精霊の里では大歓迎
そうなれば早速行動あるのみです。
「はぁ…。元の世界にも戻れない。ついでにあんた達との契約と婚約成立しちゃったら仕方が無い。私はこっちの世界の常識も理も何も知らないの。その辺に付いてはきっちりとフォローしてくれるよね?」
その言葉を放った瞬間、奴等から喜色満面の笑顔とオーラが放たれました。
流石美形。
キラキラとした特殊効果が何処からとも無く幻覚を伴って見える様です。
「はい、勿論です! 私達は貴方の僕兼パートナーとなったのです! 此方の世界の事を教えるのは喜び以外の何物でもありません! 誠心誠意お教え致します!」
…一瞬、ヴィルから残念な言葉が聞こえた気がする。
まあ、無視で。他の奴等も気にしている様子無いし。
「だったら早速里に行こうぜ! 里の奴等盛大に祭りの準備してくれんじゃね?」
「そうだね。出て来る時、伝えたもの」
「うむ。これで精霊界の憂いが減るのだからなの。どの種族も大歓迎じゃな」
「そうよねぇ…。あら、お披露目の洋服とかちゃんと用意しなきゃ!」
「そうですね。マコトならきっと何でもお似合いでしょうね」
「…楽しみ」
…そこまで追い詰められた状況って事ですね。はい。
しかし、大歓迎って。
私に見世物になれと?!
嫌だーーーー!!
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と、思っていたのも束の間。
あれよあれよと言う間に私は拉致られました。
その際、誰が私を里まで運ぶかとどうでも良い争いが勃発しましたけど。
別に自分の足で歩けるから良いんだけど…と、言ったらもの凄い勢いで却下された。
何故だ。
里までは転移方陣と言う精霊術があるらしく、一瞬で行けると言うのに…。
私を運ぶ役を決めるまで小一時間。
奴等の争いをぼーっと眺める私。
何とも間抜けな時間で御座いました。
しかし待っているのは苦痛です。そして退屈です。
物騒にもそれぞれの精霊術での争奪戦に発展しそうだったので、私は元の世界にあったあみだくじと言う方法を教える事にしました。
これ、地面に書くだけで出来ますしね。
で、奴等は結局私が教えたあみだくじで役目を勝ち取って貰う事で決着。
この場合、必要なのは運のみです。
結果、この役目を引いたのはアーデルでした。
その際にモロ男の声でよっしゃあああ! と、何とも男らしい雄叫びが聞こえましたが、これも聞かなかった振りです。ついでに半端なく落ち込んでいる奴等の表情も無視です。
そして私はアーデルに世の女性の憧れであるお姫様抱っこと言う状況で精霊の里まで運ばれて来ました。
オネェに抱かれている女の私。
何とも残念な感じがするのはどうしてですかね。
因みに私の容姿はそこまで劣ってない筈です。
友人と家族から黙っていれば外見は上の中と言われました。
私はそこまで気にしてませんが。
我が一族は逞しく行き抜くために、最低一つは武術を習うのです。
私は空手でした。
寄って来た男共は読書の邪魔をするばかりにうざい連中でしたので、ko bu shi でお話をして、それらを繰り返し行っていたら自然と近寄って来なくなりましたけど。
この時ほど空手を習っていて良かったと思った事も無いですね。はい。
まあ、それ位の容姿でも六人が別次元の世界らしく、また、この世界でも標準以上の美貌を誇っていらっしゃるので余計に私が普通に見えるのです。
女より綺麗な顔をした野郎共はきっと世の女性に対する宣戦布告してる存在でしか無いですよね。
ま、それは置いておいて。
アーデルにお姫様抱っこそして周囲に囲むように付いて来る美形な野郎と共に里への入り口を潜り抜けた途端、もの凄い歓声に包まれました。
……すごいですね。なんですかこの歓迎振り。
想像以上です。
私、一般人。
身分平民。
なのに王族のパレードの如く進む道端に溢れ返る精霊、精霊、精霊。
気絶したくなる、そして顔を隠したくなる状況とは正にこの事ですね。はい。
そして暫しの拷問の末、何故か精霊の里バージョンのペガサスに引かれた豪華絢爛に飾り立てられた馬車に乗り込みました。野郎六人と私の計七人が乗っても十分広いと思う馬車内です。
空間を弄る精霊魔法が使われていると思われます。
だって、外で見た外見の大きさと、中の広さが合って無いもの。
これではまるで六人がそれぞれの種族の王子みたいじゃ無いか…。
…あれ? 何か恐ろしい単語が頭に過ぎった気がしましたが、今は気にしないでおこう。うん。
そのまま私達を乗せた馬車は王城を目指して進んで行く。その間も人々の歓声は止む事は無く。むしろ更に盛大になっている気がします。
と、そこで気付きました。
精霊の里に王城ってあんの?!
そう言えば周囲には家々も建っていました。
ずいぶん人族の影響受けてるんだね、此処の精霊達は!