取り敢えず現状を把握しよう
いきなり美形にそう言われたってこっちにはどうしようもない。
何で私なのさ?
取り敢えず下手な回答をしてみる。
「えーっと…。人違いじゃ…」
「ありません!」
「私達の魂が貴方が《そう》だと言ってるのよぉ」
「いやいやいや、ちょっと待って。そんな突然に言われても私困るから!! 第一無二の存在って何?」
即答されたので、今度はこっちも即拒否と疑問をぶつける。
すると、ちみっこ…もとい地の精霊が教えてくれただした。
「主は前世の時、我等と契りを交わしたのじゃ」
「はいっ?!」
突然のお言葉に目が点になる。うん。例のあの朝の番組と一緒の題名だよね。文字通りその通りになってます。はい。
「貴方の前世たる人物と賭けをしたのよ~」
「か、賭け?!」
「そおよ? それも前世の貴方から言い出した事なの」
オネェの光の精霊が続きざまに出したお言葉に私の目は今度は飛び出す。
眼球が忙しなく運動してますね。はい。
「お前が言ったんだ『今度の生まれ変わった私を見つける事が出来たらあんた達六人、全員と最上級契約を結んであげるわ。勿論、この私が簡単に見付かる筈無いでしょうけど。頑張って探してね』ってな。
だから俺達、此処数百年位お前の事ずーっとずーっと探したんだ。
で、漸く見付けた反応に気付いてこっちに引っ張ったんだぜ!」
「それって…まさか…」
火の精霊の言葉に思い浮かぶのは今手元にあるこの本である。
最初は薄汚い本だったのに今は装飾も立派な本になった………。
「…それ間違いない。……前世のお前持ってた」
闇の精霊に止めを刺される感じでまさにorzと言った状態ですよ!
数分前の私の好奇心。好奇心からまさかの事態になるとは思っても見なかったですよ。
死ぬなんてものじゃ無い。
いっそ、目の前の出来事が非現実なのを願いたいが、綺麗に顔の整った連中六人に囲まれる様にしている状態ではそれを無かった事に出来ない。
「私達はみな、歓喜に震えました。再び貴方とこうして再会出来るなんて…! 勿論、前世は前世。今生は今生の区別はついております。それでも変わらぬその魂の輝きと美しさは失われていない。ああ、お待ち申し上げた甲斐が御座いました」
陶酔したまま水の精霊様は言っちゃう。
区別付いてるのに、そんなになるって事は前世と余り思考回路変わってない? 私。
「ふむ…。確かに輪廻転生にて生まれ変わったにしては魂の輝きも美しさも前世と変わらぬ…。いや、前世よりも更にワシ等との結びつきと、主の精霊力が強まっているの…。前世も規格外だったが、今生も更に規格外の能力を持って産まれるとはいやはや恐れ入るものじゃ」
「ああ、綺麗な輝きだ…。だから、みな、惹かれる」
「うんうん! やっぱ俺達のマスター何だからそれ位じゃないとな!」
「そうだね。うん。心地良い風の精霊力も極上中の極上の物だね。マスターはやっぱりこうで無いとね」
もしもーし精霊さん達やー。勝手にそちらだけで納得しないで下さいますか?
懐古に浸っているみたいですが、こっちはそれ所じゃ無いんですよね。
えっとまず情報整理しよう。
取り敢えず、この際、何か思い出している精霊達は放って置く。
その間に考えを纏めた方が私にしてみたら邪魔されずに考えられる時間になるよね。
取り敢えず現状はこうだ。
何か私の前世の私が、六人と賭けをした。
で、賭けに勝てばその六人全員と最上級契約をする事になると。
そして、現在の私が、その六人に見付かる結果となるのがこの手元にある本だった。
そんな所と言った感じかな…?
………
………………
………………………
前世の私、何勝手に賭けなんてしてんのーーーー!
しかもその責務って生まれ変わった私が担うってどう言う事さ!!
丸投げだよ、きっと。
前世の私、きっと今の私と同じ気持ちだったに違い無い。
だって、面倒くさい奴等じゃね? 絶対。極力面倒事避けたい私には何だか分かる気がする!
おい、前世の私!!! 何で私に丸投げなんてすんのさ!!
そもそもこの世界の生まれじゃないし、この世界がどうなっているかなんて全然分かりもしないのだから!
厄介事をまるまる私に押し付けたな、おのれ、前世の私め!
私だって厄介ごとは避けたい!
やっぱり前世の私と性格は一緒の様です。はい。
取り敢えず元凶となった本を見やる。
そう言えば開いてもいなかった。
と、言う事で早速中身を見る事にする。
薄い本だけど、紙の作りはしっかりしていて、結構頑丈な様子を見て取れます。そうして一枚目を捲ったその時だった。
突如として私の目の前で文字が浮かび上がって来た。
見た事の無い文字ではあったが、私にはこれが読める。……まさかこれもチートの一つって事?
うーん。
まあ、読めるなら読んでしまう。
その方が精神的に良い様な気がする。
主に私の。
そして私の目に映ったのは…
《これから、この本を目にした生まれ変わった私へ♪》
………いきなり前世の私からのメッセージでした。