13話 ナタリアとの街 その4
「な、なんだ!?」
突然現れた炎の壁に驚き、慌てる男達。
「そこまでです。それ以上やると言うなら、火賀が相手になります!」
そんな男達に対して宣言するレミ。
「火賀!? 本物か!? ……そ、そんなの敵うわけねぇ!」
レミの力に怯えて男達は一目散に逃げ出した。
「大丈夫ですか、カズトシさん!?」
「……あぁ、ありがとう。ナタリア、火賀さん」
「……レミで結構です。火賀では誰か分かりいにくいので。……そのかわり、こちらもカズトシさんと呼ばせていただきます」
「ねぇねぇレミ! この人は?」
一俊とレミの会話に割り込んでくるエレナ。そんなエレナの存在に気づいていなかった一俊は、思わずエレナを凝視してしまう。
(……水色の髪だし、可愛いし……さすが異世界だな……レミさんもナタリアもすごく可愛いし……)
そんな彼の顔をナタリアは不満気に見ていたことに、一俊は気づかない。
「この方は、数日前から家に泊まっている……カズトシさん。 カズトシさん、こちらは私の友人の水池エレナです」
「水池エレナです! よろしくねぇ~」
「よ、よろしくお願いします」
握手を交わす一俊とエレナ。
「では、こんな所さっさと出ましょうか」
そうして4人は裏通りを出るのだった。
「では、これからどうしますか? 4人でお茶でもします?」
レミからの提案に賛成する一俊とエレナだったが、
「私はまだカズトシさんと行きたい場所があるので!」
ナタリアが猛反対したので、別々に行動することとなった。
「では、カズトシさん……妹をお願いしますね?」
「またね~」
「は、はい!」
レミの威圧感で声が上ずってしまう一俊。レミは、そんな一俊を一瞥するとエレナと共に行ってしまった。
(こ、怖かった……)
(どうやらレミはユーの事を怪しんでおるようじゃの。 まぁ、それも仕方ないのじゃが)
(でも、名前で呼んでくれたぞ?)
(それはユーの名字の問題なのじゃ。説明した通り時沢というのは特別な名字。人前で呼ぶことをはばかったのじゃな)
(…なんで怪しまれてるのに家に泊めてくれる? それに、ナタリアやファビスは普通に接してくれてるぞ?)
(リュークがどうにかしてくれたんじゃろ。ナタリアやファビスはまだ学校に通っておらんので知らんのじゃろうな)
(知らないって何を?)
(それは明日行く予定の場所で分かる)
「行きましょう! カズトシさん!」
ナタリアに腕を組まれて一俊が連れて行かれたのはおしゃれなカフェ。2人共、ケーキと紅茶のセット500イェーンを頼んだ。ナタリアはイチゴのショートケーキ、一俊はチョコレートケーキだ。
「レアラルスの街はどうでしたか、カズトシさん?」
「まぁ、危険な所もあるけど、いい場所だね」
「……さっきはすみません……」
一俊の言葉に、しょんぼりと落ち込んでしまうナタリア。
(何をやっとるんじゃ!?)
(つ、つい…)
(いいから早くフォローするのじゃ!)
「だ、大丈夫だよ! こうして無事だったんだし!」
「でも……」
なおも落ち込んでいるナタリア。そんなナタリアの姿が香奈海と重なってしまい、一俊は思わずナタリアの頭を撫でてしまう。
「大丈夫だから、元気出してナタリア」
「カズトシさん……」
頭を撫でられて、顔を赤くしてしまうナタリア。それを見た一俊は、自分が頭を撫でていた事に気が付き、
「ご、ごめん……」
慌てて撫でるのを止めた。
「あ……」
残念そうな顔をするナタリアだったが、一俊はそれに気がつかず、そのまま気まずい空気になってしまった。
ケーキを食べ終えて店を出た2人は、屋敷への道を歩いていた。街を出てから終始無言ではあったが、雰囲気は悪くない一俊とナタリア。そんな2人を前に、結構お似合いじゃないかと満足に思うアンであったが、
「あれ? そういえばカズトシさんは結局服は買わなかったんですか?」
「(……あ!)」
ナタリアのこの一言で一俊に責められたのであった。
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2人が屋敷に戻った後のナタリアの部屋。
(カズトシさん優しいし、格好よかったなぁ。抱き着いた背中も大きくて、温かかったし、頭撫でられた時も気持ちよかったなぁ~///)
一俊の事を思い浮かべながらベッドを転がるナタリアがいた。
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一方、部屋に戻った一俊は、アンと話し合っていた。
「さっきも思ったんだけど、レミさんやナタリア、ファビスにはちゃんと詳しい説明した方がいいんじゃないか? ……不審者扱いは嫌だぞ」
「それは、時期を見て話すことにしよう。不審者か……しかし、変なやつに会ったもんじゃの……ルックとかいったか? あやつ学校に行くとも言っておったな……」
「……それは俺も疑問に思ってたんだ。一緒の学校になるのか?」
「おそらくは一緒じゃな」
溜め息をついて、学校で会わないことを願う一俊だったが、『学校』と『変なヤツ』という言葉に友達? であった秦一を思い出す。
「あれでロリコンだったら、秦一と同レベルの変人だったな……アンといい、秦一といい、ルックといい……俺は変なやつと縁があるのか?」
「……後半のセリフは流してやる。じゃが、ロリコンとはなんじゃ?」
「一言で言うと年下好きだな」
「……まさか、ユーもロリコンなのか? ナタリアの事もあるし……ワシの事も狙って……」
「ねぇよ! それに、ナタリアとは2歳しか変わらねぇし何もねぇし! やっぱり変なヤツじゃねぇか!」
「ま、まぁそうカッカするな。……そ、そうじゃ! 明日の事をちょっと教えておいてやろう!」
あからさまに話題を変えたアンに、逃げたなと思う一俊であったが、興味があるので聞くことにする。
「明日は、前に言った魔王の手掛かりのある可能性の場所に行くのじゃ。そこでこの世界の歴史など、色々知ってもらう」
「で、そこは何処なんだ?」
「聞きたいか? ならば教えてやろう! その場所とは…『時の霊廟』じゃ!」
イェーンというのはお金の単位です。