39、【双旋風】⑨ 免罪[後編①]
だるさ急上昇中。意味不明および何回も出てきた話および話の意図がつかめないなどに注意。
俺は逃げた。【常闇】から、いや、正確には戦いから逃げた。戦いそのものから逃げた。が、それがいけないことだとは思わなかった。生き残るためだから。生き残るためなら、何度でも逃げてやるさ。ただその代わり、あまり人殺しはしたくない。生き残る代わりに殺しはしない。他人を殺してまで生き残りたいとは思わない。【殲滅】を殺した時も思った。
それよりも、【常闇】の動きが気になる。アイツはあの後どうしたのか。
とにかく、俺はひとまず安全を確保するため、部屋に入る。箱はない。誰かが持って行ったか、元々プレイヤーがいたのか。おそらく後者だろう。こんな状況で箱を持って行こうというやつはさすがにいないだろう。俺は部屋の扉に向かい合わせになる壁に背中をつけ、いつでも発砲できるように銃を構える。【常闇】が入ってきたら打てるようにだ。
免罪符を持っているプレイヤーが全くわからない。【常闇】が持っているというのは知っている。
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不意に、扉が開け放たれた。俺は開けたプレイヤーを見てみる。
「お、【不明】か」
「【双旋風】じゃないか。何してんだこんな所で」
入って来たのは【不明】だった。正体不明のプレイヤーだ。
「なあ【不明】、少し質問してもいいか?」
「ああ。答えられる限りは答えてやるよ」
「じゃあ、こんなこと聞くのは失礼だとは思うが、お前は主催者ではないよな」
「俺は違うよ。絶対に違う。俺がもし主催者だったら、こんな所に来ない」
「だよな。それで、お前は今、免罪符を持っているか?」
「持ってるよ。さっき部屋で見つけたんだ。だが安心しな。俺は人を襲ったりはしない」
【不明】は免罪符を持っている。
「俺も免罪符を持ってるよ。お前と同じように、俺も襲ったりはしないさ」
「お前も平和主義か」
「いや、平和主義ではないね」
お互いに情報交換はできた。
「ひとつ、気になることがある。ひとつといっても、他にも気になることはたくさんあるが」
気になることは積もるほどある。それは俺も同じだ。俺はいつの間にか銃をしまっていた。
「俺はこのフロアに来るまで、【文殊】と行動していたんだ。が、このフロアに来たら、【文殊】はいなくて」
「ということは…………だな」
「そうだ。きっと”ヤツ”はそういうものを操れる何かを持っている。ルール違反をしたときのプレイヤーの死に方とか」
「ああ。少なくともヤツにはそれくらいの科学力がある。それ以上かもしれないが」
「それ以上だ。ヤツが操れるのは空間や時間だけじゃないよ。ヤツは………」
「ここまでにしておこうか。ヤツが見張っているかも知れないからな。不用意な言動が命取りになる」
「そうだな。やめておこう。だが、俺はヤツのことを知っている。ここにつれてこられる前に、話した」
「ヤツとか?」
「ああ。俺はヤツのことを少しだけなら知っている。が、ヤツの全てを知ることは、俺達には無理なことなのかもしれない」
「道理だ」
この会話が終わると、【不明】は部屋から去っていった。俺も少しは危険を感じた。勿論、【不明】の決断は正しかったさ。この部屋から逃げるという決断が。でも、俺には無理だったよ。ここから逃げることは。扉を開けてみてみると、【不明】はいなかった。【不明】はいなかったんだ。特殊能力か何かで姿を消したのだろう。
「【双旋風】、残念だったな」
俺は一瞬、今起こっていることが理解できなかった。




