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24話:アトランティス大陸へ

 アトランティス大陸。現代文明をはるかに凌ぐ超古代文明が存在したとされる伝説の大陸。


 まあ、この世界のアトランティス大陸は伝説でもなんでもなく一将軍の統治する北の大陸の呼び方であるが現実世界の伝承と同じく超古代文明は存在していたらしい。

 その証拠ともいうべき存在が俺の隣で自分の体をチューンナップしているブリキ将軍……いやプラムジャム将軍である。

 どうやら関節の駆動系の調子が悪いらしく色々動かしながら調整をしているようだった。


「軍師クン。悪いがソコのオイルを取ってくれなイカ」

「あぁ、これですね。どうぞ」

「すまないナ。定期的に手入れしないと錆びテしまうものデネ。不便ナ事だヨ」

「……大変ですね」

「マア贅沢は言えないナ。昔オイルショックがあった時には油が手に入らなくテネ……2ヵ月ほど動けない時期もアったものサ」

(オイルショックあったんだ……)

「ようやく手に入ったオイルがこれサ。こいつノお蔭で今回の会議ニモ参加できたノだから感謝しないとナ」

(つい最近の話じゃねーか!)


 超古代文明の遺産がコレである。アトランティスの名に泥を塗る存在と言い換えた方がいいかもしれない。


 ミルウォーキー大陸を離れてから二日。アトランティス大陸へ向かう船旅の途中である。少し遠いとは聞いていたがプラムジャム将軍の手配した船はかなりの高性能で今日中には到着するらしい。


 そして今回の船旅の乗組員は俺以外にはたったの五名だった。プラムジャム将軍と勇者エルグランディス、俺が頼んで同行を許可してもらった馬鹿二軍師。そしてミックスベリー将軍がお供としてつけてくれたビースト軍筆頭戦士の赤獅子のレオナルドだ。


 本当はサイ君に来てもらいたかったのだが俺の代わりに「サンドイッチ計画」の調整を行って貰う為泣く泣く断念したのだった。

 しかしこの赤獅子のレオナルドは単純に武力だけならビースト軍団トップクラスで、先の戦闘で勇者ファーウェルを最終的に討ち取ったのもこの男だ、戦力としては申し分ない。寡黙な戦士で来たるべき時に備え一人静かに爪を研ぐタイプとミックスベリー将軍からのお墨付きだ。


(まあ現地にいけば機械兵団の手駒が腐るほどいるらしいしな。今回は腕の立つ荷物持ちってとこだな)


 キュービックは先ほどまでプラムジャム将軍のお世話をと執拗にゴマをすっていたが船酔いでダウン。今は船室で寝ている。

 スクエアは「果報は寝て待て」と言い残し船室で寝ている、何様のつもりなのか。


 まあ普段は役に立たないこの二軍師にも今回は重要な役割を担って貰うからな。今は好きにしていてくれていい。それより問題なのは……

 青い髪に青い瞳そして青い鎧を身に纏った勇者エルグランディスが船長帽をかぶって舵を取っている事だ……


「あの~プラムジャム将軍……本当に彼に任せて大丈夫なんですか?」

「アア。問題なイ、彼ラは教育カリキュラムの中で船の動かし方から火のオコシ方までバッチリと教育済みだからナ!」

(そういう問題じゃなくてこいつ敵なんですけど! そして死体なんですけど!)


「ピクルス様……」

「どうしたレオナルド?」


 赤獅子が静かに話しかけてくる。こいつとは勇者ファーウェル討伐の際に数度話をした程度でほとんど面識はなく、この船旅でも話しかけてくることはほとんどなかった。そんな赤獅子が話しかけて来るなんて珍しいな……


「セロハンテープを貸していただけないでしょうか?」

「ん? セロハンテープ? 何に使うのだ?」

「爪が折れました」


 赤獅子の右手を見ると、数々の勇者を血祭りにあげてきたという鋭い爪が根元からポッキリ折れていた。


「ど、どうしたというのだレオナルド! 左手……左手もか!?」

「研ぎ過ぎました」


 手に持ったヤスリを俺に見せながら切ない表情で訴えてくる。


「……なに文字通り爪研いでんだよ!」


 そういう意味じゃねーから! それただ爪のお手入れに余念がない几帳面な獣なだけだから! 自慢の爪が折れるまで研いじゃったら戦力半減でしょうが!!


「木工用ボンドならあるゾ」

(てめぇは黙ってろやブリキ!)

「将軍。申し訳ありません。お借りします」


 木工用ボンドを受け取ると早速爪に塗る赤獅子。そしてその後ポケットから赤いマニキュアを取り出し丁寧に塗り始めた。


「ネ、ネイルの下地として使っているだと!?」


 そんな豆知識いらないから! というかまさかお前が赤獅子って呼ばれてる理由はそれなのかよ!? 


 満足そうに爪の出来栄えを見つめるレオナルド。

(あ……こいつメスだ……)


 どうでもいい情報を一つ手に入れて航海は順調に進む。


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