不定形
僕はとても柔らかい、何者も捕らえることが出来ないのだ。
僕はとても臭い、鼻を捻じ曲げて気絶させる。
僕はとても神々しい、見た者に眩暈を感じさせる。
僕はとても声が高い、周りの者は狂うだろう。
今日も僕は暗い洞窟で這いずり回っている。最近知性を持ち合わせたと考えられて天敵である、奴等に追われていたりした。仲間達より小さな身体を活かした行動と発達した知能が僕を生かしてくれたのだ。名状し難い奴等の音が、悲鳴と共に繰り返される。奇々怪々とした僕達の戦闘風景は、まさに地獄絵図と表現するのが相応しい。僕は逃れる為に光を目指した。無数の目玉が回るような、新しい世界を夢見てである。
途中で僕はちっぽけな生き物に出会う。白いモフモフが可愛らしい何かであった。鳴き声も発さない何かは小さな眼窩に紅い煌めきを秘めている。長い口で僕を突き始めた。驚いた弾みに、触手で投げてしまった。静まり返る場に耐えられなくなった僕には、先へ先へと進むことしか出来無かったのだ。
後ろから奴等の音が聞こえてくる。激しさが増す、恐ろしい罵声が飛び散っているのだろう。子供である僕は、行くしかないのだ。
前からも何かが聞こえた。阿鼻叫喚とした音である。意味不明な言語がひとりでに走っているようだ。僕は興味を持ち、全力で何かを追った。
微かに見えた何かの姿が僕の目を回し始めた。くるくると変わる世界の明るみが、遂に飛び込んできたのである。喜びに身を任せて身を乗り出すと、音が聞こえた。
「助けてくれ……」
何かが潰れた。




