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天才軍師はフェレットでも構わない~ブラック企業勤務の俺でも無双できる世界~  作者: 赤城 マロ
カンスト勇者 ノワクロ編

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47話:四獣王

 ビースト軍団には四獣王と呼ばれるミックスベリー城を守護する魔物がいる。


 四匹の魔物は『青龍』『朱雀』『白虎』『玄武』と呼ばれ、その強さはミックスベリー将軍に次ぐ強さと言われるビースト軍団が誇る最強クラスの魔物だ。

 

 名前だけは聞いていたがミックスベリー城の秘密兵器である四獣王はその姿を滅多に現わす事は無く普段は城の地下深くで急場に備えて力を蓄えていた。

 しかし先のポシェットの一件から俺の重要性と発言力は強さを増しておりこの四獣王についてもミックスベリー将軍の許可が下りれば自由に従属を許可されていたのだ。


(とはいえ二つ返事であっさり許可が下りたからな。あのノリだと四獣王パン買って来いとかでも許可が下りた気がするな……)


「ピクルス様。『朱雀』様と『玄武』様をお連れいたしました」

「すまないな。モルフォ」


 モルフォと入れ替わる様にしてドアからまず朱雀が入って来る


「ちゅんちゅん! ピクルスちゃん。呼んだでちゅか?」


 赤茶色の頭に背中には縦の黒斑、ふっくらとした胴体。可愛らしい黒いくちばしに白帯の入った翼。

 四獣王の一人『朱雀』ニュウナイスがピョンピョンと跳ねながら部屋に入って来る。


 うん……。雀なんだよなコイツ……


 ここに来る前に初めて顔を合わせた時は目を疑ったものだ。『朱雀』と言えば鳳凰的な姿かたちをイメージしていたがちょっと大きいただの雀である。しかも赤ちゃん言葉の……


(それに何故お前まで五階エントランスから落ちた? 飛べるだろお前は!)


「急に呼び出して悪いなニュウナイス。実は頼みたい事があるのだ」

「そんな~水臭いでちゅよピクルスちゃん。僕とピクルスちゃんの仲じゃないでちゅか。なんでも頼んで! な~んでも頼んでっ!!」


 嬉しそうに羽根をばたつかせる朱雀ニュウナイス。

 どうやら長い事ミックスベリー城の地下にいたせいで人と話す事に飢えているようだ。


(雀って警戒心が強い鳥じゃないのかよ)


「そ、そうか。ところでトレスマリアはどうしたのだ?」

「ちゅんちゅん! そこにいまちゅよ?」


 ドアの方を指差すニュウナイス。指先の方向に目を向けるとドアの陰に隠れてそっとこちらを見ている『玄武』トレスマリアの姿があった。


 白い全身に時折アクセントとして入るピンクの模様、つぶらな黒い瞳。そしてひと際目立つ長い耳。


 うん……。ウサギなんだよなコイツ……


 初顔合わせの時には思わず「亀じゃねーのかよ!」と突っ込んでしまったが冷静になって考えれば別に玄武は亀を意味しているわけではないからな。

 まあウサギに『玄武』の名を冠する意味も全くないけど……


 しかしこちらを見たまま一向に部屋の中に入って来る気配がないな。どうしたんだ?


「トレスマリアよ? どうしたのだ? 早く部屋へ入ってこい」

「……部屋に地雷が仕掛けられているかもしれない……入って欲しければ私の安全が保障されているという証拠を見せろ……ぴょん」


(警戒心強ぇぇぇぇ!! ずっと地下にいたせいで雀とは真逆の精神進化を遂げちゃってるよ!)


「い、いや。安心するのだトレスマリア。ここはアールグレイ将軍の城。地雷など埋まっているはずがなかろう?」

「……それはピクルス君の価値観でしょ……世界は危険でいっぱいなのよ……現に私はつい先日ここの城の五階から落ちて足を挫いている……ぴょん」


(それはお前が馬鹿なだけだろ!)


「け、警戒を怠らないのは流石は四獣王と言いたいところだが部屋に入って来てくれないと今後の作戦を伝える事ができないのでな。私を信用して入って来てはくれないか?」

「信用? ……つい先日会ったばかりのピクルス君の何を信用しろと言うの? 私がこの世界で信用できるのはこの子だけ……ぴょん」


 そう言って懐からペットと思われる亀を取り出し人差し指で優しく頭を撫でる。


(亀はやめろ!)


「私の友達はこの子だけ……信用できるのもこの子だけ……ねぇ……ゲンブ」


(ペットの名前にゲンブはやめろ!)


「まあまあピクルスちゃん。トレスマリアちゃんは耳が良いからドア越しでも聞こえまちゅよ。早くお話しして! 早く早く早く~!」

「……ニュウナイスまじウザい……私が冷たい廊下で一人寂しくしていても良いと言うのね……もっと頑張って私を説得しろ……ぴょん」


 ペットの亀に向かってブツブツ独り言を言うトレスマリア。半べそをかきながら自分の体毛を毟っている。

 結局お前も構って欲しいのかよ……


「トレスマリアよ。我が軍の最重要戦力であるお前に風邪でもひかれたら私の立つ瀬がない。私の顔を立てる為にも部屋の中に入って来てはくれないか?」


 仕方がないので優しくドア越しにうずくまるトレスマリアに声を掛ける。その言葉を聞いたトレスマリアは頬を赤らめながら振り向く。


「……べ、別にあんたと話がしたいから部屋に入るわけじゃないんだからね……ちょっと廊下が冷たいから……だ、だから入るだけだからね……それに「ぴょん」とか語尾につけてるのはわざとなんだから勘違いしないでよね!」


(わざとなんだ……勘違いしてたわ)


 しかし本当に大丈夫なのかこいつ等? すげー不安なんだけど。


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