38、Despair
死ぬのは誰だ?
噂によると、【荒廃】が死んで、【双旋風】が行方不明になったらしい。
そんなもんで、今私は部屋にある免罪符の回収に向かっている。免罪符はすでに持っているが、危険を減らすためにはなるべく取っておいた方がいい。
私は廊下を歩いているのだが、突然、出会ってはいけない人物に遭遇してしまった。
「チクサイか。やはり会えたか。お前ならここに来ると思っていたぞ」
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【逆風】を見つけた。
「【常闇】、私をどうするつもりだ」
【逆風】は銃を構えている。警戒心丸出しだ。一方俺は、武器を出さずに普通に話す。
「警戒しすぎだな。まあ、安心しろ。ここでは殺さないさ」
「じゃあ何だ」
「別に。というか俺はまだ何もしていないぜ」
俺は、【逆風】が背を向けて歩いていくのを確認してから銃を取り出した。
「残念だったなチクサイ。お前は死ぬ」
パァァン
一瞬、銃声が廊下に響いた。【逆風】が倒れる。俺は【逆風】の免罪符を奪う。
「おつかれ。後は俺に任せときな。ヘヘッ」
俺は、素早く他の部屋に逃げ込んだ。
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【逆風】が死んだらしい。俺の携帯端末にメッセージとして送られてきた。まったく、恐ろしい世界だよ、ここは。
「そうだよなあ?【常闇】」
「ああ。そうだな」
俺は今まで三つ目に入った部屋にいた。箱は空だった。俺は危険をなるべく回避するため、部屋の中に隠れていたんだ。そこへ、【常闇】が入って来た。俺は銃を構えている。
「【双旋風】、まだ死に足りないか?」
「まだって、俺はまだ死んでいないぜ」
【常闇】も銃を取り出し、構えた。
「なめんなっ!」
パン
部屋に短い銃声が響く。俺が放った。【常闇】には当たっていない。牽制のつもりだ。
「ほう、その程度か。それなら俺の方が上だ!馬鹿め!」
パァァン
【常闇】が引き金を引く直前に俺はしゃがんだため、当たらなかった。
ここは危険だ。逃げよう。
「逃がさん!」
パァァン パァァン
連続で撃ってくる。どれも俺には当たらない。俺はその隙にドアを開け、逃走する。
「ここで終わりにしよう!【常闇】、決着はまた後だ!」
俺はドアに、特殊能力で起こした風をたたきつけ、他の部屋を探すために逃げた。
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【逆風】が死んだ。カメラに映っていた映像で確認できた。メッセージも各プレイヤーに流した。プレイヤーに配られている端末ではなく、元から持っていた端末を使う。名前を伏せるためだ。
【双旋風】と【常闇】が争った形跡が見られた部屋があった。が、両者共に生き残っている。このゲームではよく分からないことが起こる。そんなことは俺でも想定していたさ。だが、ここまで謎が多くなるとは思わなかった。それに、俺の正体も一部のプレイヤーには知られているしな。【常闇】と【黒雲】には気を付けたほうがいいかも知れんな。それと【割符】か。この三人は絶対に俺の正体を知っているからな。【逆風】はもう死んだから問題ない。
さて、俺は一体誰なんだろうね。
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…。プレイヤー達の間の繋がりがうまく把握できない。俺、【文殊】は、人々から金を騙し取っていた。生前はな。何故この時代に生き返ったのかは解らない。まあ、“ヤツ”の仕業だろうな。ということは解る。目的も聞いた。復讐。俺達十三人に対する、復讐。それは、俺達が殺し合いをすることで達成される。だったら殺し合いをしなければいいのか、そうではない。ゲームをゲームとして成り立たせなければ、俺達は間違いなく死ぬ。だが、仮にゲームに勝利し、一人生き残れたとしても、最後は“ヤツ”に殺されるだろう。復讐が目的なんだからな。
今俺が一番気になるのは、“ヤツ”の正体だ。まったくもって正体不明、詳細不明。俺はそれを探す。不明を暴く。死ぬ前にそれだけ知りたい。
……。おかしい。どうしても感覚がおかしくなる。人が死ぬ、人が死ぬって、何回も聞かされたからなのか、人の死に段々鈍感になっていく。ついには、自分でも人が死ぬって思ったり言ったりしている。どうしてもおかしいんだ。なぜだろう。人とはそういう生き物なのか。というのが、身をもって感じられる。ついこの前までは、「死ぬ」という言葉など身近には無い世界だった。が、今になって解る。死ぬことの本当の恐怖。死と隣り合わせで生きている。一歩間違えればそこは死。今まではそんなことはなかったはずだった。いつからか全てがおかしくなったんだ。
俺は正体不明の主催者を暴いてみせる。どうして人が死ななければいけないのか、問い詰める。
ここに宣言しよう。俺は絶望の深淵に沈む前に、やりたいことは全てやってのけるさ。必ず。
【逆風】死亡。




