みんなの心の声
(あっ、奏ちゃんが帰ってきた…)
彼女がクラスのドアを開けた瞬間、ざわついていたクラスが水を打ったように静まり、みなドアの方を向き、彼女の方を見る。
(早退しないんだ…辛そうだけどよく帰ってくるな…)
(高校生にもなって…我慢できないなんて…ね…)
(授業前にトイレ行っておけばいいのにね…)
彼女は上こそは可愛らしいセーラー服とベージュのカーディガンを着ていたが、下は横にラインが入った緑色の体操ズボンを履いていた。その格好は明らかに誰が見ても不格好で、そして不自然であった。履いている体操ズボンの左上にはタグがついていて、黒いマーカーで「保健室」と書かれてある。彼女は体が大きいため、ズボンがあっていないのだろうか、お尻の輪郭がいつもよりもはっきり見えていた。
(恥ずかしそうな格好…一人だけ下だけ体操服って…)
(普段あれだけオシャレなのに…似合ってないね…)
彼女は顔を赤らめ、視線は下を向きながらトボトボと自分の席へ向かっていった。左手にはビニール袋を持っていたが、皆に見えないように後ろに隠していた。その目は真っ赤に腫れていた。
(あの袋に制服のスカートが入ってるんだ…)
(スカート黄色く染まってるのかな…クリーニングかな…)
(保健室で着替えたのかな…泣いたのかな…)
(あっ、今日の写真撮影、どうするのかな…)
(そう考えるとめっちゃ恥ずかしそう…)
今日は卒業アルバムの写真撮影の日だ。一生残るクラス写真を撮る。だからみな髪型はオシャレにし、普段は禁止されているメイクも先生もこの日だけは見過ごしてくれるため、派手ではないが少しやってきた。
(でも、奏ちゃんはこの恥ずかしい姿でクラス写真を撮るんだ…)
(みんな制服を着ているのに一人だけ緑色の体操ズボン…)
(あんな惨めな格好、凄い目立つよね…)
(将来忘れようと思っても忘れられない記憶になるのかな…)




