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CRISIS  作者: 54
一方的殺人・独り抜け孤独戦争
51/63

50、【不明】⑧ 微笑

 不意に、扉が開いた。


 開けたのは、【常闇】。濡れた衣に茶色いシミ。不気味な雰囲気を漂わせている。それが、目の前にいる。


「外側から開けられた……」


「いいから早く出ろ。他のプレイヤーもいる。ただ、【刹那】だけがいないんだ」


 【常闇】は、困ったような顔をして見せた。が、一瞬そいつの口の端がつり上がったのを、俺は見逃さなかった。


「【不明】、まさか、本当に……」


「扉のことか?俺は気付いてなかった。外側からも開けられないと思ってたよ」


「まあいい。とにかくここを出ようぜ。他のプレイヤーもいるってよ」


 俺達は部屋から出る。俺が最後だったため、扉を閉める。その時に必ず部屋の中が見えるものだ。部屋の中には壊れた時計のカケラが散乱していた。


「何をしてるんだ?早く閉めろよ」


「ああ、そうだな」


 俺は扉を閉めた。扉は引き戸になっている。



 ********



 三つ目・・・の部屋の解放。これでゲームは終了、のはずだが、もう少しプレイヤーの動きを見ているか。少し面白そうなやつがいるんでね。


「ああ、こいつか」


 そうだよ。コイツは俺の作ったゲーム内で大活躍さ。今回も面白い行動を起こしてくれることを願う。


「お前も大分悪趣味だな」


 俺はただ復讐がしたいだけさ。でも、俺自身が手を下すんじゃない。やつら自信が殺すんだ。面白いだろう?思わないか?


「俺は全く思わんな」


 ああ、【絶命】が死んだからか。仕方ねえよ。アイツは邪魔者だ。プレイヤーに手を貸すなど、あってはならない行為だ。


「ふん、あんなことしておいて、あのお方に何をされても知らないからな」


 あのお方って?ああ、お前らの本当の主ね。そうかそうか。お前らはあいつに雇われていたんだっけな。そこを俺が借りたってわけだが、【絶命】の件については、また後で考えておくよ。


「悠長だな。それでお前の命の保障は出来ないが」


 別に構わない。俺は復讐さえ出来れば死んでもいいさ。そのために生き返ったようなものだからな。しかも二度も。


「くだらない、とは思うが」


 感じ方は人それぞれだ。お前にはお前なりの感じ方があるだろうし、俺には俺の考えがある。嫌ならここを去ってもいいんだぞ。もうお前らの契約期限は切れた。


「しばらくはここにいる。お前が何をするか見たいからな。それに、あのお方への情報提供にもなる」


 俺にとっては困ることなのだがな。別に、そのことで俺が死のうが生きようが、どうでもいいことだ。


「お前は復讐のためだけに生きているな。本当に」


 だからさっきからそう言っている。


「まあ、せいぜい頑張れよ。俺はちょっと外の空気を吸いたい」


《【無情】が外に出て行く。ここは牢獄とは別に取り付けられた、牢獄の管理室のようなもので、【最悪】が改造したのだ。》


 【無情】が消えたか。


 もうすぐで復讐は終わる。俺の人生も、意味を成さなくなる。それでいい。それでいいんだ。復讐が終われば俺は死のう。俺が生きる意味はなくなるのだから。



 ********



 階段の前の扉がある無駄に広い部屋に、プレイヤー五人は集まる。ここがゴール地点だ。


 俺は【常闇】と話している。


「でもおかしい。プレイヤーが五人いるから、部屋は三つ解放されたはずだ。それなのに、ゲーム終了の知らせが来ない」


「そうだな。それよりも、【刹那】だけが何故かいないんだ。何故だろうか」


 プレイヤー五人とは、【常闇】、【黒雲】、【文殊】、【名無】、そして俺だけだ。確かにさっきのゲームで生き残った【刹那】だけがいない。話し方から考えて、【常闇】は【刹那】と同じ部屋ではなかった。でも【常闇】が言っている「何故」の答えは「殺された」で合ってるはずだから、もしかしたら俺達を騙しているのかも知れない。目的はわからないが。


 俺と【常闇】が話している間、【黒雲】はずっと扉を調べている。気になったことでもあるのだろうか。【名無】も気になり始めて扉の近くだ。


 【常闇】が、【文殊】の肩を叩いた。


「【文殊】、すまんが、ちょっと【刹那】の様子を見て来てくれ。さっきから姿が見えんのだ」


「俺は、お前が殺したんだと思うが」


「何故そう思う?」


「お前の人格からっていうのもあるが、お前、【不明】と【名無】がいた部屋のほうに一人で行って三人で帰って来たじゃないか。お前は俺達とは違う部屋のプレイヤーで、ひとりだけ抜け出しているということは解ってるから、あの二人もお前とは違う部屋だ。俺達の部屋には俺と【黒雲】しかいなかったはずだから、【刹那】と同じ部屋なのは残っているお前だけということになる。違うか?」


「違うな。俺は【不明】のいる部屋に行く前、【名無】を送っている。帰りが遅かったため、俺が迎えに行ってやったのだ。それで話はかみ合うだろう?」


 【文殊】はなんとなく納得したようだった。俺からすると、【常闇】の言い分には不審な点がいくつもある。だが、こんな状況だ。正しい判断ができなくなっている【文殊】が悪いわけでもない。俺だって正しい判断ができない。これから行く【文殊】を止めなければいけない。が、止められない。頭では解っているのに、体が理解できないのだ。


「部屋は?」


「あっちだ」


 【常闇】は、俺達がいた部屋ではない方の廊下を指差す。【文殊】が何も言わずに行ったところから見て、あそこは【常闇】がいた部屋だ。


 その瞬間、【常闇】が笑った。ほんの一瞬だった。それを俺は見逃さなかった。

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