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魔王の嫁を取り返せ!  作者: 鷲野高山
プロローグ・日常
3/38

2話 日常の崩壊

3話から物語の開始です。

「ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ! ピ……」


 ケータイのアラームを止め、一俊はゆっくりと行動を開始する。

 顔を洗って、リビングに行こうと階段をおりていると、香奈海が階段をのぼってきた。


「おはよう。香奈海」

「あー! 今から起こしにいこうと思ってたのにぃ……」

「……起きてて悪かったな」

「本当にそう思ってる?」

「思ってる、思ってる」

「じゃ~、香奈海の頭撫でて!」

「……ほら」


 一俊が仕方なく頭を撫でると、途端に嬉しそうな顔をする香奈海。


「はい、終わり」

「えぇ~? もう終わり~?」

「頬を膨らませたって終わりだ。みゆ姉は起きてるか?」

「ぶぅ~……たぶんまだ寝てるよ」

「じゃあ、俺が起こしてくるから。朝ごはん頼むな」

「……分かった。後でまた頭撫でてね!」


 ドタドタ、と香奈海は階段をおりていく。

 それを見送った一俊は、深幸を起こしに部屋へ向かう。


「みゆ姉ー起きてるかー?」

「………………」


 返事が無いので仕方なく部屋に入る一俊だが、


「みゆ姉ー起きろ―!」


 彼がユサユサと深幸を揺するも、彼女は起きない。


「………………」

「おーきーろー!」

「……う~ん……あ、かー君おはよ~!」


 飛びついてくる深幸の手を避け、一歩後ろに下がった一俊は、ベッドの上で「う~……」と軽く睨んでくる深幸を無視し、リビングへ向かう。

 リビングでは、すでに香奈海が朝ごはんをテーブルに並べて席についていたので、一俊も席に座る。数分後、深幸もやってきた。


「(ジー)…………」

「………………」


 視線を感じるが一俊は相手にしない。


「(ジー)…………」

「………………」

「(ジー)…………」

「………………」

「……かー君の意地悪……」


 と呟き、席に座る深幸。


「…………(勝った!)」




「「「いただきまーす」」」


 いつも通りに三人で朝ごはんを食べはじめる。


「かず兄、今日の晩ごはんは何がいい?」

「んー、ステーキが食いたいな」

「お姉ちゃんもそれでいい?」

「ふぃ~よぉ」

「……食べたまま喋るな、みゆ姉」


 そして、普段通り他愛もない会話をしながら朝ごはんを終える三人。


「「「ごちそうさまでした」」」




 一俊は二人とは違って、学力はそこそこの学校に通っているため、二人より少し早く家を出る。


「はい、かず兄。香奈海の作ったお弁当!」

「はいはい、ありがとな」


 香奈海の頭を一俊は軽く撫でる。


「かー君! かー君! お姉ちゃんの頭も撫でてー!」


 そう言ってくる深幸の頭も、しょうがないから軽く撫でる。  


(…なんだかんだいって俺も二人に甘いな)


 そんな事を考える一俊であった。


「じゃ、行ってきます」

「「いってらっしゃい!」」




 帰りの先生の話も終了し、いざ帰ろうと一俊が鞄を手に持つと秦一が話しかけてきた。


「悪い一俊、今日は一緒に帰れねぇや」

「なんか用事でもあんのか?」

「あぁ……。ちょっと野暮用がな……」

「……全然格好よくねぇ……」


 


 話し相手がいないので、帰ったら何をしようかと考えて帰り道を歩く一俊は、


「やっほ~、かず君~」


 名前を呼ばれたので、考え事を止めて立ち止まる。

 一俊が振り返ると、彼の家のお隣さんの大学4年生の恵美(えみ)がニコニコして手を振っていた。

白川恵美(しらかわえみ)」と大きく書かれた手提げ袋を持っている恵美。買い物の帰りだろう。人参が袋からはみ出ている。


「今学校の帰り? じゃ、一緒に行きましょ~」


 一俊はなぜか恵美と一緒に帰ることになった。




「晩ごはんの買い物の帰りですか?」

「そうよ~。今日はなぁんと、カレーなの~」

「……一昨日ぐらいに聞いた時もカレーだった気が……」

「え~? そうだったかしら~?」


(相変わらず、ぬけているというか、のほほんとしているというか……まぁ、天然っぽい人だな)


 そんな事を一俊が考えていると、一瞬あたりが光った。そして、急に一俊の頭が痛くなり、思わず一俊はしゃがみこんで頭をおさえる。


「それでね~……ん? どうしたの~?」


 恵美は、一俊が隣を歩いていないことに気づいて振り返り、未だしゃがみこむ一俊に近づいていく。


「ちょっと頭が痛くなっ『キャッ』て……」


(何事!?)


 悲鳴を聞いて顔をあげた一俊の目に入ったものは……

 何故か倒れこんでくる恵美の頭。心なしか時の流れが遅く感じて、悠長な事を考えてしまう。


(このままいくと俺の頭とぶつかるっぽい……じゃねぇ!

 ええぇぇぇー! ちょ、ヤメテ! 今頭うったら痛みでおかしく……)


 そんな一俊の願いも虚しく、


 「ゴンッ!」


 世界(視界)が光に包まれた……

 朦朧とする一俊の耳に聞こえたのは、


「カラン、カラン……」


 という空き缶が転がったような音。

 光が消えた場所には、最初から何事もなかったかのように……ただ空き缶だけが転がっていた。





次回から物語は始まります!

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