なら無条件で特殊効果付きの物って結構あるみたいですよ。その代わり防御力は多少落ちますけどね」


 二冊目のカタログには主に防具が載っており確かに注釈には様々な特殊効果が書かれていた。


「ふ~ん」


 肩肘をつきながらペラペラとカタログのページを捲る。


(そういえば前ピクルスは人間の鍛冶屋をさらってレアメタルで武具を作成させたんだったな。で、その鍛冶屋に持ち逃げされて作られた武具は魔王軍の脅威になっているとか……)


「……サイ君。俺が昔連れて来た鍛冶屋ってどんな奴なの?」

「急にどうしたんですかピクルス様?」


 首をかしげながら俺の顔を覗き込む。


「いや、その作らせた武具の中に使える物がないかなって」

「私は鉱物を持って行くときに何回か顔を合わせたくらいなのでよくは知りませんけど。それこそピクルス様がよくご存じなんじゃないですか?」

「ま、まあそうなんだけど、ちょっとど忘れしちゃってさ」

「もうピクルス様、しっかりしてくださいよ~」


 サイ君は呆れた表情でこちらを見ながら溜息交じりに話を続ける。


「確かスクエア様の紹介でしたよ、あの鍛冶屋は」

「そうなんだ、じゃあいいや」

「え? いいんですか。多分スクエア様に聞いたらすぐ分かりますよ?」

「いや本当にいいから、今の話はもう忘れて」

「呼んだかのぉ……」


 背後から癇にさわるのんびりした声が聞こえる。

 ……ヤギ爺……


「呼んだかのぉピクルス」

「よし、サイ君。これにしよう。この風の腰巻(かぜのこしまき)って奴。速力もアップするみたいだしとりあえずこれでいいや」

「え、でもこれ市販品ですけど?」

「いいんだよ。この話はまた後からね」


 カタログを手に取ってその場を立ち去ろうとする俺の手をガシッと掴むスクエア。


「何故じゃ? 何故無視するんじゃピクルス? 耳がおかしくなってしまったのか?」

「(ちっ……)あ、スクエア殿。いらっしゃったのですね気づきませんでいた。それでは私は急いでいるのでこれで……」


 手を振りほどき軽い会釈をした後、早々に部屋のドアノブに手をかける。


「あ。スクエア様、丁度良かったです。実は大分前の話になりますがスクエア様が紹介してくれた人間の鍛冶屋。あの人間がどこの誰だったかピクルス様が忘れちゃったみたいで教えてもらいたいんですが」


 サイ君、余計な事を!


「ほほ、なんじゃなんじゃ。たるんでおるのぉ」


 長い髭を触りながらヤレヤレといった表情でこちらを見るヤギ爺。こいつに言われると一層むかつくな。……まあ一応聞いておくか。


「……すいません。で、誰でしたっけ」

「わしも忘れた」


 お前も忘れたのかよ!?


「もう、お二人ともしょうがないですね~」


 サイ君。俺は忘れたんじゃなくて本当は知らないんだ! 俺をこのヤギ爺と同列に語るのはやめてくれ!


「じゃがどこの町から連れて来たかは覚えておるぞ。何ならわしが付いて行ってやろうか?」

「本当ですか? 良かったですねピクルス様」

「気にするな、ピクルスには先日のハツヒノデの件で世話になったからのぉ。貸しじゃ」


 貸しなのかよ!


「いやスクエア殿はゴコウ山から戻られてまだろくにお休みもされていないでしょう。場所さえ教えてもらえれば大丈夫です。今回は『朱雀』と『青龍』を連れて行く予定でしたから」


 こいつと行動を共にするなんて冗談じゃない。頼むからお前とキツネはどこか遠い所でひっそりと暮らしてくれ。


「ほ? なんじゃ、それならそうと早く言わんか」

「すいません。それでは……」

「ではすぐに支度をしてくるから待っておれ」


 そう言っていそいそと部屋を出て行くヤギ爺。


 ……は??


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