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モグトワールの遺跡  作者: 無依
第2章 土の大陸
13/24

0.―プロローグ―


 046.


 これは昔々のお話です。まだ私たちの住んでいた土の大陸が一つの国にまとまっていない時のお話。

 この頃、土の大陸には大小様々な数多くの国が在りました。いいえ、国と云うのは少し不自然かもしれません。多くの集団があったと言った方が正しいでしょう。その集団は時には衝突し、時には手を取り合って暮らしていました。

 在る日、この土の大陸を守護している魔神さまが、人々に向かってこう言ったのです。

 ――他の大陸に倣い、我もこの土地に我の守護を約束する国を定めたい。

 人々はそれを聞いて目を輝かせました。魔神の守護を得られれば、少なくとも災厄に怯えることは在りません。

 ――ただし、我が守れるのは一国のみ。証明せよ。我が護るに値する国を。その証に我が永久の守護を約束するものとしよう。

 つまり、魔神が認める国を決めろ、ということだったのです。そして、大小様々な集団は魔神に我こそが守護されるにふさわしいと、活動を始めました。

 とある集団は、富を。

 とある集団は、権力を。

 とある集団は、武力を。

 とある集団は、民を。

 とある集団は、知識を。

 富、栄誉、権力、知識、権力、芸術、民の数、様々なものが、魔神の守護に叶うと、掲げられ――

 ――そしてそれだけの数の主張が、他の種族によって否定され、蹴落とされていったのです。


 持つものを誇り、自慢し、誇示し、主張する。

 否、我が種族こそが、と全てを否定し、戦い、破壊し、そして脱落する――。


 そんな中、多くの種族から浮かび上がって来た集団が三つ。

 万民の魔女エイローズ率いる西の集団。

 神子ヴァン率いる東の集団。

 希望の星ルイーゼ率いる北の集団。


 魔神の加護を得られる可能性がある集団はこの三つに絞られました。そして、これらの団体はもう国、いや、大国と云うにふさわしい規模で衝突を繰り返し続けたのです。

 戦いすぎて、優劣を競いすぎて互いに認め合う事ができるほどに全てに優れ、甲乙つけがたい集団でした。どの国が魔神の守護を得てもおかしくはなかったのです。それぞれの国の傘下に収まった集団はそれぞれのリーダーを慕い、圧倒的に支持をしてもいました。

 三国間の争いは永きに渡りました。そしてそれだけの争いを以てしても、三国の優劣はつけられなかったのです。いたずらに疲弊する国。そして、戦う意味すら失せかけた頃――。


 魔女は戦いの無益を悟り、思考転換を試み、

 神子は戦いの無意味を知り、行動の検証を行い、

 希望の星は戦いのむなしさを嘆き、己の行動を省みました。


 辿り着いた結論は―三国の協定、すなわち大陸の統一。

 示された証に、答えに魔神は大変満足し、

 ……こうして、土の大陸は今に至るのです。


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