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救国の聖女様~あなたたちの願いを叶えましょう~

掲載日:2026/06/28

 ◇ ◇ ◇ ◇


 なにかが聞こえるわ…


「救い給え、救い給え…」

「我が国を、救い給え…」

「どうぞ我が国に救いを…」

「救い給え…」

「救い給え…」

「救い給え…」

「救い給え…」

「救い給え…」

「……」

「…」

「」


 ◇ ◇ ◇ ◇


「おおー、成功した」

「聖女様だ」

「救国の聖女様だ」

「聖女様、どうぞ私たちの国をお救いください」


 私はきょろきょろと周りを見回した。


「えっと、どゆこと?」


 周りにはたくさんの人がいて、その人たちは好き勝手に救いを求める言葉を投げかけてくる。

 はっきり言ってうっさい。


 場所はよくわからないけどすごく細かい彫刻などが施された石造りの部屋。

 うーん、大聖堂という感じかな。

 地面に円形の台座があって、これもいろいろな模様で着色されていてすごく豪華。


 そしてその周辺を囲む人たち。

 なんかみんなすごい豪華な格好で、ちょっと芝居がかって古めかしくて…


 これが異世界召喚か…となんとなくわかった。

 じゃなかったらすごく大掛かりなドッキリね。


 いえいえ、そんなことはないわね。

 だって私の胸の中に確かにそれはあるから。


「戸惑っておられるのだな…無理もない。

 朕はこの国の王、キング・ミレニアム13世だ。

 聖女よ、よくぞわれらの召喚にこたえてくれた。

 我が国は現在、魔獣たちの脅威にさらされて滅亡の危機に瀕しているのだ。

 そなたの力で《《我が国》》を救ってほしい」


 はい、証拠でました。

 異世界召喚です。


 まあ、へつに地球に未練はないからいいんだけど。

 ていうかそういう人が選ばれたのよね。

 なんとなくわかっちゃう。


 私って天涯孤独の身だし、親しい友人も、恩を返したい人もいない…

 ああ、考えてみたらなんてしょうもない人生かしら。


 残念なのは頑張って勉強したことが無駄になることぐらいね。

 あっ、でも奨学金を返さなくてもいいのはラッキー。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 お城に移動することになった。

 さっきの場所はこの国の王都にある大神殿の大聖堂だそうな。


 そこでたくさんの人が集まって『どうぞ、我が国をお救いください』と、もう十日以上祈りをささげていたらしい。

 そんな余裕あるんなら自分で動けよ。と言いたい。

 それになんかみんな贅沢しまくりって感じで、危機に瀕している感じがないのよ。


 でも、私の胸の中にあるそれ。

 なぜかこの国を救わなくちゃいけないような気がしている。

 かなり強く、この国を救わなくちゃという思いがある。


 それを話したら王様は嬉しそうに頷いていたわ。


『おおそれこそ神が朕らを哀れみたもう証拠に相違ない』


 だって。


 そして移動の道すがら見た町の様子はひどい物だった。


 建物は立派。


 でも、そこにいる人たちの生気がない。

 街並みも薄汚れていて建物が立派なのに廃墟みたい。

 疲れ果てて、やつれていて、見ただけで胸が痛む。

 特にそんな子供たちの様子がとても胸に痛かった。


 これは頑張らねば。


 そう思ったんだけど、王宮でまずやったのは、パーティーだった。


 貴族と呼ばれる人たちが着飾って集まり、豪華で贅沢な食事をむさぼっている。

 あぶらぎってて野菜が少なくて、成人病まっしぐらな料理たち。

 そう言えば集まっている人たちの顔もあぶらぎっしゅ。


 聖女を歓迎するのに無理したのかな?

 そんで、食える時に食っておけ、みたいな?

 いやー、それにしても…


 貴族たちはみんなきらびやかで、私のところにやってきて『聖女様万歳』『この国をお願いします』とか言っていく。


 神官さんの話だと、私はすごい力が使えるらしい。


 神様はこの国を救うのに必要な力を与えてくれているらしいのだ。

 うん、それだね。

 私の胸にある物。

 その力だ。


 ただ、それが発現し、自由に使えるようになるまでには少し時間がかかるようだ。

 練習しないといけない。


 その間にこの世界の事を勉強しよう。

 国を救うって言ってもどうやればいいのか、それが分からないとね。


 ◇ ◇ ◇ ◇


「ありがとう。もういいわ」


『ハイ、ショウチシマシタ』


 うん、大体わかった。

 自分の力の使い方も、そしてこのくにの救い方も。


 私は隣の部屋に控えていた神官を呼んで宣言する。

 そろそろ動きましょう。


 神官の人が喜色満面で『おおっ』とか言っている。


 貴族たちが言うのには、この国は魔獣たちの脅威にさらされているらしい。


 町は城壁に囲まれ、襲い来る魔獣をなんとか迎撃している。おかげで城壁の中はとりあえず平和。

 ハンターとか呼ばれる人たちが頑張って戦っているらしいけど、劣勢みたい。


 その状況に耐えかねてこの国の偉い人たちは『救国の聖女』を神様に願ったようだ。


 神様がどういう基準で私を選んだのか知らないが、たぶん地球に全く未練のない人を選んだんだと思う。

 あと、適性とか?

 私の中には神様の愛しい人々を守りたいという願いと、愛する人々を傷つける存在達に対する怒りが息づいている。


 そして私は自分の力の使い方を理解した。

 私に与えられた力。

 うん、やることは決まった。


「まず、最初にこの国の貴族たちをみんな一か所に集めてください」


「承知しました聖女様」


 神官さんは喜び勇んで飛び出していく。

 殆ど〝バビュン〟と言うかんじね。

 ほんと元気だわ。


 残されたの顔色の悪い、若い神官さん。


 彼女は私を見て、おびえたように目を伏せたわ。

 勘のいい子だわ。

 でもそれを人に話すことはできないのよ。


 国中にお触れが回されて、貴族が王城に集められた。

 それを待って私は王城に出向いて貴族たちのまえにたった。


「おお、聖女よ、いよいよ我が国は救われるのだな」


 王様が玉座に座ったままそんなことを言う。

 すっごく偉そう。

 まあ、いいわ。


「すぐに始めましょう」


 私はそう宣言する。


「おお、頼むぞ」


「まずあなたはそこから降りて下に跪きなさい」


「ぼへ?」


 うん、わからんか。

 私は神様に与えられた力を使う。


『まず、すべての貴族はこの城から外に出てはいけない』


 ブワッて何かが広がってお城の隅々にまで広がっていく。


『この壇上は私の領域として何人(なんぴと)もこれを犯してはいけない』


 壇上というのは玉座が置かれた一段高くなった当たりね。

 結構広いのよ、無駄に。

 その檀がふわっと光って、王様がバチーンと弾き飛ばされた。


 ぷぎゅる!!


 宙を跳んで床にたたきつけられている。

 エビぞり着地、なんか面白い恰好ね。


 私は悠然と壇上に上がり、玉座に腰を掛けた。


 あっ、でもその前に。


『すべての穢れはこの椅子にあってはならない』


 椅子がパッと光って、うん、これで椅子はきれいになったね。

 これが私の力。


「これが神様にもらった私の力よ、禁止の力。

 私は色々なものを禁止できるの。

 そして禁止されると何物もそれを犯すことはできなくなるわ」


 貴族は戸惑っている人たちが半分、『おー、すごい』とか呑気に喜んでいるのが半分ね。


 でも使い方は考えないといけないのよ。

 全ての生き物は呼吸しちゃだめとか言ったら高等生物は全滅しちゃうから。


 さて。


『この部屋の中で嘘をつくことを禁止します』

『この部屋の中で回答を拒否することを禁止します』

『この城の中で私の呼び出しを拒否することを禁止します』


 私がそんな宣言をしたころ、貴族たちはやっとすこし事態を飲み込めたようでざわざわと騒ぎだした。


「どういうことじゃ聖女よ」


「とうって、この国を救うのよ?」


 喚く王様に私は小首をかしげて不思議そうな顔をしてやる。

 王様、頭の周りに〝?〟マークが飛んでいるよ?


「じゃあまず、王様は最後にして、この国の貴族で一番偉い人、前に出なさい」


「はへ? な、なんじゃ、何で足が勝手に…」


 だって私の呼び出しを拒否することは禁止されているから。


「名前を答えなさい」


「なんだと、ふざけるな。わしは この国の公爵、エライゾー・スゴイゾーであるぞ!」


 うわー、すごい名前。

 解答拒否も、嘘も禁止されているからマジだね。


「ではエライゾー、質問に答えなさい。あなたは罪を犯したことがありますか?」


「儂は罪を犯したことなぞない!」


 ありゃ?

 変だな…

 あっ、ひょっとして。


「あなたは他人に暴力をふるっていうことをきかせたことがありますか?」


「あるぞ、当たり前ではないか!」


 やっぱりだ。

 こいつ悪いことを悪いことだと思ってないじゃん。


「では、もっとも最近の事例を具体的に答えなさい」


「ふん、昨日の事だな、なかなか美しいメイドが入ったのだ、儂が情けを掛けてやろうというのにいやだというのでな、思い切り殴ってやった。

 そして力づくで言うことをきかせたのだ。

 気が付いたら動かなくなっていたが、まったく、下民というのは役に立たん」


 その話は聞くに堪えない話だったわね。

 とにかくこいつは性犯罪者。

 そして殺人者。


 しかも常習犯で確信犯。


『エライゾー・スゴイゾーは今後、異性に触れることを禁止する。

 生き物の命を奪うことを禁止する』


「なんだとふざけるな!

 お前にそんなことを命じられる筋合いはないぞ!」


 手を振り回して暴れたら、すぐ後ろに立っていた女の人に手が触れた。

 その瞬間にその手はものすごい勢いではじかれ、スゴイゾーはコマのようにぐるぐると回って倒れ、でも回転は収まらずにそのままぎゅるぎゅると壁まで転がって、ぶつかって止まった。

 手が変な風に曲がっているわね。

 水陸両用のフレキシブルアームみたいになってる。


 これ以上は無理ね。

 こいつはこれでいいでしょ。


『次に偉い貴族は前に出なさい』


「ひっ、ひっ、儂は、儂は何もしていないいんだな」


 太っちょの貴族がまるで足が勝手に動いて困るんです。みたいな所作で前に出てきた。


 そのころ王様もやって状況が飲み込めたみたい。


「貴様、救国の聖女ではないのか!」


「そうだよ、この力を使っていろいろな人に話を聞いたの。

 そしたらこの国の危機は腐った貴族と王族の所為という結論に達したわけ。

 じゃあ、それを倒さないと国って救えないじゃん?」


 おうさまアオスジスゴ。


「ええい、兵士ども、あやつは偽物だ。ひっとらえろ、いや、殺してしまえ」


 部屋の中にいた騎士たちが剣を抜いて駆け寄ってくる。

 そして玉座の乗っている檀の境目に到達した瞬間『ババーン』と弾かれて飛んで行った。


 中にはぎゅるぎゅる回転しているのもいるし。

 なんかカエルみたいなポーズで飛んで行って、お城の窓のところで別の力にはじかれて戻ってきてるのもいる。

 お城から出ちゃだめっていったもんね。


「いうこと聞かないと、呼吸するの禁止しちゃうよ?」


 静かになった。

 すごーい。


 さて、二人目だ。


「名乗りなさい」


「わわわっ、儂は、ブトルゾー・グルメー次席公爵なんだな」


 尋問の結果、こいつは見た目通り、民から搾取して肥え太ったブタだった。


『お前は今日から黒パン、野菜スープ、そしてトマト以外のものを食べることを禁止します』


「そっ、そっ、そんな!

 ひどいんだな、魔女なんだな」


「残念聖女でした」


 その証拠にトマトが付いてるよ。トマト食べれば何とかなるよ。

 聖女(わたし)やさしー♡


 そうして私は次々に貴族たちを《《粛清》》していく。

 この国の貴族は確認するとみんな犯罪者。民から搾取して贅沢をする。民を面白半分に虐待する。救いようがない。


 その罪に応じて化粧を禁止したり、着る服を制限したり、どんどん捌いていく(間違いじゃないよ)。


 もう面倒臭いから傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰とか一律禁止しちゃおうかな。

 貴族に限ればそれでいい気がする。

 怠惰も禁止すれば全員仕事の鬼だし。


 そしたら一人のまだ若い貴族が声を上げた。


「聖女様、なぜこんなことをなさるのですか、あなたは私たちを救うために神が遣わした方ではないのですか!」


「そうだよ?」


 その貴族ポカーンとした顔をした。


「それならなぜ魔物から私たちを守ってくれないのですか?

 貴族がいなくなっても魔物がいてはわたしたちは滅んでしまいます」


「それはもうやったよ。

 魔物は町を中心のその周辺への立ち入りは禁止したの。

 ハンターさんたちは魔物の入ってこれない場所から一方的に魔物を攻撃できるのよ。


 畑のスペースは取ったし、お肉は魔物がいっぱいだし。もう心配はいらないわ。


 あとは貴族を捌けばこの国は救われます。


 だって、あなたたちの願いは『自分たちを救って』じゃなくて『この国を救って』でしょ?

 だから心配ないわ」


「「「がーーーんっ」」」


 そして最後は王様。

 王族もひどかったけど、王様は罪のオンパレードね。

 徹底的に禁止しました。

 朝から晩まで休みなしで働いてください。

 私は慈悲深いから食事をするなとか、眠るなとか迄は言いません。


 これが正解なのよ。

 私の中にある多分神様の祈りが、この国の人々を救ってという願いが、ほわほわと喜んでいるのが分かるから。


 でも面白かったよ。

 貴族を捌くとあっちに触ってバチーン、こっちに触ってちゅどーん。ってすっごくにぎやかだった。


 それでもまともな人はいたので、彼らに体制の立て直しを頼んでひとまずは一件落着。


 その人たちが言いました。


「聖女様、強欲な貴族がいなくなれば、民は救われるのでしょうか?」


「あー、そのまま放置はないかな。

 でも大丈夫。私の得意分野だから」


 実は私、勉強だけは得意で、将来政治家になって良い国を作りたいと勉強しまくっていたんだよね。

 特に法律とか。

 これから、ほどほどに法律で細かく禁止事項を決めて。少しずつ運用していきましょう。


「そうすればこの国はよい国になるわ、少しずつね」


「おー、聖女様だ」

「救国の聖女様だ!」


 うむ、賞賛心地よし。


 ◇ ◇ ◇ ◇


 ずっと後。

 どこかの誰か。


 その後も聖女様の知識で少しずつ法律が見直され、みんなの努力でこの国は少しずつ良い国に代わっていきました。


 今までの分、こき使われることになった貴族や王族も『国』の中には含まれていたのです。

 神は、彼らにも慈悲をあたえたもうたのです。

 まあ、かなり厳しい慈悲でしたが…ちゅどーんとか…


 民は十分に食事をとれるようになり、暴力で搾取されることもなくなり、国はだんだん豊かになっていきました。

 それに合わせて魔獣も減り、それはさらなる豊かさをもたらしました。


 かくして『救国の聖女』はそのお役目を全うし、願われた通り国を救ったのでした。


 ある日聖女が空を見上げると、なんとなく人の形に見える巨大な、神々しい雲が、親指を立ててサムズアップしているように見えたとかなんとか。

 聖女様のお名前は伝わっていませんが、聖女様を知らない者はいません。


 今も聖女様のお力はこの国を守っているのです。


 めでたしめでたし。


えー、AIに関する規則が出てきまして、誤字のチェックでもAI使用になるようで、アイデアを貰うのと、ただ誤字脱字のチェックをするのが同じカテゴリーというのはよくわかりません。

なので今回はあえてコンピューターによる誤字チェックもしていません。

まあ、やってても結構誤字って出るんですけどね。

というわけで、誤字を発見した方は遠慮なく突っ込んでください。

しょーがねえなーとか笑いながら出構いませんので。

よろしくお願いします。

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