19話 いざ学院へ
前話の報告を削除したいのですが、削除する理由に該当しないんですよね… 消してはいけないのでしょうか? 誰か詳しい方いらっしゃったら教えていただけますか?
今更ですが、この小説で一応漢字の苗字持ちが偉いということになってますが、それはあくまでも属性を分かりやすくしたため漢字を用いた結果です。ファイアーとか、ウォーターっていう苗字の人って……いないですよね?
長くなりましたが、学院編始まりです!
一俊とナタリアが学院に入学する日の朝。
雲一つなく晴れ渡った空の下、屋敷の門の前に一俊とナタリアはいた。2人以外にも屋敷の人々が総出で、2人を見送ろうと門に集結している。
「では、リュークさん、皆さん。今までありがとうございました。大変お世話になりました」
屋敷の人々に向けて一礼して、一俊は言う。
「なに、かまわないよ。私達もなかなかに楽しかったしね。またいつでも来てくれたまえ」
「私も楽しかったですわ」
「僕も来年から学園に通うので、その時はよろしくお願いします!」
リューク、クレーヌ、ファビスが言う。
「……学院でまた会いましょう」
レミも渋々言葉をかける。
「「「「「お気をつけて!」」」」」
仲の良くなった屋敷の人々も一俊に挨拶をする。
「学院までは馬車で行くといい。学院ではナタリアをよろしく頼むよ」
そう言って手を差し出すリューク。その手を握り返して改めて礼を言った一俊は、ナタリアと共に馬車に乗り込む。それを確認したガーラスは馬車を出発させる。
手を振って見送ってくれている屋敷の人々に、動き出した馬車の中から手を振り返す一俊とナタリア。やがて屋敷は遠ざかっていき、レアラルスの街が見えてくる。以前来た時のように街には入らず、街の外壁に沿って馬車は進んでいく。
しばらくして見えてきたのは、巨大な建造物。
「……あれが」
「はい! あれが学院です!」
そう、あの巨大な建造物がいくつもあり、広大な敷地をもつ場所こそが『レアラルス高等学院』。
この道まで来ると一俊達以外にも、学院へ向けて歩いている者や、一俊達と同様に馬車で向かっている者など数多の人々がその姿を見せる。
そうして学院の門の前で馬車は停止する。
「今までありがとうございました、ガーラスさん」
「こちらこそ、ありがとうございました。またお逢いしましょう。お気をつけて」
「はい!」
馬車から降りた一俊は、ガーラスと握手をしながら挨拶を交わす。
そうしてナタリアと共に門をくぐり、学院の中へと足を踏み入れた。外から見て目についていたのは建造物だったが、庭や広場には緑が多く、色とりどりの花が咲き乱れている。
ナタリアと共にその光景を楽しみながら歩いていると、やがて「入学者はこちら」と書かれた受付と、それに並ぶ列が3つ見えてきた。2人も受付をするために列に加わる。
その列に並んでいる際、ルックを見かけた。ここからではよく聞こえないが、どうやら受付係の女性に声をかけているようだ。そして俯いて、とぼとぼと歩いていく。それを見て、やはり関わりたく無いと思った一俊だった。
その後どんどん進んでいき、やがて一俊の番となった。さっきはあまり顔がよく見えなかったが、受付の女性はかなりの美人さんだ。金色のロングヘアに、金の瞳。優しげな表情を浮かべていて、あの馬鹿が声をかけるのも分かる気がした。暫しの間、見惚れていたが、慌てて我に返り書類をだす。そんな一俊を見て、後ろでムッとした表情をしているナタリアに彼は気づかない。
「お願いします」
「はい。……カズトシ・ニーナさんですね。ではこれを持って開けずに、あちらの広場でお待ちください」
そう言って渡されたのは一枚の折りたたまれた紙。
ちなみに、「ニーナ」という姓は、あらかじめリュークと決めていた物だ。時沢という姓だと確実に面倒事が起きるとリュークから言われた一俊は、そんなのはゴメンだとすぐさま偽名を考えた。本当は名前も変えたかったのだが、ルックに名乗ってしまっているためにバレる可能性があるのでそのままにせざるを得なかった。
漢字の姓を持つナタリア達のような人々は、姓、名の順。それ以外は名、姓の順だそうだ。改めて変な世界だと感じた一俊だった。
一俊の後ろで受付をしていたナタリアと共に広場に向かうが、
「それじゃ、行こうか」
「……知りませんっ」
何故か不機嫌なナタリアに一俊は戸惑う。
そしてそのまま無言で広場並んでいる人々の列に並んだ。
「…………」
「……ナタリア?」
一俊が後ろから視線を感じて振り返るも、ナタリアは、プイッと顔をそむけてしまう。
(……なんで?)
(……自分で考えるのじゃ)
そうして時が過ぎてゆくとやがて、列の前に設置された壇に人が立つ。それは、先程受付にいたうちの1人。一俊が受付をしてもらった女性だった。
なぜその女性が壇上に立つのか一俊には疑問だったが、その疑問はすぐに解消される。
「新入生の皆さん。ようこそ、レアラルス高等学院へ。私は学院長の雷条セリアと申します」
(……学院長!? なんでそんな人が受付を?)
(いいから黙って聞いておれ!)
「さて、挨拶はこのぐらいにして、今後のことを説明します」
(……短いな……普通もっと長いんじゃないのか?)
(黙って聞けと言ってるじゃろうが! ……この世界ではこれが普通の長さじゃ)
「先程渡した紙を開いてください。そこに自分のクラスが書かれています。それを参考にあちらに集まってください。あちらにいらっしゃる4人の先生のどれかのクラスとなります。その後は、担任の先生に従って行動してください」
一俊の持つ紙に書かれていたのは、「レトアルス」の文字。
(これは……レトアルス組ということか? ……それにしても、紙を渡されるのがもの凄く早かったような)
(当たり前じゃ。交ぜられた紙から適当にとって渡すだけなんじゃから)
(……挨拶といい、クラス分けといい適当すぎんだろ)
まさかの事実に驚愕を隠せない。そんな一俊の手を覗き込み、文字を確認したナタリアは、
「やったぁ~! 一緒ですねカズトシさん! 行きましょう!」
諸手を挙げて喜び、一俊の腕をとって歩いていく。そうしてようやく復帰した一俊。
(……一緒なのはいいんだけど……さっきまでの不機嫌さは何処へ?)
(……ユーはもう少し乙女心というものをじゃな)
レトアルス組以外にも、ロムルキト組、ジプキアス組、カロブア組と、4つの星が名づけられたクラス名だ。
(レトアルス組は男の先生か……ルックがガッカリしてるな……ん?)
(……どうやら同じクラスになってしまったようじゃの)
その事にげんなりする一俊。そして、先生の話が始まる。
「よーし、40人全員集まったな? 俺がレトアルス組の担任のダミア・ドラードだ。よろしくな、お前ら!
さて、今後の説明をするぞ。自宅通いの生徒は、今日は帰宅だ。寮で暮らす予定の生徒は、少し残ってくれ。明日は、『崇魅祭』に向けてメンバーの選抜をするぞ。絶対に休むな! 教室は明日分かるので心配するな」
(崇魅祭ってなんだ?)
(後で説明してやるから話を聞いとくのじゃ)
「せっかく他の属性の人と過ごせる機会だ。早速友達でも作ってみたらどうだ? お互い、いい刺激になるだろ」
そう、この学院は属性混合クラス。故に、『イグニス』、『アクア』、『ウェントゥス』、『トニトルス』の4つの属性が入り乱れるクラスだ。
「それでは、自宅組は解散だ! また明日な!」
その言葉と共に、大半の生徒が動き出す。
「それでは、カズトシさん……また明日です」
少し寂しそうな顔を見せるナタリア。実は、一俊が寮に住むにあたってナタリアと一悶着あったのだが、なんとか一俊は説得に成功した。
「あぁ、また明日な」
一俊は手を挙げて答える。名残惜しそうにナタリアは門へと向かっていった。
(また明日会えるのにな)
(……もうワシは何も言わんぞ)
「それでは寮暮らしの生徒はここにあるくじを引け! 同じ数字が書かれた者同士が相部屋だ」
(……相部屋だったのか……アイツとだけは一緒じゃないように……)
(馬鹿者め……それは所謂“ふらぐ”というやつじゃ)
一俊が引いた数字は13。
「13の人は誰だー? 女の子だったらいいなぁ!」
「女子と男子は別々に決まってんだろうが!」
ルックとダミア先生の会話が聞こえた一俊は、頭をおさえた。
「いやー、お前もこの学院に通うとはなぁ。久しぶりだなカズトシ!」
「……あぁ」
相部屋となった一俊とルックは、指示された寮への道を歩いていた。一方的に話しかけるルックに対し、気のない返事をする一俊。そうして辿りついた『レトアルス寮』。扉を開けて、2人は中に入る。
とても大きな寮で、内装もそこそこに豪華だ。さすが名門校の寮といったところか。
テーブルやソファーがたくさん置かれた一階を見回している2人。そんな2人に声がかかる。
「……こちらへいらしてください」
そちらへ目を向けると、カウンターに1人の女性が。すぐさまルックは近づいていく。
「こちらが部屋の鍵となります。御用がおありでしたら、私に声をおかけください。カルラ・コルテスと申します」
それだけ言ってルックに鍵を渡し、言葉を止めるカルラ。紫の髪で無表情なカルラだが、綺麗な顔立ちをしていて美しい。ルックが声をかけているが、カルラは何も反応しない。
早く部屋に行きたかった一俊は、頑張って声をかけているルックをひきずっていく。
部屋は二階の213号室。ルックが鍵を回して、ノブを引くが、扉は動かない。ルックが力をいれて引いても扉は開かない。
「どうなってんだぁ? 開かない……」
そう呟いて突如ニヤリと笑い出す。
「……何で笑うんだ?」
「いやー、早速カルラさんに用事ができたなと思ってな。ちょっくら下行ってくるぜ!」
鍵を床に放って、鼻歌を歌いながら一階に下りていくルック。
(やっぱり馬鹿だな……しかし、何で開かないんだ? 番号は合ってるのに……)
一俊が頭を捻っていると、今まで黙っていたアンがしゃべりだした。
(……元々鍵が開いていたんじゃないかの?)
(…………)
一俊は、床に置かれた鍵を拾って鍵穴に差し込み、回す。若干の間を開けて扉を引くと……いとも簡単に開いた。互いに無言になる一俊とアン。するとそこに、カルラを連れたルックがやってきた。
「この部屋なんですけどね、カルラさん。扉が開かな……開いてるじゃねぇか!?」
「……では、私は仕事に戻ります」
そう言って引き返していくカルラ。しばらく硬直していたルックだったが、慌ててカルラを追いかける。
「そんなぁ……せっかく来たんだからちょっと部屋に上がって……」
「結構です」
「そこをなんとか!」
しばらくそれを見送っていた一俊は深い溜め息をつく。
(……一緒のクラスだけじゃなく、相部屋にもなるとは……)
これからの学院生活に不安を隠せない一俊であった。
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学院のとある一室。
(あの男の子が、リュークの言っていたカズトシ君……彼ならもしかしたら……)