58、Dimension
「つまらん」
【常闇】は部屋に入って来ると同時に、言葉を発した。
「あいつが時空を操れるというのなら、俺達には何を操れる?」
「ヤツの心じゃねえか?俺達はヤツを喜ばせることができる」
「それしか出来ないからつまらんと言ったまでだ」
【常闇】が包丁を突き出してくる。俺も包丁を取り出す。
「俺はこの部屋の光を操れる」
「そうか」
「それに、生前は次元を操れた」
「自慢話を聞きたいわけではない」
【常闇】が、もう一本の包丁を取り出す。
「【不明】、お前には、俺の命が操れるか?」
「何だそれ。俺に挑むのか?」
「挑む、か。逆だ。お前が俺に挑めるかということだ」
俺は身構える。今なら扉から逃げ出せる。だが、俺はそれをしなかった。
「いいだろう。お前が一番ヤツを喜ばせたんだ」
「ほう。死にたいか」
【常闇】がゆっくり近付いてくる。
「なら死ね!!」
走って来た。突進だ。包丁を構えている。二つだ。刺さったら終わりだ。
「おっと」
ギリギリでかわす。俺は【常闇】の対角線上に陣取る。
俺も同じ戦法を取ってみよう。包丁を正面に構えて走る。包丁を持つ手は右手だ。
「愚かだ」
【常闇】は俺から見て左に避けた。ここから派生する攻撃を避けるためだ。包丁は右手に持っているため、外側に腕を開くように払う攻撃が通用しない。
「ここで終わりにしようか」
敵が部屋の隅に移動し、次の瞬間、部屋の明かりが消えて真っ暗になった。やっぱりだ。特殊能力を使われた。
俺はとりあえず動く。元の位置にいれば、攻撃を受けるかもしれないからだ。適当に動いていればいい。
だが、
「そこか」
見つかったみたいだ。多分、アイツは真っ暗でも多少は目が見える。はっきりとではないようだ。はが腕に掠ったくらいだったからな。
俺はたまらず姿を消した。能力だ。三分間しか効力がないが、一時しのぎ程度には使えるだろう。
「見えない」
明かりが点いた。が、俺の姿が見えなくなったため、少しは驚いたようだ。
「影を探す」
無駄だ。姿を消している時は影ができない。光が透過するからだ。ガラスと同じ原理。
俺は素早く【常闇】の後ろに回る。
「後ろか!」
足音でばれる。どうしたものか。
【常闇】が包丁を後ろに振る。少し後ろに下がったため、当たらなかった。俺はその隙に包丁を振りかざす。そして、振り下ろす。
見えない刃が【常闇】の背中に入った。
「ぐぅぅぅ!!!」
引き抜く。
「ぐぁぁ!!」
血が溢れ出す。俺は確実に殺すために、首を狙った。刃が首の横の部分を斬る。
「ぐ!!!」
血飛沫が上がった。それから、滝のように溢れ出る。【常闇】の顔がどんどん蒼くなっていくのが解った。
「お前は少し油断しすぎたようだな」
「認めない。認めないぞ。生き残るのは俺だ。ぁぁ。生き残るのは俺だったはずだ。生きる素質があるのは俺だったはずだ!お前じゃない。俺だった。何故だ。何故だぁ!!」
息遣いが荒くなっている。
「ぁぁぁ!!!ぅぁぁぁぁ!!!!」
最後にそう喚いて、床に倒れた。
「終わった」
死んだ後も、首からは沢山の血が溢れてくる。まだ生きているかのように、全身から血が外に流されている。ああ。人を殺すってこういうことなのか。
「うっ」
若干吐き気を覚えた。ここにいても仕方がない。他の部屋に移ろう。
あと残っているプレイヤーは、【黒雲】と俺だけか。生き残るためには、殺すしかないのか。嫌だ。人を殺すのは今回だけでいい。それに、次からは特殊能力が使えない。一つのゲームで一回しか使えないからだ。俺が先に殺される可能性のほうが高い。
多分、俺は生き残れない。
********
【常闇】が死んだか。【不明】もなかなかやるようだな。【常闇】を殺すとは。これで、残るは二人。生き残るのはどちらか。必ずどちらかだ。だが、最後には俺に殺されるのだ。無駄な努力だったな。どのみち死ぬのだ。負けようが勝とうが関係ない。苦しむ時間が増えるだけだ。
フフフフ、ハハハハハッ!!!これで終わりだ。ゲームはもうすぐで終わる!!この忌々しい世界から解放される!!これで俺も死ねる!!もう二度と生き返らない!!アッハッハッハッハ!!!勝った!!俺の勝ちだ!!ハハハハハハ!!!!!
見ていろ【災禍】!!お前の思う通りには事は進まない!!プレイヤーが全滅するのを大人しく見ていろ!!
まさかの【常闇】死亡。




