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魔王の嫁を取り返せ!  作者: 鷲野高山
一章・異能の星・レトアルス
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幕間 その1

「かず兄……」


 家のリビングの椅子に座りながら、香奈海は元気なく兄の名を呼んだ。

 明日こそ、明日こそと思っていたが、結局一俊が帰ってくることはなく5日が過ぎた。

 香奈海も深幸も最初は、連絡も無しに友達の家に泊まっているのかと思っていた。だが、いつまで経っても一俊は帰ってこない……連絡もとれない。


「……ただいま」

「どうだった!? お姉ちゃん!」

「ダメ……誰もかー君見てないって……警察の人も分からないって……」

「そんな……」


 ……何で帰ってこないの? 何で連絡くれないの? 香奈海がそう悩んでいた時、


『ガチャッ!』


 ドアを開ける音がした。


 もしかしてかず兄!? 深幸と共に慌てて玄関まで行く香奈海。

 しかし、そこにいたのは一俊ではなく、ずっと家を空けていた父親(海登)だった。


「ただいまー。……どうした? 2人してそんな慌てて?」

「……お父さん……かず兄が……かず兄がぁ……」

「……一俊がどうかしたのか?」

「かー君が帰ってこないの……もう5日も……」

「一俊が?…………まさか」

「「……お父さん?」」

「……すまん。用事を思い出した。お前たちは家にいなさい」


 そう言って海登は急いで家を出て行った。


「……お父さんどうしたんだろう? もしかして何か……どうしたの、お姉ちゃん?」

「何か落ちてる……お父さんの?」

「……なんだろうこれ?」

「分からない……けど、追いかけなきゃ」

「待って、お姉ちゃん!」 


 香奈海はそのよく分からないものを走りながらポケットにしまい、深幸と共に海登の後を追う。


『チャリン!』


 何か落とした気がするけど、振り返っている余裕は無い。少し遠いけど、曲がろうとしている海登が見えた。


 あれ? あそこは窪んでいるだけだったような……父親が曲がったのを見て、そう疑問に思っていた次の瞬間――――まるで最初からそこに存在していなかったかのように海登の姿がかき消えた。


「「えっ!?」」


 急いで海登が消えたところに近づき見てみると、一部の塀が淡く光を放っているのが分かった。どうなっているんだろうと思い、香奈海が手を伸ばすと――手が塀を通り抜ける。

 思わず深幸と顔を見合わせる香奈海。


「……お姉ちゃん」

「……行ってみよう、かなちゃん。なんだか分からないけれど、この先にお父さんは行ったはず。……かー君もいるかもしれない」

「……うん」


 そうして2人は光る塀を通り抜けた。






     ~~~~~~~~~~






 今日も一俊は学校を休んだ。最初は風でもひいたのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。


「先生、一俊のやつどうしたんですか?」

「……西浦君……それがちょっと分からないの。そうだ、西浦君は時沢君と仲がよかったわね。様子を見てきてくれないかしら?」

「…それはいいんですけど、俺は一俊の家知りませんよ?」

「どうして? あんなに仲がいいのに」

「……それは……とある事情がありまして」

「……よく分からないけど……これが時沢君の家への行き方ね。よろしく」

「マジっすか!? 分かりましたァ!」


(やったぜ! これで堂々と一俊の家に行ける!)


 喜び勇んで秦一は学校を飛び出した。


(時沢……時沢……よし、ここだな)


 少し迷ったが、ここだろう。いざ、インターホンを鳴らそうと手を伸ばすが、勢いよくドアが開いて誰かが走って出てきたので、秦一はその手を止める。


(あれは確か……一俊の親父の海登(かいと)さんだったか?)


 秦一には気がつかないで走っていく海登さんを見ていたら、再び勢いよくドアが開き、誰かが飛び出してきた。


(おぉ! あれは妹さんとお姉さんじゃないか!)


 しかし2人も秦一に気がつかないで走っていく。それをぼーっと見ていたら、走っていく香奈海のポケットから何か落ちた。

 鍵だ。しかし、2人はそのまま走っていく。


(来た! これで鍵を閉めて2人に渡せば、お近づきになれる!)


 そう思った秦一は急いでドアの鍵を閉めて2人を追いかける。

 2人は何やら止まって塀をずっと見てる。そして塀に……飛び込んだァ!?

 秦一が2人が飛び込んだ塀に駆け寄ると、若干光っているのが分かった。何がなんだかよく分からないけど、レッツゴー! と塀に飛び込む秦一だったが、


「グェッ!」


 思い切り塀にぶつかっただけだった。反動で道の真ん中まで飛ばされた秦一は、立ち上がって塀を睨む。


「…………(この塀だったよな?)」


 そんな事を考えていた時だった。


「プーーーー!」


 塀から視線を外して周りを見る。走ってくる車、道の真ん中に突っ立ってる秦一。彼は焦って避けようとするが、足がもつれて前のめりに倒れる。その先には、先程の塀が。

 衝撃に耐えようと、目をつぶったが、いつまでたっても秦一に衝撃は来なかった。






     ~~~~~~~~~~






 とある屋敷の一室。そこで話し込む青年と男。


「失敗しただと!?」


 男は驚愕した。

 暗殺はさほど難しくなかったはず。屋敷に護衛達と娘しかいない時を見計らい、実力のある者に依頼。正確な情報も伝えた。


「何故だ!? 何故失敗したのだ!?」

「俺だって成功したと思った……あの男が出てくるまでは」

「……あの男? あの男とは誰だ?」

「分からねえ。突然光と共に男が現れて俺の攻撃が打ち消された。その後、気配を殺していた俺に気づきやがった。多分相当の実力者だぜアイツ」

「……分かった。もういい」


(クソッ! 襲撃が失敗したとなると、これから見張りが厳しくなるのは必定……暗殺は無理か……

そうだ、あの娘はたしか今度学園に入学するはず……暗殺は無理だとしても……)


 ニヤリ、とした笑みを浮かべた男は、次の手を打つべく動き出した。 

順番に、一俊の家族、西浦秦一、ナタリアを襲撃した人物です。

これからも幕間はちょくちょく入れていきます。

今後もこの小説をよろしくお願いします!

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