かの女人は月の見せし幻か
月の美しい晩に 湖畔での幻のような出来事
関羽さまの馬が変身して
かの女人は月の見せた幻か...その出来事が起こったのは つい先程の事
小さな湖畔に月が映え、涼やかな風が渡ってゆく
そこに立つのは美髭公と歌われし 英雄 関羽雲長...
「部下達とははぐれてしまったようだな」 軽くため息をつき
自慢の髭に手をあてる「赤兎馬よ 少しつかれたろう?」
馬から降り 湖畔に目を向ける「美しい月..」すぐそばからの女の声に驚き振り返る
赤兎馬と呼ばれてた赤い馬は どろりと飴細工のように溶けてゆく
そして 赤い宝玉の瞳を持つ女人の姿に変わる....
夜のそよ風がかの女の髪を踊らせている
「関羽さま」嬉し気に微笑みかける
「そなたは一体?」
「私は貴方を慕う者...とある人間達が不思議な術で創った物
馬と人の形を持つただの創り物..」
その女性が幻ではなく 本物かどうか確かめるかのごとく その頬にふれる
その頬の柔らかさが、
人肌の暖かさが、
匂い立つ甘い香りが、それがまさしく現実の女性なのだと知らされる....
頬に触れたその大きな手に今度は白く小さな手が包み込む
「私はいつでも貴方の傍におります。
ささやかではありますが、持てる力で貴方をお守りいたします」
「関羽さま!」「将軍!!」捜しに来た部下達が彼に呼び掛ける
振り返ると今度はいつも通り、赤兎馬は傍らに立っていた...見ていたのは月だけ...月だけがこの出来事を見ていた
Fin
※他SNS複数 HP含むに同名の小説貼ってます
作品はかなり 昔の作品です
ショートショートです
かなり以前の作品で、他サイト等(HP含む)に貼ってます
イラストも描いてます^^;