29、【割符】① 東奔西走南消北去 [後編]
先ほど、【衛星】からメールが来た。情報提供だ。【衛星】によると、各プレイヤーに与えられた情報は違うものらしい。【衛星】には地図、【神速】には制限時間、ワシには扉を開く条件についての情報が与えられている。
このゲームは極めて難しいものと受け取った。十分という短い時間の中で、複雑であるこのフロアの中にいる三人のプレイヤーを見つけ出し、何処かにある扉に三人揃って向かわなければいけない。
が、ワシの場合、この状況は不利ではない。ワシはプレイヤー一人を呼ぶことができる。特殊能力によるものだ。勿論指定したのは【衛星】だ。これでいつでも呼べる。
早速呼んでみるか。暇だし。とりあえず携帯端末の「特殊能力」というモードを選択し、使うを選ぶ。もう少し待てば現れるのだろうか。
【衛星】が現れるまで暇で暇で仕方が無いので、無駄話でもするか。
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ワシは将軍だった。海外との貿易でたくさん得をし、この国を栄えさせた。金も大量にあった。わしは毎日幸せな生活をしていた。
ある日、一体という訳のわからないガキがやって来た。ワシは冗談半分に、屏風のトラを捕まえろ、と言ったのじゃが、あほな一体は簡単に請け負った。本当にアホである。少々イラついたワシは、一体を投獄し、棒打ちの刑に処して死なせた。それが全ての引き金になった。
一体が死んだ日から、ワシは毎日一体に殺される夢を見るようになった。呪いか何かだろう。さらに、兵士達にもその症状が見られるようになった。
一ヶ月経って、ワシの孫にも同じ症状が見られた。それはどんどん伝染し、孫の弟や、親友にも移り始めた。さらには孫の妻にも伝染し、心を衰退させていく。
やはりワシも歳なのか、心と共に滅びてゆく日が来た。ワシが死ぬ直前、大きな戦が起きた。その後はわからない。
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「あ、こんにちは、将軍様」
【衛星】が来た。それも、何も無い空間から何処からとも無く。
「おい、どうやって来たんJA?」
「なんかよく分からないんですけど、携帯端末の「特殊能力」っていう欄の横に、「空間移動」っていうコマンドが出現しまして、それを選んでみると此処に来たんですよ」
つまり、指定した人を自分の所に移動させられるという事か。便利だ。
「【衛星】の特殊能力はなんJA?」
「拙者の能力は、「指定したプレイヤーの居場所が分かる」です」
「そうKAそうKA☆ワシの特殊能力は「指定したプレイヤーを呼ぶ」JA☆」
「ああ、だから空間の移動が許されたわけですね」
そういえば、【衛星】の指定したプレイヤーを聞いていない。此処で【神速】にしていれば、このゲームはすぐに終わる。早速訊いてみる。
「拙者、将軍様を指定しました」
「EEEEEE!!!???此処で【神速】を指定していれば、早くクリアできるというのNI!今すぐ指定し直すんJA!」
「無理で御座います。一度指定したら変えられません」
「そんNA…」
「そんなに落ち込まないで下さい。探せばいいだけじゃないですか。それに、将軍様も【神速】を指定していれば早く見つけられたんですよ。特殊能力は諦めて探しましょう」
だが、【神速】を見つけるには、このフロアの部屋を全て調べる必要がある。此処には部屋が必要以上に用意されているため、どう考えても発見は困難である。残り時間はあと五分。余計な時間を食いすぎた。もし【神速】を見つけられたとしても、扉までが長いだろう。
「拙者と将軍様で手分けして探しましょう。見つけたほうがメールしてください。そして将軍様が、どちらかが【神速】を見つけたことを知ったら、すぐに拙者を呼び出してください。将軍様が見つけたのならそれでよし。拙者が見つけた場合は将軍様を【神速】の所まで案内します」
「うMU☆それは名案DA☆」
ワシと【衛星】は二手に分かれて行動することになった。
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二分くらいですぐに【神速】は見つかった。しかも見つけたのはワシだ。これで【衛星】を呼んで扉まで行けばクリア。順調だ。
【衛星】をさっさと呼び出して扉まで向かう。
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「此処が扉ですね」
確かに、それは扉だった。が、それは扉というにはあまりにも大きすぎる。大体三メートルはあるだろうか。それに上下で二つに分かれている。
「よくきたな。残り二分で、よく此処まで辿り着けた。誉めてやろう。だが、まだゲームは終わっていない。この扉を開けること。それがゲームの勝利条件だ」
何処からともなく声がする。
「待て、すでに三人揃って扉の前だ。もう開いてもいいはずじゃないのか」
「違うな。確かに扉を開く条件は三人揃って扉の前に立つ、とした。だが、条件はそれだけ、とは伝えていない。条件はいつも一つとは限らない」
「じゃあ、もうひとつは何だって言うんだ」
「上の扉を破壊する事」
扉は下から二メートルの所で切れ目が入っている。それの上の部分を壊す。それが扉を開ける条件。
「うわッ!」
【神速】が急に後ろに倒れる。何かと思えば、上の扉から爆弾を抱えた機械兵が飛び出してきている。あ、これ、あれだな。アクションゲームとかでよくある、敵を倒して爆弾を奪い取り、それを投げつけて破壊、とかいうやつだ。
「敵兵の数は五人!【神速】、いくぞ!将軍様は安全な所へ隠れてください!」
「うし!将軍様を護衛いたすのが我等の使命!全軍奮起!敵軍を殲滅せよ!」
全軍、って、二人しかいないよね。という突っ込みが出そうになったが、この状況じゃさすがにマズイ、と思ったので我慢した。
「敵を本陣に近づけるな!」
「戦利品は各自回収せよ!」
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
東に奔り西に走る。それならば機械兵は南に消えて北に去るのか。彷徨う戦士はいつ戦いをやめるのか。終わらない戦いを始めたのは、誰なのか。
誰も知らない事実に、誰かが驚愕する。




