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英雄とされた者たち  作者: メガネの欠片
第一章  ペルカ国の王女
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第三話   炎に呑まれしペルカ

門兵の叫びは、やがて城内を駆け巡り、国中へと伝わった。

そしてついには、王の耳にも届いた。

だが、その時にはすでに遅かった。

城壁は破られ、火の手は街を飲み込み始めていた。


ペルカ国は、一夜にして混乱の渦に呑まれた。

静けさは消え去り、逃げ惑う人々の悲鳴、赤子の泣き声、燃え崩れる家屋の音が、無秩序に響き渡った。


武装した襲撃者たちは、逃げる民を容赦なく斬り伏せた。

その姿は、怯えた獣を追い立てる狩人のようであった。


王宮のバルコニーから、王と王妃はその惨状をただ見下ろしていた。

沈黙の中、目を疑うように――そして、唖然としたまま。


そこへ、小さな足音が忍び寄る。

瞼をこすりながら歩いてくるのは、王女サクマだった。


彼女は眠たげな目で外を見やり、その光景に小さく悲鳴を漏らすと、王の足元にすがりついた。

王はその小さな身体を両腕で抱きしめ、王妃に視線を送る。


「逃げなさい」


その声は低く、震えながらも揺るぎないものだった。


王妃は唇を強く噛みしめる。

だがやがて、顔を静かにほころばせてこう言った。


「私はあなたと最期を共にします」


その声には、どこか諦めに近いものが滲んでいた。

だがその表情は、愛しい者を見つめる微笑に満ちていた。


サクマはその言葉の意味を理解できず、ただ父の胸にしがみついていた。

決して、離すまいと。


――その時だった。


背後で悲鳴が上がり、鈍く大きな音が響く。

振り返ると、そこには一人の男が立っていた。


男の目はまっすぐに、王と王妃を捉えていた。

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