17話 パートナー
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「よ~し! やっと戦闘訓練ができるのじゃ! さっさとリュークの所に行って、いい物とやらを受け取ってくるぞ!」
張り切るアンに急かされ、一俊は書斎のドアをノックする。
「一俊です。よろしいですか?」
「おお、来たか。少し待っていてくれ」
一俊が扉の外でしばらく待っていると、リュークが出てきた。
「待たせたね。用件は例の「いい物」の事でいいのかい?」
「そうです。お願いします」
「では、ついてきてくれ」
リュークについていくと、二階の一俊がまだ入ったことのない部屋に案内された。その部屋は何の変哲もない部屋の一室。一俊が部屋を見回していると、リュークが本棚をいじりはじめる。
「えーっと、ここがこうで……これがここで……よし!」
リュークがそう言うも、部屋に何も異変はない。不思議に思った一俊がリュークの顔を見るも、リュークはただ笑顔で一俊を見ているだけだ。
一俊がリュークに声をかけようとした時、『ゴゴゴッ!』という地鳴りのような音と共に一俊の目の前の本棚が動き出した。それにビックリした一俊は、視線をあちこちに動かす。どうやら本棚だけではなく部屋自体が回っているようだ。
やがて音が鳴りやむと、先程までは確かに部屋に無かった階段が現れた。
「…………」
「ハハッ、驚いただろう?」
驚いて声が出ない一俊にリュークは笑いかける。
「これはロムルキトの発明品でね。仕掛けに正解しても数秒間は動かないから、適当にやっても作動することはないんだよ。侵入者の事も考えた優れものさ。私もこれを最初見た時は大層驚いたものだよ。フフッ、では行こうか」
そう言ってリュークは階段を上っていく。
数秒後、ようやく我に返った一俊は、慌ててリュークの後を追う。
(風呂の装置といい、この仕掛けといい、本当にすごいな……
……それにしても、あの広間に3階への階段が無かったのはこうゆうことか)
3階にはいくつか部屋があり、その内の1つに案内される。その部屋には武器や防具が床に、壁に、ズラリと並べられていた。街のメディアムの店で見た光景とはいえ、一俊はこの世界に来る前はただの一般人。どうしてもその光景に気後れしてしまう。
そうこうしているうちに、リュークが部屋の奥から包みを持ってきた。
(何をくれるか楽しみじゃの!)
アンの目は爛々と輝いている。そして、リュークが一俊の前に立つ。
「オホン。では、カズトシ君。君にこれを託そう」
厳かな雰囲気の中、リュークに差し出された包みの中には、一振りの剣。微弱な光を放つ紅色の剣。
(おぉ! これは!)
アンはどうやら喜んでいるようだ。
確かに綺麗ではあるが、どう見てもただの剣にしか見えない。内心、失礼な事を考えている一俊にリュークは説明する。
「これは、火賀の家に代々伝わる宝剣。名を『フラマ』という」
「代々伝わる宝剣ですか!? いや、そんな貴重な物、受け取れないですよ!」
「いや、君にこそ受け取ってほしい。
この剣は他のメディアムと違い、自らのクレアチオを使う事なく、ただ念じるだけで「イグニス」の刃を構成することができる。
「テムプス」であるがゆえにメディアムが使用できない君の力となってくれるはずだ。必ず助けになるだろう。だからこそ、この『フラマ』を君に託したいと思う」
しかし一俊は躊躇する。それはそうだ。家宝ともいえるそれを、おいそれと受け取る事などできない。
(素直に受け取っておけ、ユー!)
すぐ隣ではしゃいでいたはずのアン。いつものふざけた様子ではなく、真剣な表情で一俊に告げる。
リュークも真剣な表情で『フラマ』を差し出す。
「……それでは」
2人の意志に根負けしたのか、一俊は少しずつ『フラマ』に手を伸ばす。
その手が『フラマ』の柄を握った瞬間、鋭い光が放たれた。眩しい赤い光があたりを満たし、一俊は思わず目を瞑る。
やがてその光は薄れていき、完全に光が収まった時、その紅色の刀身は、いつの間にか現れた鞘におさめられていた。
それを見たリュークは、うん、と満足気に頷く。
「では、戻ろうか」
「いやぁ~まさか、あれほどの物を貰えるとは思っていなかったのぉ」
部屋に戻った一俊とアン。未だにアンは喜んでいる。
「この剣ってそんなに凄いものなのか?」
「それはそうじゃ! いずれ分かるからそれまで待っておれ!」
一俊は『フラマ』を眺める。手にはフィットするが、重い。
「当たり前じゃ! 鍛錬もしとらんユーが最初っからまともに剣を振れる訳なかろうが!」
「……まぁそれは、そうだが」
「これでメディアムを使った接近戦もできるというものじゃ! 考えていたメニューよりも厳しくせねばの!」
「……マジでか」