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44話:勇者ノワクロの謎

 勇者ノワクロ。この世界の最高レベルまで到達した唯一の勇者。

 その実績は華々しいもので魔王軍が所有するいくつもの砦を落とされ、将軍直属の戦士も何人も葬りさられている。人々からは世界を救う希望の象徴とされ三大勇者の一人に数えられている。


 当然危険度はポシェットと同じAランク。だが俺に言わせてもらえればポシェットの方がよほど脅威だった。


 レベル99(カンスト)という事は裏を返せばそれ以上成長の余地はないという事。だがこいつは今日に至るまで将軍の一人すら倒せてはいない。そして基本的には単独(ソロ)で動くため仲間の脅威があるわけでもない。確かに強い事は強いのだろうが今の時点で魔王と戦う所まで届いていない、つまりは自らの限界を申告しているような物であり勇者として力量はたかが知れている。というのが俺の見解だ。


「勇者ノワクロの討伐ですか……しかしなんで今更?」


 俺は素朴な疑問を吐露する。随分前から危険度Aにランクされていたにも関わらず何故このタイミングでノワクロを討とうと考えているのか不思議だったからだ。


「クェクェクェーー! 実は一ヵ月前この城に来た時の帰りにな、今後の統治をどうして行くべきかキツネの軍師さんにも相談してみたんだよ」


 相談する相手間違ってるぞ。ソレ動く罠みたいなもんだから。


「で、キュービック軍師は何て言ってたんですか?」

「空に向かってたった一言……思い立ったが吉田……って言ったのさ。これだ! と思ったね」


(吉日な。お前のとこには随分ひらめきの良い吉田さんがいるんだな)


 自分が思った通りにやれ、とでも言いたかったのか? それでも意味が違っているが……いやキツネの事だから覚えたての言葉をそれっぽく言ってみたかったでファイナルアンサーだな。

 つまり理由なんてないって事か。寧ろ納得だ。こいつ等がもっともらしい理由で戦いの押し引きを判断する方が違和感あるしな。


「魔王様の脅威はいずれ排除しなきゃいけないからな。それなら俺の大陸で一番強い奴から退治しちまおうってわけよ」

「……それを思い立ってわざわざ来られたわけですね」

「我々も長い間勇者の進攻に対して防戦一方であったがピクルスの働きもあってこちらの領土は安定してきておるしな。できればアールグレイの手助けをしてやってはくれぬか?」


 うーん……この馬鹿たちの言う事も一理あるな。人々の希望とされる三大勇者……潰しておけば他の勇者たちへの威嚇効果も十分だしな……


(それに、いい機会かもしれないな……)


 俺は元々勇者ノワクロに対する個人的な興味があった。

 その興味とは「何故ノワクロだけがレベルをカンストさせる事ができたのか?」だった。


 過去にも高レベルの勇者はいたが上限まで達したと思われるデータは出てこなかった。またノワクロはイーシオカ大陸を拠点としており活動範囲もそこまで広いわけではない。その範囲の中で魔物を片っ端から倒して行ったとしても、どう考えても取得できる経験値が頭打ちになるはずなのだ。


(こいつには何かある……もしどこかに効率的な経験値取得の狩場が形成されているのであれば今後の為にも潰しておかないと……)


「そうですね、そういう事なら及ばずながら私が出向きましょう」

「クェクェ! やってくれるか軍師さん! お前ならそう言ってくれると信じていたぜ!」


 嬉しそうに首をくねくねさせるダチョウ将軍。


「いつもすまないなピクルスよ」

「いえ、こちらの地域が安定している今だからこそ心置きなく手助けができるというもの。全てはミックスベリー将軍の統治能力があればこそ。ただそれだけの話でございます」


 さて……と。そうと決まれば討伐方法を決めないとな。


「アールグレイ将軍。勇者ノワクロの現在の活動場所は分かりますか?」

「確か最後の目撃情報は俺の故郷でもあるカタラニア大平原付近だったかな。どうやら最近平原近くの王都ウエディを中心に動いているようだ。確証はないクェどな」

「王都ウエディ?」

「百年以上前からある王都さ。平原を挟んで目と鼻の先には王都カレンダって国もあるからノワクロを倒すなら平原に出た所を襲うしかないぜ」

「うむ、そうなるな。どちらにしても聖水結界があってはおいそれと手も出せぬしな」

「……王都? 王都が近くに二つもあるんですか?」

「あぁ、魔王様がこの世界を掌握する前からあるデカい二つの国さ。仲のいい国みたいでお互いに兵士を出し合って国を防衛しているからな、ここを攻めてノワクロの首を取るのはいくら軍師さんでも無理だぜ」


 百年以上前からある二つの国……か。もしかしたら使えるかもしれないな……


「では詳しい話は船上でお願いできますか。私は渡航の準備をして参りますので明日には出立しましょう」

「クェ! 思い立ったが吉田だな!」

「サイ君は俺が留守の間はサンドイッチ作戦と逃げるが勝ち作戦の指揮を頼んだぞ」

「かしこまりました」

「それとミックスベリー将軍。今回は少し長旅になるかもしれません、四獣王の二人をお借りしても宜しいでしょうか」

「うむ、構わぬ。アールグレイの力になってやってくれ」


 こうしてトントン拍子で勇者ノワクロ討伐の為イーシオカ大陸に向かう事となった俺。

 正直今回の話は対岸の火事であり首を突っ込む必要性もないのだが好奇心と言う奴だ。危なそうならさっさと帰るつもりだしポシェットの時とは違って敵地に赴くわけでもないからな。

 それに多少面倒でもできれば知っておきたいのだ、勇者ノワクロのレベルカンストの謎を。


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