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35話:包囲網

 俺は数体のカラクリ兵を引き連れて呑気に気絶しているプラムジャム将軍のもとへと急ぐ。

 

 恐らくずっとポシェットと行動を共にしていたであろう二人の少女の存在をプラムジャム将軍は知っていた。にも拘わらずその事を教えなかったポンコツ将軍には殺意すら覚える、すぐにでもスクラップにしたいところだ。


 だが残念ながら今はそのポンコツが俺の生命線だ。ひとまず合流すれば直接的に攻撃対象になる事からは逃れられる、それに今のところポシェットたちへの有効な対抗策はコイツしかいないからな。スクラップにするのはその後にしよう。

 

 俺は走りながら横目で赤獅子のレオナルドの姿を確認する。

 赤獅子は帽子女と巫女装束女の前にしっかりと立ちふさがっていた。


(頼むぜビースト軍筆頭戦士……命にかえても俺が逃げる時間を作ってくれよ……)



「うわー珍しいなー。ライオンの魔物?」

「……ワンワンなの……」

巫女姫(みこひめ)……ライオンは犬じゃないから」

「……ワンワン飼いたいの……」

「ったく……こんなでかいの飼えないっての。まあ動物愛護の精神に則って戦うとしますか」

「……あまり私を甘く見ない事だ勇者の仲間よ」


 赤獅子は二人の楽観的な態度が気に入らないといった表情でセロハンテープでくっ付けた爪をギラリと向ける。


「おっ、自信ありって感じだね。いいよ、私が一人で相手してあげる」

「それが甘く見ているというのだ!」


 言い終わらない内に自慢の脚力を活かし間合いを詰める赤獅子。

 鋭い爪の刃がクレスタの帽子のつばをかすめる。


「へー。やるじゃん」


 クレスタは後方へ飛び赤獅子との距離を取ると同時に地面に落ちている小石を拾う。


加速乃窓(ペールギュント)


 白く光る小窓を通り抜け超加速した小石が赤獅子の足を貫く。


「おぉぉ!」


 しかし赤獅子はそのダメージに臆する事なく再びクレスタに飛びかかり爪を振り下ろす。


 ザシュ……


 鮮血が飛ぶ。

 赤獅子の爪はクレスタの頬をかすめていた。驚いた様子のクレスタはまた少し距離を取って体制を立て直す。


「っ痛てー。……やるねー。あんた名前は?」

「東の大陸ミルウォーキー出身、ミックスベリー将軍直下のビースト軍団筆頭戦士が一人レオナルドだ」

「長い名前だねー。私はクレスタ、自分の出身は知らないけどあんた達と一緒に居たプラムジャム先生の……」


 再び加速乃窓(ペールギュント)の小窓を前方に描くクレスタ。


「教え子の一人だぁー!」


 今度は自分自身が超加速して赤獅子に体当たりを仕掛ける。

 赤獅子は目にも止まらぬ体当たりをくらい吹き飛ばされるとそのまま近くの建物に頭から突っ込む。


「……絶対自分も痛いやり方なのに馬鹿なの。スポ根しちゃってるの。やれやれなの……」

「う、うっさい! 確かに痛かったけどいいんだよ!」

「……流石体育の評価5は言う事が違うの……」


 ガラッ……


 激突の衝撃で壊れた建物からヨロヨロと立ち上がる赤獅子。


「こ、こんなもので終わりと思うな少女の戦士よ……」


 大ダメージをくらいながらも歩を進める赤獅子に感嘆の声をあげるクレスタ。


「へーやっぱり強いね」

「……ワンワンは巫女姫(みこひめ)が飼うから殺さないで欲しいの……」

「悪いね巫女姫(みこひめ)。手加減してると危なそうだわ。ここからは本気でやっちゃうよっ! 悪く思わないでね戦士レオナルドさん!」


 そう言って三度加速乃窓(ペールギュント)を展開する。

 赤獅子は咆哮をあげてクレスタへと突っ込んで行くのであった。



 ――――どうやら派手にやっているようだ。


 先ほどから聞こえてくる戦闘による爆発音。この音が鳴っている間は俺は安全ということだ。

 赤獅子のレオナルド。馬鹿集団のビースト軍団の中にあって中々骨のある男……いや女だ。


(いや、馬鹿な事に変わりはなかったか……)


 船上での一幕を思い出しつつも走る足を緩めなかった俺はなんとかプラムジャム将軍のもとまで到着した。

 ふう、これでひとまずは安全地帯だ。後はこのポンコツロボと一緒にこの町から一旦脱出するだけだな。


「プラムジャム将軍! 起きてください! 一旦撤退しますよ!」


 パンパンッ! 

 

 俺は憎しみを込めた平手打ちを数発プラムジャム将軍にお見舞いする。


「ウ、ウーン……もウ食べられナイヨ……ムニャムニャ」


 このポンコツ気絶じゃなくて寝てるんじゃないのか?

 いやこんな寝言言う奴実際にいるわけない。吹っ飛ばされた衝撃で頭でもショートしたのだろう。目覚めた時にはショック療法で少しは頭が回る様になっていると良いのだが……


 とにかく起きるのを待ってる時間はないな。ポンコツロボを背負ってここから脱出だ。

 俺はパチンと指を鳴らす。


「カラクリ兵よ。プラムジャム将軍をメカチックシティから運び出すのだ」


 俺の合図でカラクリ兵が集まって来る。


 一体、二体……三体、四体……十体……二十体、三十……体? いやもっといる……

 おかしい、こんなにカラクリ兵がいるはずが……!!?


「しまっ……!!?」


 気付いた時には遅かった。

 俺とプラムジャム将軍を囲むようにカラクリ兵が配置されている。その数は少なく見積もっても千体!


 そしてそのほとんどのカラクリ兵の瞳の色は……


「くそっ! やられた!!」


 目の覚めるような青だった……


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