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【完結】嘘告白への逆襲〜惚れさせてから捨てて差し上げますわ!〜  作者: 木風


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1/2

前編

「おい、ユリア。今日もその頭のリボン、少々くたびれて見えるぞ。貧乏伯爵家の娘らしい、慎ましさってやつか?」


放課後の廊下。

公爵令息アシュトン・グレイは、いつものように私の頭上へ『毒』を落とした。


「ご心配なく。くたびれているのはリボンではなく、アシュトン様のお口の方ですわ」


周囲が小さく笑う。

アシュトンは目を細めた。面白がっている顔。——私が一番嫌いな顔。

その日の放課後、裏庭に呼び出された時、私は『次の嫌がらせ』を覚悟していた。

薔薇のアーチの下。人影が薄い。


「ユリア。君が好きだ」


息が止まった。

あまりに真面目な声で、あまりに真っ直ぐな目で。

……でも、すぐに理性が私を引き戻す。


はいはい。罰ゲーム。

友人と賭けでもして、私が赤くなるのを笑う。そういう遊び。

受けても地獄、断っても地獄。

なら、私が先に笑ってやる。


「まあ。光栄ですわ」

「……信じてくれるのか?」

「ええ。もちろん」


社交界用の完璧な微笑みを作って、私は言った。


「ただし条件がございますの。惚れさせてから捨てて差し上げますわ」


アシュトンが一瞬だけ固まった。

普段の余裕が、ほんの少しひび割れる。——効いた。


「……いいだろう」

「決まりですわね。では、覚悟なさいませ」


そうして始まった『恋人ごっこ』は、私の想定よりずっと厄介だった。


彼は、私が無理難題を言っても嫌がらない。

高級店に連れて行けば、意地悪な値踏みではなく、真剣な目で似合うものを選ぶ。

学園で視線が刺されば、わざと隣を歩いて『怖くない』とでも言うように肩を寄せる。


……罰ゲームにしては丁寧すぎる。


そして、三日目。

空が割れたような雨が降った。

帰り道。傘を開く前に、馬車が水たまりへ突っ込み、泥水を跳ね上げた。


「危ない!」


強い腕が私を引き寄せ、視界が黒く塞がれる。

アシュトンの背中。礼装が泥で汚れる音がした。

雨の匂いと、濡れた布の温度と、近すぎる体温。

私の心臓が、怒りではない理由で騒ぎ始める。


「……離してくださいませ」

「無理だ。もう一台来るかもしれない」


声が低い。いつもの揶揄がない。

雨音の中で、その言葉だけがやけに真剣に響いた。

少し雨脚が落ち着き、アシュトンがゆっくりと私から身を離す。

私は彼の胸元を見た。泥。濡れ。最悪。


「……服が」

「どうでもいい」


即答だった。


「君が汚れなくてよかった」


言われた瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。

嫌がらせの台詞なら慣れている。

でもこれは、違う。

私はごまかすように、いつもの武器を振りかざした。


「罰ゲームの割に、徹底していますのね」

「罰ゲーム?」

「ええ。どうせ、私をからかうための——」


言い切れなかった。

アシュトンの目が、笑っていなかったから。

彼は黙って、私の頭のリボンに触れた。

指先が、濡れた結び目をほどいて、結び直す。


……なぜ、そんなことまで知っているの。

私の結び癖。ほどけやすい角度。いつも直されると腹が立つ、あの場所。


「……手慣れていますわね」

「君のリボンは、よく崩れる」


雨粒が頬を伝う。

私が震えたのは寒さのせいじゃない。


「……どうして、いつも私をからかっていたのですか」


自分でも驚くほど、素直な声が出た。

アシュトンは、ほんの一瞬だけ目を泳がせた。

それから、濡れた前髪を指で払って、小さく息を吐く。


「君が笑うから」

「理由になっていませんわ」

「……違う」


彼の声が、少しだけ掠れる。


「君が、僕の前で笑うのが、ずるいんだ」

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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