56、【不明】⑨ 仝
起きると、やはり白い壁の部屋だった。扉が四つある。引き戸だ。全く、わけが解らない。今度は出口が四つあるというのか。
そこで、俺は重要なことに気付く。≪一方的殺人・独り抜け孤独戦争≫のときになくなっていた道具が戻ってきている。飲みかけの水もそのままだし、なくなっているものはなにひとつとしてなかった。このゲーム内で何か使うのか。
今は考えていても仕方がない。ヤツの指示を待とう。
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これで殺人ゲームは最後だ。だが、生き残ったプレイヤーには、もうひとつゲームが用意されている。
今回のゲームでは、プレイヤーが必ず三人死ぬ。生き残れるのは一人だけだ。
今回のゲームで生き残れるのは一人だけだが、このゲーム全体で生き残れるのは、ゼロだ。誰も生き残れない。それでこそ復讐だ。【災禍】のやつに生き残りを渡すものか。プレイヤーは全員死ぬ。誰も生き残れない。十二人全員死ぬ。いや、俺も合わせれば十三人か。ゲームが終わった後に処分されても、俺は復讐が遂げられればそれでいい。寧ろ、死んだほうが気が楽だ。処分されなくとも、俺は死ぬつもりだった。死に方とかが変わるだけだ。結果は同じ。
これは【災禍】のゲームではない。俺のゲームだ。だから俺が好きなように進める。
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起きてからしばらくして、ヤツの声が聞こえた。
「プレイヤー全員起きたか。これが殺人ゲームとしては最後だ。その名も≪時空戦争≫。まずはフロア内の構造を説明しようか。このフロア内には、四×四の合計十六の部屋がある。その部屋の中は全て造りが同じだ。扉の位置も、扉の数も、同じだ。端の部屋にも扉は四つある。絵だがな。なお、部屋の壁などに傷をつけたりしても、このフロアの仕掛けにより復元される。つまり、十六の部屋を見分けることは不可能だ。
じゃあルール説明をする。プレイヤー四人は、ランダムで十六の部屋の内の何処かに入れられた。このゲームで生き残れるのは一人。プレイヤーが一人になるまでこのゲームは続行する。
次に部屋についてだ。十六の部屋には、それぞれ発火装置がついていて、ゲーム開始から十分間隔で部屋が閉鎖され、発火装置が作動する。部屋内は高温の炎に包まれ、巻き込まれれば生き残ることは不可能だ。だが、最後に残る部屋は燃えない。
以上でルール説明は終わりだ。では、殺人ゲーム第五号≪時空戦争≫、ゲームスタート」
俺は動き出す。
まずは、適当に扉を開ける。奥は真っ直ぐな短い通路になっていて、その先にすぐ扉。この通路に入れば、永遠に見つからないような気がした。
扉を開けると、また同じような部屋。というか、全く同じだ。相違点を挙げろと言われれば、一週間探し続けても見つけられないだろう。
ガチャ
いきなり向かい側の扉が開いた。
「【名無】か」
入って来たのは【名無】だった。大して驚いてはいない様子だった。
「【不明】、ここは一体何なんだ」
「今更かよ。それは俺も知らね。今はゲームのことだけが大事だ。真相は向こうからやって来るわけじゃないんだからな」
「敵である俺によくそんなことが言えるもんだ。お前は大したヤツだよ」
【名無】は大して警戒していないようだった。
「これが最後のゲームって言ってたな。じゃあ、これが終われば誰か一人は解放されるのか?」
「解らない。必ずしも生き残れるとは限らないさ。ヤツが俺達を許してくれるのかどうかもな」
「じゃあ、俺達はどの道死ぬのか?」
「さあな。ヤツがどう出るかは俺にはわからない。ただひとつ言えることは、ヤツは一人ではない」
「どういうことだ?」
「【絶命】のこともあっただろう。ああいうふうに、ヤツには仲間がいる。黒幕は複数だ」
それだけ言って、俺は部屋から出た。このまま話していても、何かの解決になるとは思わなかったからだ。
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「あ、俺です。【無情】です」
『【最悪】はどうだ?』
「もうダメです。条件を無視しようとしています」
『それでは、契約は破棄だ』
「はい。【最悪】にも伝えておきます」
『ご苦労だ』
「それでは、失礼します」




