カラフルな箱の旅路
あるところに、カラフルな箱があった。
その箱は、味気ない色が嫌いだった。
箱はあじけない日常を送っており、丈夫な大人になるための特訓として毎日同じメニューをこなしていた。
だからせめて、視覚的な刺激が欲しかったのだ。
そのため、その箱は自分をたくさん彩った。
結果、他の箱はシンプルな色であるのに、その箱だけカラフルになった。
けれど、それでは満足しない。
もっとカラフルになりたい。
そう思ったカラフルな箱は、さらなるカラフルを追い求めた。
メタリックがいいかもしれない。
模様をつけたらもっといいかもしれない。
蛍光色もいいかもしれない。
色々な案を考えては、試行錯誤を繰り返していた。
目指すは世界で一番のカラフル。
夢は、誰も真似できないようなカラフルな箱になる事だった。
徐々に、丈夫な箱になる事よりも、カラフルな箱になりたいと、他の箱とは違う夢を持つようになった。
そのため、箱は故郷を出て、一人旅することにした。
しかし、カラフルを追い求める旅には、苦労があった。
「こちらの国には、まだカラフルは存在しません。国に住んでいる箱達があなたの姿を見てびっくりするので、時代がおいつくまで入国しないでください」
と、未来から来た箱に言われる事があったり、
「カラフルは浮ついている証拠だ。お前はもっとモノクロになるべきだ!」
と、白黒教団の信者である箱達から付け狙われたり、
「カラフルとはすばらしいのですか? 唯一でオリジナリティがあるという事は、どう素晴らしい事なのですか?」
と、何でも疑問に思う箱の言葉によって、哲学を考えたりもした。
それでもその箱はカラフルを追い求め続けた。
それは、カラフルが好きで、華やかになると自分も他人も心が明るくなって、自分が自分だと証明できるから。
だから箱は、自分だけのカラフルを見つけ、他の誰も真似できないカラフルを身に纏いながらも、今日も新しいカラフルを探すために、追及の旅を行う。
世の中の箱は、たくさん修行をこなし丈夫になって、宅配物を運ぶという使命を背負って生きるのが当たり前だったが、旅する箱は見向きもしなかった。
ただ、世界には様々な箱やルールや国があるので、いたずらな混乱を呼び起こさないように、自分のカラフルを隠すための布を持ち歩く事を忘れなかった。