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魔王の嫁を取り返せ!  作者: 鷲野高山
一章・異能の星・レトアルス
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3話 現状把握

ここから物語のスタートです!


波線は、視点切り替えの際に使用しています。

長めの空白は、場面の切り替えです。


解説等は後書きに書かせていただいております。

 

 上空から太陽の光が差し込み、周囲が明るく照らされた穏やかな森の中。

 そんな木々の間を駆けていく、一つの小さな人影があった。その正体は活き活きとした様子で走っている少女、 名を「ナタリア」という。


(来年からは学校だ。それまでに絶対『ラレース様』の力を引き出すんだ!)


 屋敷を黙って抜け出したナタリアは、自分に言い聞かせていつも練習している場所へと急ぐ。それは、森の中にある誰も知らない秘密の練習場所。彼女だけの秘密の広場。他の誰にも内緒だ。


(家族のみんなは、気にしていないと言ってくれるけど、私がラレース様の力を使えたら、きっとみんな喜んでくれる。きっと、私を理由に馬鹿にされなくなる。だから今日こそは……)


 そう何回も自分に言い聞かせて、森の中を走る。




 数分後、不意になにか聞こえた気がしたので、立ち止まってあたりを見回すナタリアだったが、森の中だからよくは分からない。特に異変は無さそうだ。


「気のせいかな?」


 呟いて走り出そうとした時、ナタリアの視界の端に何かが映った。木々の隙間から近づいてくる何かがナタリアには見えた。

 なんだろうと思い、その正体を見極めようとナタリアはじっと目を凝らす。


「え……」


 ナタリアは近づいてくるものの正体が分かり、思わず茫然としてしまう。

 それは……巨大な火の塊。それが、ナタリアを焼き尽くさんと、ものすごいスピードで一直線に近づいていた。


「あ、あんなの私の実力じゃどうにもできない…逃げなきゃ…」


 慌てて判断し、全力で駆け出す。

 ……しかし、火のスピードは速く、次第にナタリアと火の塊との差が縮まっていく。

 このままじゃ死んじゃう… そう感じてしまったナタリアの足が震え、もつれて倒れてしまった。火はもうすぐそこまで迫っている。


「た、助け……て…………ラ……レー……ス様……」


 幼い少女の中で恐怖が渦巻くが、震える声で力を振り絞る。

 しかし、出てきたのはいつも通りの小さな火。ナタリアの精一杯の抵抗も空しく、それは巨大な火の塊を前に呆気なく消え去ってしまった。


「……あ…………あぁ……」

 

 ナタリアの心を絶望が埋め尽くす。


(あぁ……結局最後までラレース様は……私を助けてくれなかった)


 完全に諦め、目を閉じるナタリア。

 彼女の脳裏に浮かぶのは、落ちこぼれの自分を見捨てず励ましてくれた家族、屋敷のみんな。

 炎の高熱が迫ってくるのを身体で感じながら、どうすることもできず、ナタリアは死を覚悟した……




 ――――その瞬間、光が満ちたのをナタリアは感じた。目を閉じていても分かるほどの光だ。

 炎の高熱から守られるように、暖かさがナタリアの身体を包む。その光に不思議と恐れは抱かず、何故だかナタリアは安心できた。

 炎の恐怖から解放され、ゆっくりと思考を手放していくが、何が起きたかを確かめようと、頑張って目を見開くナタリア。


 薄れゆく意識の中、少女が目を閉じる前には……

 ――――風にたなびくロングコートを纏った……大きな、たくましい背中が見えた気がした――――

 



   ~~~~~~~~~~



「何が起きた!?」


 その青年にとって今回の仕事は、よほどのヘマをしない限り簡単な仕事のはずだった。依頼は少女(ナタリア)の暗殺。

 時折、少女がこっそり屋敷を抜け出しているという情報を、依頼主からもたらされていたため、屋敷の護衛に見つからぬよう、屋敷の見えるギリギリの範囲から慎重に屋敷を見張っていた青年。

 そして、少女が抜け出したのを確認した青年は、少女を追いかけ、ある程度屋敷を離れた時に「イグニス・トールス(火の球)」を放った。


「聞いた話じゃ、あのガキの能力は低いらしいから、これで充分なはずだ」


 青年はそう確信する。

 少女は必死に逃げているが、足がもつれたようで倒れてしまう。


「ハハッ! ガキがイグニス()を使ったようだが、そんな程度じゃ俺のイグニスは止められねえ。どうやら、あの家の次女の噂は本当だったようだな」


 観念して動きを止めた少女。依頼完了だな、と青年が確信した時にそれは起きた。

 突如溢れた光に青年のイグニスが打ち消される。

 五秒ほどだろうか。驚いて光を凝視していた青年の前で徐々に輝きを失っていく光。その中から(一俊)が現れた。


(あの男はなんだ!? どうしていきなり現れた!?)


 若干混乱している青年をよそに、なにかを探すように周囲を見る一俊。そして、その視線が青年のいる木をまっすぐに見抜く。まさかこの距離で気づかれたというのか、そう勘ぐった青年は慌てふためく。


(ヤバいヤバい! なんだアイツは!? 実力の未知数の男……いや、こちらに気づいたということは、なかなかの実力者のはずだ。それに、さっきの妙な光も正体が掴めない……下手したらこっちが殺られるッ!)


 とっさにそう判断して、青年はすぐさまその場から逃げ出した。





     ~~~~~~~~~~






 一俊が気がついたら頭の痛みは消えていた。


「おっかしいなー」


 そう思っていた一俊だが、もっとおかしな事に気がついた。


「……ここは何処だ?」

 

 一俊はいつの間にか森の中にいた。

 また夢でも見てるのかと思ってまわりを見ていた一俊だが、もっともっとおかしなものを見たので、思わず凝視する。

 そこには、宙に浮かんでいる白い髪の小女が。しかもなんか超ドヤ顔だ。


「…………」

(ドヤァ!!)

「…………」

(ドヤァ!)

「…………」

(ドヤァ…)

「…………」

(ド……)

「……『いい加減反応せんかぁ!!』……」


 少女に叩かれる一俊。それでも尚、彼は無反応である。


「……まぁよい。さて、気がついていると思うが、ここはお主がいたところと違う世界。つまり、異世界じゃ」

「……いや、分からないから」

「……あそこを見てみるのじゃ」


 小女に言われた通りの方向を一俊は見る。そこには……地球から見た月よりも、大きく見える星があった。その大きさは段違い。地球では見ることが叶わない光景である。


「……あれは月じゃない……よな? あんなに大きくないし……あれはなんだ?」

「わしがお主を異世界に連れてきた。しかし、帰ろうと思えば、帰れる」


 小さく呟かれた疑問。小さいといえども距離的には聞こえているはずなのに、少女にスルーされる。


(しかし……そうかぁ異世界かぁー。普通に考えればそんなこと信じないが、目の前に動く証拠(小女)があるし、あの星のこともある。しかも帰れる……帰れんの!?)


「帰れんのかよ!? だったら、さっさと元いたところに戻せ!」

「まぁまぁ、そう焦るな。帰る方法はじゃな、お主と共に巻き込まれた女性と、この世界で会うことじゃ。そうすれば帰れる」

「恵美さんか? でも、恵美さんこの近くにいるのか? 何処にいるか分からん……」

「それなら大丈夫じゃ。連れてきた直後の今だけなら、わずかに力の痕跡が残っているので画面に出して話すことができるぞ」

「楽勝じゃんか! それならそうと早く言ってくれよ! じゃあその画面とやらを出してくれ」

「了解じゃ。そら!」


『ブォン!』と音がして空中に画面が現れる。そこには、ニコニコ顔の恵美が。


 ……なんでこの状況で笑っていられるんだ? 疑問しか持てない一俊だが、恵美に話しかける。


「……恵美さん? 大丈夫でした?」

「あら~かず君~。どうしたの~?」

「……どうやら、俺達異世界に来ちゃったみたいなんです。恵美さんは、今どこにいるか分かりますか? 例えば、あたりの景色とか」

「ん~、よく分からないわ~。そうだ、聞いてかず君~。私ね~なんとさっき、プロポーズされちゃったの~。きゃ~! どうしよう~」


 ……いったい何やってんだ? この人は……? そう思う一俊だったが、気をとりなおして話しかける。


「……何処の誰にプロポーズされたんですか?」

「なんかね、まお~って人がね、私の前に来てこう言ったの。

『気に入った! 戦争が終わって、全ての星を支配したら、貴様を我が妻にしてやろう』

だって~。きゃ~! 私、困っちゃうわ~。で……」


 そこで、『ブツンッ!』と映像が途絶えた。


「「………………」」

「……いやいやいやいや、無理だって! なんだよまお~って! 絶対に魔王のことだよね!? しかも、戦争とか支配とか言ってたよね!?」

「……というわけでお主には、魔王の嫁を取り返すついでに、魔王を倒してもらうのじゃ!」

「無理だって言ってんだろ!!」

「しかし、お主元の世界に戻らなくともよいのか?」

「いいよ! 元の世界に戻らなくたって、俺はここで頑張って平和に暮らしていくから!」

「じゃがの、あの女性は魔王の妻になってしまうのじゃぞ?」

「大丈夫だって! あの人なら魔王のとこだろうがなんだろうが、きっとたくましく生きていけるから!」

「しかし、支配と言っていたぞ?平和には暮らしていけぬと思うのじゃが……」

「………………」

「それに、このことを知っているのはワシ達だけかもしれんぞ?」

「………………」

「それに……」

「だぁーうるせえ! じゃあどうしろってんだ!?」

「それなら、問題ない。お主にはワシが鍛錬をつけてやろう。それから、学校にも通ってもらおうかの」

「学校って、なんの学校だ?」

「『クレアトール』の学校じゃ」

「……クレアトールって?」

「『クレアチオ』と呼ばれる力を操る者たちのことじゃ」

「……でも、俺はそんな力持ってないぞ」

「それは、お主が知らないだけじゃ。ちゃんと持っとる」

「……そうか、ならとりあえずお前の言うとおりにしよう」

「なら、決まりじゃな」




 ―――ん? なんとなく会話していたが……


 ふとある事に一俊は気づいた。


「……そういえば」

「なんじゃ?」

「……お前はいったいなんなんだ?」

「……今更かっ!?」


場面としてはナタリア、ナタリアを襲撃した男、一俊の順番ですね。

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