1、【双旋風】① 牢獄
俺は目覚める。
ここは、見たところ牢屋のようだな。誰が俺をこんなところに連れて来たんだ?手元を確認していると、やはり俺の手には二本の棒が握られていた。そういえば和尚はどうしたって言うんだ?やはり地獄行きか。あの時は落ちる瞬間に棒をつかんで道連にしてやったぜ。
それより、どうやって脱出するか。このままここにいては何をされるか分かったもんじゃないし。というか絶対危険だし。早く逃げたい。
「やっと起きたか、一本」
誰かが来て俺に話しかけた。
「残念だが、俺は一本ではない」
「なんだと」
「俺は……、二本だ!」
「…」
名前を二本に変えたのは、和尚の持っていた棒が真っ二つに折れてしまったからだ。本当は一本のままが良かった。棒の数もな。
「いいからとっとと出ろ」
そう言って誰かは鍵を開ける。気づいた時には、もう誰もいなかった。
出る前に牢屋の中を見ていると、一枚の紙が落ちている。
『今よりお前のコードネームは【双旋風】だ。』
チッ、俺の名前までコントロールされているって訳かい。仕方ねえ。この施設の中では俺は【双旋風】ってことにしてやるか。
あと、小さい紙袋がある。中身は…、水五百ミリリットル入りのペットボトルと、包帯、キッチンタイマー、ロープ、そして包丁が入っていた。何に使うんだよ、こんなもの。
ここから出なければなにも始まらんな。とにかくここを出よう。
ん?なんだここ?行き止まり?いや、違う。扉だ。扉がある。入るべきかどうか俺はしばらく考えていたのだが、他に道はない。仕方なく扉の向こうで待っているものに立ち向かう事にした。