24、【不明】③ 地獄滑走
三千文字ピッタリ。
現在、俺の順位は十位。これは大変低いといえる。最下位は【荒廃】。これで今の所は俺が最下位になることはない。だが心配なのは、「最下位」というランクが十二位から十一位に上がるという事。つまり、プレイヤーが一人石像に飲み込まれる。それは確実に、【荒廃】であった。しかもそいつは今石像の目の前。どうにかして脱落候補を守り抜かなければならない(謎)。
十一位は【文殊】。あいつは何をしでかすか分からない。今日初めて会ったばかりなのでよくわからないが、なんとなくではあるが危険なオーラを放っているのが分かる。特殊能力も気になるし。
十二位が脱落寸前の【荒廃】、十一位がペース上げてきそうな【文殊】に続き、十位がさっき他プレイヤーの罠にかかった俺。最悪の組み合わせだ。今の俺は完全になめられている。なんとかせねば。
と、今思いだしたのだが、先ほど水を撒いたんだった。これは一種の作戦。というか、一種も二種も作戦だ。つまりは混合種だ。まあ、無駄話は此処までにしておこう。もうすぐ計略が発動(?)する。RPGでいうと魔力を全て使い果たす魔法くらい強力だ。ただこれでラスボスは倒せない。言うなれば【荒廃】は一番最初に出てくるザコキャラのようなものだ。体力7くらいのクズだ。喩えだけど。
で、発動する計略というのは、簡単に言えば、滑らせる事だ。普通、滑ったら転ぶ。慣性の法則とか何とかで普通は転ぶ。だが此処は普通じゃない。床がツルツルの、しかも廊下だ。それに直線。ツルツルだという事は、通常の何倍も滑りやすいという事。何度も言うようでしつこいかも知れんが、滑ったら普通転ぶ。此処は普通よりも滑りやすい。この関係は何を意味するか、それは、またしても出てくるのだが慣性の法則とか何とかで滑っても更に滑り続ける。それで加速。だが滑り終えた頃には当然のごとく転ぶだろう。これで【荒廃】は石像の魔の手(実際手は無いので歯)から逃れる事ができる。やったー。どうして俺が喜んでしまうのかは分からんが、これでいいのだ。わっはっは。
とうとう【荒廃】が補助装置の場所までやって来た。ふっふっふ。これでお前は一時的に助かってしまうのだ。
「うぎゃあ!」
よし、滑ったぞ!これで俺達は助か――
「ぎゃああっぁぁぁぁああああぁぁあぁぁ!!!」
「わっ!」
【荒廃】がいきなりすごいスピードで滑り始め、あっという間に見えなくなってしまった。しばらくすると遠くの方で大きな衝突音と同時に、「ギャアアアァァァァ!!!」という叫び声が聞こえた。これはまずい。俺が最下位になるor石像に飲み込まれる確率が断崖絶壁のように垂直に跳ね上がっている。なぜなら、俺は今十一位で、【文殊】が十二位だからだ。アイツは本気を出してくるに違いない。そして、【荒廃】がプレイヤーによって殺害される可能性だって十分にある。てか、もう死んでるかも知れない。すごい音立てたからな。
考えている間、石像に異変が起きた。床を滑りながら移動していた石像が、急に加速し始めたのだ。しまった、と俺は思った。この事を想定していなかった。石像の大きさは道の幅とほぼ同じで、触れる面は床全体。それに水を撒いたのは道のど真ん中だ。というか、水で石像が滑るのもごく当たり前の事だったのだ。これはヤバイ。なんとかして石像の速度を緩めねば。考えながら俺と【文殊】で全力疾走!
「お前、何やってんだ!」
「いや、ちょっと最下位候補が助かると思ってね」
「それは別にいいが、石像をどうにかしろぉぉぉ!」
「分かってる、分かってるよ!考えてるんだから話しかけるなぁぁぁ!」
走りながら大声出すと余計疲れるんだよ!そうでなくても話しかけるな!
まずは石像をどうにかして止めるんだ。ほかの事は後で考えろ。石像をどうにかする。石像をどうにか。どうにかどうにかどうにかどうにかどうにか……………―――――――、、、、、、、。。。。。
ピーーーーン!!!
そうだぁぁぁぁぁぁっぁっぁっぁあああっっっぁあああぁぁ!!!!!
「閃いたぁぁぁ!!!」
いきなり叫び出した俺に【文殊】は驚きながら、答えを待った。どのくらい驚いたというと…、あ、待て、こんな事してると忘れちまうぞ。今回ばかしは大人しくしておく。
「これしかない!これを使う!」
俺は叫びながら袋から石を取り出す。今思えばこの石は役立った。火をつけたり火をつけたりで。あれ?それしかないじゃん。それは別にいい。此処では火は使わない。使ってもどうせ暖かいくらいしかないし。それに石はひとつだけ。失敗は許されない。よし、早速実行に…、
「おい、どんな戦法なんだよ」
そうだった。作戦の説明をしていなかった。
「内容はいたって簡単だ。今、最高速度かもしれない石像を、転ばせる。この石でな。どうだ、簡単だろう?」
「内容は簡単だけど、成功させるのはまさに至難の業だ。何か必勝の策でもあるのか?」
「フフッ、よくぞ訊いてくれた。必勝の策は、無い!」
「おい!」
「ごめん。本当にもうなにも無い。一か八かだ」
一番転びやすい場所は何処か、俺は必死に考えた。まずそれを最初に考えるべきだったのだろうが、さっきの俺にそれを考える余裕は無かったのだ。
言い訳はここまでにして、本題に入ろう。人間でも石に躓いて転ぶやつが居る。それだ。石像に足があると仮定して、その足の所に石を置けばいいんじゃないか?という結論に至った。案外いいかもしれない。
俺は石像の端の方に石を投げ込む。結果はどうなるか。転ぶか、転ばないか?
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空虚な時間が流れたあと、石像がついに転んだ。勝った。これで俺達は全員生き残る事ができる。床はバキバキと音を立てて割れる。
「でも、一人死ぬのは変わらない」
【文殊】が、意味の分からない言葉を吐いた。
「え?」
「だから、これでも一人必ず死ぬっていうんだよ」
「それはどういう事なんだ!石造は停止しただろう!」
「ああ。確かに石造は停止した。だがな、ゴール前のシャッター、あれはまだ停止していないんだよ」
「だけど石像には巻き込まれないから…、」
「だが、お前はシャッターが閉まったあとどうなるか想像していないだろう!」
シャッターが閉まったあと、どうなるか?決まってるじゃないか。ここから出られなくなって…、
そうか。そういうことだ。俺はシャッターが閉まっても生き延びられると思いこんでいた。だがそれは間違い。問題はそのあとどうやって生きていられるか。ここには食べ物も水も無い。だったらどうやって生き延びられるというのか。
「そういうことか」
普通に考えればわかったのかもしれない。しかし、今の俺達は通常ではない。窮地に立たされているのだ。まともな考えができなくなっているのかもしれない。俺は半ば諦めたようになりながら、走り続けた。俺は十二位になっている。【文殊】め!いつの間にか抜かしやがった!今度見つけたらただじゃおかねぇ!と、俺は半狂乱状態になりながらも、「限界だ!もうやめてくれ!」と必死に危険信号を送り続けている脳みそを無視しながら走り続けるのであった。
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石像が停止した。これでは面白くないな。今は【神速】がゴール済みだ。
あと、なにか面白い仕掛けでも取り付けるか。それを知らせれば、面白さは大分元に戻って来る。それでいい。早速何か取り付けよう。勿論すべての事は機械に任せるけど。
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死ぬのは誰だ?




