気付いたら森の中でした
「ぬあ?!」
太陽光が目に当たり、余りの眩しさに両目がぱっちりと開く。
慌てて起き上がる。あ、やべ、よだれも垂れてる。
ごしごしと服の袖でその痕跡を消しながら辺りを見回す。
……右を見ても左を見ても前を見ても後ろを見ても緑色に生い茂る木々達。
そして空には明らかに地球と違う物体が。
空に太陽が二つもさんさんと輝いてるよ。
これから導き出される答え。
…あれ? 私もしかして異世界トリップって奴を経験中ですか?
数ある書籍の中で気軽に楽しめたのがライトノベル。やっぱり流行りは異世界トリップの様でして、その手の書籍が一気に倍増してましたね。しかも人気。私も大好きです。
未知の世界があるならば是非行ってみたい! と思うのが多分日本人の民族性と未知なる物への探究心が強い故に起こった物だと私は見ています。食べ物に関してもそうですね。今でこそ一般に食べられている山芋とかナマコとかクラゲとか最初に食して見ようと思った人もきっと好奇心に勝てなかったに違いありません!
私が未だ読んだ事の無い本を探すのと一緒です!
…本と言えば確か、私意識が無くなる前に開いてた本があったよな……と辺りを探して見回した。
「あ、私の大学用鞄もある…ん? 本?」
先ほどお見かけした煤けた本では無く、そこにあったのは豪華絢爛な装飾を施した、いかにもお高い感じの書籍がそこには御座いました。
でも良く見ると、図書室で見た本とそっくり。
まるでリメイクされたかの様に。
私は取り敢えずその書籍を覗き込む。
「えーっと…あれ? この本のタイトル読める?! 何々『大精霊召還術法』…ってはぁ?!」
思わず声を上げちゃったよ。
いや、召還法って何さ。私の方が召還されてんじゃん。
どうなってるのー?
いやいや、そもそもこんな事が私に起こるなんて…。
…思わず現実逃避したくなります。実際に起こって初めてわかる現実です。
小説の主人公達、良く平気でうろつこうと思っていますね。
ぶっちゃけ私、此処から動きたくありません。
未知なる生物と遭遇もしそうです。
ですが、ただこのまま此処にいても待っているのはきっと凍死が餓死。
あれ? 死亡フラグしか見えない。
やっぱり自力で何とかしないといけないみたいです。
凍死も餓死もついでに未知なる生物に攻撃されて人生終わりなんて結末は遠慮したいです。
そんな風に思ってると私以外誰も居ない筈なのに何やら私に向かって六つの声が掛けられました。
気配も音もたてずに側に居るなんて吃驚ですよ。
「お会い出来て光栄です。ご主人様」
…しかもやたらめったら良い美声で私をそんな風に呼びました。
声質から察するに全員野郎です。はい。ものの見事に野郎ばかり。
しかも色彩色豊か。オマケに全員私の世界にある乙女ゲーに出て来る様な美形ばかりである。
見渡して見ると、少年体型から青年体型、果てはオネェ系までの美形さんが私を囲うようにして密集なさってる。
私、ゲームもやります。勿論ストーリー重視で。
決して主人公に感情移入はしないでただ単純に一つの物語として見るのですが…。
常日頃から乙女ゲームの要素とか無いわーと思っています。現実にこんな事起こり得ないし、実際にあったとなると怖気がします。ですので、こんな目立つ美形ばかり集まると何かフラグとか踏みそうで嫌なんだけど…。
しかも美形達は私をマイ・ロードとか言ったよね?
え? ちょっと待って。
確実に面倒事の予感しかしない。
そう思ってたら相手の中の一人、水色の髪に水色の瞳をした正に氷の美形と思わしき人物が私の前に跪く。
「我等が主、この時をお待ちしておりました。私は水を司どる精霊と申します。以後宜しくお願い致します」
にこりと極上の笑みを持ってして私に微笑みかけたのでした。
えーーーー…やっぱり何か面倒事に巻き込まれる事確定の様です。