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神様からの贈り物

神様からの贈り物~僕の物語~

作者: 雷稀

神様からの贈り物を「きみ」目線、「僕の物語」という形でお送りします。

読んで居ない方は、「神様からの贈り物」から読んでいただけると嬉しいです。


この小説では「前作:きみ」→今作:僕、「前作:私」→今作:きみ

なので、ちょっとややこしいかもしれません。

いつも傍に居たきみは、穢れを知らなかった。

綺麗なままで育ったきみは、僕の汚れた心なんて知らなかったんだ。



きみと出会ったのは小学校のときだった。

目が見えない事が原因で、いじめられていたのを覚えている。

僕はきみの事が好きだった。いじめられても耐え、強く生きていたきみが。

きみは僕にとって光そのものだった。


両親からの虐待を知った時は、どれだけ悲しんだことだろう。

幼かった僕に救えるはずも無かった。だから、出来るだけ一緒に遊ぶようにした。

遊ぶ相手の居なかったきみは、いつも嬉しそうに遊んだ。

きみは、どんどん明るい子になっていった。



いつだっただろう。

きみが階段を踏み外して、生死の境をさまよったとき。

あの時僕は、自分の心臓も止まるんじゃ無いかと思った。

毎日見舞いに行き、学校の話を聞かせていた。意識が無いから聞いているはずは無いが、ぼくは話すだけで良かった。そうしなきゃいけない気がしていた。

やがて一週間が経ち、僕がクラスメイトのくだらない話をしていたとき。

突然きみが笑い出して、ひどく驚いた。でも、とてもとても嬉しくて、泣きながら喜んだ記憶がある。


きっと、きみの世界には僕しか居ないのだろう。

僕が出来ることなら、なんでもしてあげたい。

僕にとってもたった一人の友達のきみは、僕にとっても大切な存在だったんだ。



高校に入学すると、僕には自然と友達が出来た。

元々暗い方ではなかった僕は、新しい友人たちにもすぐ馴染めた。

でも、きみがいた。

きみはもういじめられっ子ではなく、明るく育った普通の女の子だった。

いつも僕に付いて来るきみ。友人も最初は「彼女だろー」などと言ってからかうだけだったが、次第に「付き合いが悪い」などと、僕を疎遠に扱うようになった。

いじめられこそしないものの、どこかよそよそしい。

僕はきみのせいだと思った。



きみを殺したい。

僕から全てを奪っていったきみを。

きみがいなければ全てうまくいっていたのに。邪魔するんだ、いつもきみは。

邪魔、邪魔邪魔邪魔。

ああもう、きみなんか生まれてこなければ良かったんだ。

何で僕はきみなんかに関わったんだろう。きみのせいで僕の人生はめちゃくちゃだ。


僕の黒い心を知らず、きみは真っ白な笑顔を見せる。

整った、美しい顔立ち。それはまるで、きみの心を映して居るようだ。

ならば僕は今、どんな顔をしているのだろう。


今日もきみは、僕の隣で楽しそうに笑っている。

明日もきみは、僕の隣で笑っているのだろう。

桜並木の香りを楽しみながら。

海の香りを楽しみながら。



僕たちは18歳になった。

大学もきみと一緒。もう、離れられない悪夢のように僕に付きまとう。


「屋上に行かない?」

卒業式が終わり、きみを屋上へ誘う。無垢な笑顔で、きみは僕についてきた。

僕のポケットに入っている、きみの命を奪う道具がある事も知らずに。

いつも通り、無意識に腕を支えた。当たり前のようにきみが手を添える。

これで最期なんだ。この手できみを殺すんだ。

そう思うと、笑みが止まらなかった。僕は解放されるんだ。


いつも通り、明るく接する。桜の話を持ち出すと、君は嬉しそうに答えた。

他愛ない話。いつも通り、だけどもうこれで終わり。


音もなく、きみの腹にナイフが刺さった。どろどろと、真っ赤な血が流れる。

ゆっくりと目をあけたきみは、驚愕の表情を見せた。

僕が見えているのだろうか。醜くなった僕を。きっと今、笑っているだろう僕を。

きみは辺りを見回し、満足そうにまた僕を見た。穢れを知らない、純粋な瞳で。

ああ、目が見えているのか。

なんとなく、僕はそう思った。だから、言った。優しく微笑んで。


「ごめんね。もう、疲れたんだ。邪魔なんだよ。いつもいつも僕に付きまとってさ」


きみはひどく悲しそうな目をした。でも、全てを悟ったように、笑った。

死ぬ直前で、絶望を味わったんだ。


僕は高らかに笑った。

きみを殺せた事に。

己の醜さに。

今更気付いた、自分の気持ちに。


涙は止め処なく流れていった。



死体のきみは、この世界の何よりも美しい。そして、何よりも愛おしかった。

既に冷たくなってきたきみの頬を、そっと撫でる。

きみの血と僕の涙が混ざっていく。

もう、どれくらいこうしていたことか。

未来に希望はない。人を殺めたなら、更に酷い人生になるだろう。


きみの緩く握られた手のひらに、桜の花びらが乗っていた。

まだ咲いているはずのない桜。いったい、何処から来たのだろう。


帰り道、土手の桜並木に、一本だけ満開に桜が咲いている。

早咲きの桜は、まるできみへの鎮魂歌を歌うように、さわさわと揺れていた。


読んでくださり、ありがとうございます。


急ピッチで仕上げたもので、見苦しい点多々あるかと思います。

時間があるときにまた編集して行きますので、大体の「僕」の心情が分かっていただければ嬉しいです。



さて、「僕」は結局、「きみ」の事が好きだったのかもしれません。

殺してしまってから気付いたその気持ちを、どう受け止めていくかは「僕」次第ですよね。

罪を背負って生きていくのでしょうか。自分も、自殺という道を選んでしまうのでしょうか。

そこは、読者の皆様の想像にお任せいたします。

自分なりのストーリーを描いていただければ幸いです。


番外編と言う形で、幸せな結末を書いたりしてみても面白いかな…と思ったりしてます。


さて、二作両方のこだわりとして、一人称は漢字、「きみ」は平仮名なんですよね。

平仮名にする事によって、色々な意味をもたせたくてこうしました。

変なこだわりですよね(笑)


それでは、長々と失礼しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 僕の心理描写が丁寧に書かれており、感情移入をしやすいです。 一言では言い表せない「僕」の感情を、上手く書き表している点が秀逸だと思います。 悲しい結末ですがけして読み手を暗い気持ちにさせず…
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