来訪者
なんでこの世はこんなに退屈なのか。
教室の窓から外の景色を眺めながら考える。
まわりでは知能の低い馬鹿どもが、授業を真剣に受けている。
ちなみに俺は俗に言う天才というものだが、テストではいつも平均点しかとらない。
出る杭は打たれるというもので、過去に嫌な経験があるからだ。
授業の終わりを告げるチャイムがなり、昼休みになった。
俺は鞄を持って、いつもの場所に向かう。俺に話し掛けてくる奴なんていない。俺は学校では空気のような存在だ。
いつも通り屋上で昼食をとる。屋上は立ち入り禁止なので他には誰も来ない。
というより、屋上の鍵を開けられるのはこの学校で、俺と教師だけだろう。
この屋上はうまい具合に他の校舎からは見えないようになっているので、なかなか気に入っている。
俺は、鞄から愛用しているタバコ
「セブンスター」を取り出し、火をつける。
「ふぅー‥つまんねぇ。」
二口目を肺一杯に吸い込んだとき、有り得ないことが起こった。
誰かの話声がきこえたのだ。
「誰だろ?まぁ鍵も掛かってるから来れるわけないけど。」
そう思い、特に気に止めることなくタバコをふかしていた。
するとドアのところで何か音がしているのに気付いた。
さっきの話声の主達が、何かを使って鍵を開けようとしているのだ。
「マジかよ。開く分けないし。てか考えりゃわかんだろ。」
と思っていたのだが、ガチャリと音がした後、ドアが開きだした。
俺は咄嗟にタバコの火を消し、吸い殻を鞄の中に隠した。
「どう私のピッキングの腕もなかなかのものでしょ。」
先に屋上に入ってきたほうが後ろの人に言う。
「んー…すごいけど…普通に犯罪だから。
って、誰か居るよ!」
二人組は先客の俺に気付き、身構える。
俺は全く興味がない態度で、景色を見ていた。
「んー?あれ竹田くんじゃない?」
竹田、そう俺の名前だ。フルネームは竹田亮、別に普通の名前だろ?
「あー!ほんとだ。竹田くんだぁ。何してんの?」
後から入ってきた方が俺に尋ねる。
「別に‥てかあんたら誰?」
俺は無表情で尋ねる。
「はぁ?マジで言ってんの?同じクラスじゃん!」
先に入ってきたピッキング女が強い口調で言う。
「同じクラス?‥‥知らん。名前と顔なんていちいち覚えてない。そっちも同じクラスの奴か?」
俺は後から入ってきた女に尋ねた。
「私?違うよ。私は2組だから、隣りのクラスだね。ていうか、もう二学期なのにクラスの子の名前と顔覚えてないの?」
「全く覚えてない。必要ないからな。」
即答した。
ピッキング女が呆れたように
「私は山田加奈。でついでにこっちにいる子は、袴田由実。ちゃんと覚えてよね。」
「必要ない。あんたらの名前なんか知らなくてもいいし。」
ぶっきらぼうにこう答えると、俺は屋上を後にした。