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16話:危険度Aの勇者

「勇者エルグランディスの対策案について他に意見はないか?」


 つつがなく進行される四大将軍会議。

 魔王直下の四将軍と敵である勇者が同じテーブルに座り、その勇者の対策案を練っているという異様な光景が展開される。

 うーん、と頭を悩ませる将軍達。こいつらは仮に妙案が出たとして勇者の前でその案を発表する気なのだろうか。

 とはいえ立場上会議から抜ける訳にもいかず、仕方なく青い瞳のエルグランディスと呼ばれる勇者の横におとなしく座る俺。

(い、居心地悪ぃ……)


 なんとなく気を遣い机の上においてあったポットからお茶をポトポトとつぐと勇者に差し出す。


「……粗茶ですが」


 勇者はこちらを向くと一言。


「おかまいなく」


 と言い、真正面に向き直す。

(愛想ないなぁ……)


 しかし……よく分からんが、これは勇者を仕留める大チャンスだ。こちらは俺を除いても将軍格が四人揃っている。そして一声掛ければ城中の魔物達を加勢に呼ぶこともできる。

 四面楚歌のこの状況は殺してくださいと言っているようなものだ。


(だが、仮にも危険度Aと呼ばれる勇者……何か策があるのか? それとも本当に 何もなく敵地のど真ん中に飛び込んできたただの馬鹿なのか?)


「まあ、癪だけど今の状況じゃ手は出せないっしょ」


 アールグレイ将軍が軽いノリで言い放つ。

 それはプラムジャム将軍が椅子となっているこの状況では攻撃すると巻き込みかねない……ということだろうか? 確かに今攻撃されると隣に座っている俺まで危ないからご遠慮願いたいが……


「そうだな、しかしあまり時間もない。このまま手をこまねいていてよいものか……」


 ミックスベリー将軍がまた頭を悩ませるようにおでこに手をやる。

(手をこまねいてるって言ってもなぁ……)


 チラリと横に座る勇者を見る。やはり圧倒的な威圧感を漂わせながらずっしりと座っている……が。

(……? なんだ、この違和感は)


「ゴタゴタやっていないで北の領土をプラムジャムごと吹き飛ばしてしまえばいい……」


 レモンバーム将軍が唐突に素っ気なく血も涙もない発言をする。


「チョ、チョット待ってレモンバーム。その判断ハ早計すぎるカト」

「余も反対だ。実際にプラムジャムがいなければ勇者エルグランディスの脅威は魔王様まで届いていたかもしれない。それにプラムジャムは我々の大切な仲間だ」

「そうだなぁ、だがプラムジャムの反転重力場(アンチグラビディ)が機能している間になんとかしないと本当に手が付けられなくなるぞあのお嬢様は」

「確かに……現在の状況になってから約一年。プラムジャムの限界も近いだろう、なんとかせねばな」

「ソ、ソウダ。私が屈辱を押し殺シテこんな姿にナッテまで場を制しているからコソノ現在の安定した平和がアルという事を忘れないデ貰おうカ」


(……何言ってるんだこいつ等? 目の前に座ってる勇者の話じゃないのか?)


 どうやら俺だけ話についていけていない。そして将軍達もいつものノリで馬鹿な話をしているだけかと思ったが、これは……何か……違う。

 そんな時、当事者である勇者エルグランディスが口を開く。


「えー。今回苦肉の策で私を呼んだようですが交渉や能力の索敵が目的なら無意味である事を伝えます。何故なら貴方達も知っての通り私は勇者エルグランディスの一人でしかないのですから」


 無機質に話す勇者……



 ゾッ……

 体から寒気が走る。

 気づいてしまったからだ。いや、何故横に居て今まで気づかなかったのか。

 この勇者エルグランディスという男、圧倒的な存在感とはうらはらに機械的な話し方、目の焦点はどこにも合っておらず生気をまるで感じなかった。


 こいつ……死んでる。


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