54、時空の揃
次のゲームの舞台をみて、【災禍】はなかなかのものだと思う。このゲームだけは【災禍】が考えた。他のゲームは俺に考えさせてくれたが、望ひとつ必要だったため、【災禍】に考えてもらった。なかなか面白いじゃないか。
「【最悪】、【災禍】が怒っていたぞ。どうする?お前は死ぬかもしれない」
「構わない。このゲームの生き残りが出なければの話だけどね」
「そうはいかない。お前は条件を飲んだ。お前が約束を破棄するようなことがあれば、お前の命は絶たれる」
「そんなことを聞いて、俺が黙っていられると思うか」
俺は【無情】に銃を向ける。
「無駄だ。俺は頻繁に【災禍】に進行状況を報告している。お前の行動に関しているものも含めて、全部な。その報告がいきなり途絶えたら、不審に思うのは当然だろう」
「俺がお前のふりをして報告をすればいい」
「それも無駄なことだ。通話でもすれば声の違いで怪しまれる。俺は死ぬから換われない。メールもできない。第一、俺の携帯には百五十四桁のパスワードが架かっていて、誰も中の情報を見ることは出来ない」
俺はそれを聞いて、大人しく銃を下ろした。
「ちっ、用心深いヤツだ。誰がお前をこんなに完璧に仕立て上げたのだろうな」
「【災禍】に決まっている」
「そりゃそうだろうけどよ」
俺はモニターに目を戻す。ひとつの部屋に集まった四人のプレイヤーが映し出されている。
「今度はこっちに転送だ。配置はランダムで、荷物は≪免罪符≫の時に持っていたものだけ」
「お前も、復讐のことになればいくらでも頭が回るな」
「当たり前だ。何の為に生き返ったと思っているんだ」
「まあ、お前はまず先に、誰に生き返らせてもらったのかを考えるべきだな」
【無情】はなかなか鋭いことを言う。俺のどんな嘘も見抜くし、どんな言い訳も通用しない。
「お前は、俺に買われたとき、不満そうな表情をしていたな」
「当たり前だ。俺の主は【災禍】だけだ。それに、俺は金に釣られるような馬鹿な人間じゃない」
「まるで人間じゃないみたいだな」
俺のその言葉に不快感を覚えたのか、急に【無情】の顔が強張る。
「どこでそんな言葉を覚えた!」
「さあね。お前には関係ない」
「【災禍】だけだ」
「何が?」
「俺のことを人間じゃないといっていいのは、【災禍】だけだと言っている」
コイツはそれほど【災禍】を尊敬しているのだろうか。
「お前は、【災禍】の狂信者だな」
「何が悪い」
「答えたくない」
危険を感じ、俺は会話を中断させ、目の前の作業の方に集中した。
急に会話を切り出したのは、【無情】の方だった。
「お前、プレイヤーに正体ばれていないよな」
「…、ああ。多分な」
「確信がないのか」
「はっきり言う。ない。だがいくらかばれないようにはしてある。何も怪しい動きはしていないし、ルール説明で喋る時も、できるだけ声を高くして喋った」
「何故高くした?低くする方が簡単だと思うが」
「俺がプレイヤーの役を演じる時は、暗いプレイヤーの方がやりやすいんだよ」
「そういうことか」
俺は再び集中する。もうすぐでゲームは終わるのだ。俺の復讐が成し遂げられる。
「そんなに焦るな。結果は向こうからやって来る」
「何に対して言ってるんだ」
「お前の行動にだよ」
【無情】は観察力も鋭い。
「プレイヤーにとっては、真相は必ず来るものなんだよ。生き残ればの話だけどね」
「それは今は関係ないじゃないか」
「真相は結果だ。生き残れたか死んだか」
「へえ」
俺は大して興味がなかったので、そのまま作業を続けた。プレイヤー達の転送も完了。道具の転送も完了だ。後は、ルール説明をするだけだ。それで、プレイヤー達が勝手に殺し合ってくれる。
「あ、電話だ。悪いが、俺は一旦外に出るぜ」
【無情】が外に出て行く。
俺は、最終的に誰が生き残るかを予想していた。本当は誰でもいい。最後には俺が殺すのだから。だが、ひとつ気掛かりなことがある。【不明】のことだ。アイツが何らかの理由で記憶を取り戻したりすれば、厄介だ。ゲームの内容は単純な殺し合い。アイツが記憶を取り戻せば、間違いなくあいつが生き残る。それで俺のところにやって来る。俺が殺される可能性も、低くはない。そのことを考える必要があった。
「失礼。【災禍】からだった」
【無情】が戻ってきた。
「残念だ。お前、」
【無情】は少し間を開けてから、続ける。
「死ぬぜ」
「何だって?」
「だから、死ぬって。ゲームが終わったあと、お前は間違いなく処分される」
「構わねえよ。俺の復讐が遂げられるならな」
「無駄だ。お前の復讐は未遂に終わる。一人必ず生き残らせる。最初からそういう約束だっただろう」
「俺が【災禍】に抵抗するほどの力を持っていないとでも?」
「お前は確かに、殺傷力の高い武器や、時空の歪システムを持っている。だが、【災禍】はもっと強力な時空の歪システムを持っている。いわば、親機みたいなものだな。お前のが子機だ。【災禍】の時空の歪システムは、≪時空の揃≫と呼ばれていて、子機のはたらきを無効化することができる。それに加え、本来の用途でも使用できる。それを考えれば、【災禍】の前ではお前は無力に等しい」
もうゲームの準備はできた。俺がどうなろうと、生き残ったプレイヤーは俺に殺される。俺が殺されるのはその後だ。
「結局、俺が殺されるのはいつなんだ?」
「ゲームが終わった後だ」
「丁度いい」
「お前の計画通りにはいかせないからな」
そう言って【無情】は外に出て行った。
さて、プレイヤー達も起きたことだし、ルール説明でもするか。
【最悪】、完全に劣勢です。




