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episode1


「もう!!お兄ちゃん、本当にうるさいッ!!

“王太子妃としての態度”?“もっと礼儀正しく”?

私は聖女なのよ!?」


また始まった。

俺の妹であるアリーことアリアナは、聖女になって王太子妃候補になったことで傲慢になっていた。

その飛び火が俺に来ることも少なくなく、普段貴族令嬢などに散々馬鹿にされているストレスを俺に向けて発散しているのだ。

俺が“もっと聖女らしく”、“もう少し淑やかに”と言うと「私は聖女よ」と聖女の権力に物を言わせて全く聞きやしない。


「だから、お父さんやお母さんに相談したの。

“お兄ちゃんなんていらないでしょ”って。

そうしたら2人ともいらないって言ってたわ!

 そう言うことだから、早く出ていってくれる?

 貴方なんていらないの。」


「………は?」


あまりに酷い暴論に、意識が飛びそうになった途端、頭にはあるはずのない、自分のではないはずの記憶がフラッシュバックした。


知らない。俺はこんな記憶、こんな奴知らない。

知らない、はず。

はずなのに、それは自分が体験した経験のように感じる。


本当に知らない?

これは、こいつは、




俺だ




そうだ、記憶の中にいるのは前世の俺で、この記憶は前世のものだ。

つまり俺は死んだのか?

いろんな衝撃でまた意識が飛びそうになる。

だが、ここで倒れても妹は助けてなどくれないだろう。

むしろ好都合だとそのまま外へ放り出すだろう。



「何を言っているんだ…、俺はお前の兄だぞ?」


何とか耐えながら妹に声をかける。


「ええ、今までは、ね!これからは邪魔な人もいなくなって、私の輝かしい未来が待ってるの!

だから、早く出ていってくれる?」


「はぁ…わかった、お前が俺のことをそんなふうに思っていたとは思ってなかったよ」


そう言って俺は妹に背を向け、回れ右してその部屋を後にした。













「はぁ、どうしようか」


あの後実家に行ってみたが、お前はもううちの子ではないと言われて追い返されてしまった。


「まさか一日にして、家族と家と仕事を失ってしまうとは……」


俺は両親が営んでいるレストランで仕事をしている。

家から追い出され、家族から見放されると言うのは俺の全てが失くなるというのと同義なのだ。

行く当てもなくふらふらと街を彷徨う(さまよう)


「いっそこのまま隣国にでも旅に行こうか……」


リークは元から多才で要領がいい妹のアリアナと違い、全ての物事において人並みがそれ以下だった。

それに加えアリアナには聖女の力があるなんて、神様は本当に意地悪だ。

まあだから、リークは幼少期からいろんなことを学んできた。

隣国の言語や文化も学んできたから、すぐに旅に出ようとしても行けるのだ。


「うん、もうそれしかないか。そうと決まれば今すぐにでも行こう。」



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