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【完結】嘘告白への逆襲〜惚れさせてから捨てて差し上げますわ!〜  作者: 木風


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2/2

後編

胸がどくん、と鳴った。


「貧乏だとか、リボンが古いとか、そんなこと、どうでもよかった。……言い方がわからなかった」

「……公爵令息が?」

「君は、正しいことしか許さない顔をするだろう。だから——」


雨音が、二人の間だけ遠くなる。


「からかう形でしか、近づけなかった」


私は唇を噛んだ。

そんなの、卑怯だ。

今までの憎たらしさが、別の形に見え始める。


「じゃあ、あの告白も?」

「嘘だと思われてもいいから、言った」


アシュトンは私の頬に触れそうで触れない距離で、言葉を落とす。


「君の隣にいる口実が欲しかった」


——ずるい。

そんなの、私が一番弱いところを狙ってる。

私は、最後の抵抗をした。


「……じゃあ、私が本気になったら、笑うのですか」

「笑わない」

「……本当に?」

「本当に」


その目が、逃げない。

そのせいで、逆に怖くなる。


「……証明して」

「何を」

「あなたが、私を遊びにしないって」


アシュトンは一瞬だけ息を詰めた。

それから、苦しそうに、でもまっすぐ言った。


「僕は、君が本気になってくれるのが怖かった」


その言葉で、私の中の『罰ゲーム』が、音を立てて崩れた。

雨が少しだけ弱まる。

濡れた睫毛の向こうで、アシュトンが私を見ている。


「ユリア」

「……何ですの」

「君のリボン、くたびれてるなんて、本当は思ってない」


彼の指が、結び目を軽く押さえる。


「君がそれを大事にしてるのが、……好きなんだ」


胸の奥が熱くなる。

涙が出そうになるのが悔しくて、私は意地悪に言った。


「……好きって言えば、許されると思って?」

「許されたい」

「簡単ですわね」

「簡単じゃない。ずっと言えなかった」


その声が、雨よりも柔らかかった。

私は、決定的に負けた。

負けたのに、嫌じゃなかった。


「……では、条件変更ですわ」

「条件?」

「捨てるのは延期します」

「延期?」


私が言うと、アシュトンの瞳が揺れた。

嬉しそうで、苦しそうで、どうしようもなく本気の顔。


「その代わり——」


私は、少し背伸びをして、彼の襟元を掴んだ。

濡れた布が指に貼りつく。心臓がうるさい。


「嘘だったら、あなたの方が後悔するようにして差し上げますわ」

「……嘘じゃない」


言い終わる前に、アシュトンが私の手を包み、引き寄せた。

そして、唇が重なる。


雨の冷たさとは逆の、熱。

触れた瞬間、彼の指が私の背を支える力が増す。

逃がさない、みたいに。


一度離れて、もう一度。

今度は少しだけ、確かめるように。

私は息が続かなくなって、彼の胸に額を押し当てた。


「……最低ですわ」

「知ってる」

「私の計画、全部台無しですわ」

「よかった」


その一言が、またずるい。


「……『よかった』って何ですの」

「君が僕を捨てないでくれそうだから」


私の頬が、雨とは別の熱を持つ。


「……捨てませんなんて言っていませんわよ」

「じゃあ、延期の間、僕は何をすればいい?」

「……私を安心させてくださいませ」

「一生かけて?」


冗談みたいに言うのに、目が冗談じゃない。

私は、もう一度だけ彼を見上げて——小さく頷いた。


「……そのくらいで、ようやく釣り合いますわ」


雨はまだ降っている。

でも、さっきまでの冷たさはどこかへ消えていた。


「公爵令息が?」

「君の前だと、どうしても余裕がなくなる」


その声が少しだけ震えていて、私はようやく確信した。

これ、罰ゲームじゃない。


「……仕返しは?」

「したいなら、していい」

「しますわ。覚悟なさいませ」

「喜んで」


私の逆襲は、失敗した。

でも——たぶん、これはこれで勝ちだ。

私はリボンに触れて、少しだけ顔を背けた。


「惚れさせてから捨てるつもりでしたのに」

「捨てないでくれ」

「……今のは、照れてました?」

「……黙れ」


やっと悔しがった。

それが、たまらなく可笑しかった。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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