第十七話 泥棒④
「ね、眠くない!」
直人はすぐに正座した。しかし、1分も経たないうちに再びゆっくりと頭を下げ、額が机に触れると再び必死に背筋を伸ばした。その様子を見て、光野は笑った。寮の出入りに警備員が学生証を確認して性別を確認するのが必要だ。
「じゃ、ベッドに上がって寝てろ。」
「俺、俺は眠くない!」
「はいはい、眠くない。じゃあ、横になって休んだら?正彦たちが戻ってきたら送ってもらえる。」
直人は反対しなかった。光野は彼をベッドに引き上げた。
直人は光野のベッドに横たわった。ミントの中で甘い香りが漂っている。この香り、彼は知ってる。15年後光野の匂いと同じだ。ただし、15年後の光野はベッドに座って彼と一緒に寝る機会はなかった。
直人は枕をこするようにして頭を動かし、香りを嗅ぐことを贅沢に楽しんだ。静かすぎるせいかもしれない。直人は懐中電灯の光を頼りに、光野のぼんやりとした姿を見つめた。もうすぐ眠りに落ちる直人は脳も徐々にぼんやりとしてきた。
「光野、将来結婚したら、子供欲しいの?」
声は小さく、ぼんやりとしていた。光野は直人をちらりと見た。
「眠いなら寝ろ。」
直人は毛布をつかんで、緩め、何度も繰り返し、ついに勇気を出して言葉を続けた。
「光、光野は子供が嫌い?」
この言葉、彼はずっと言いたかった。自分が物事を理解し始めた時から、光野が自分に無関心であることに気づいた時から、ずっと尋ねたかった。
世の中には、子供が嫌いな人もいる。
直人は光野もそうかもしれないと疑っていた。そうでなければ、母親のように愛されない理由があるのだろうか?もしくは自分は実子じゃないとか?その疑問も考えたことがあるが、自分の母親の性格を考えると、実の子供でないと、彼は必ず育たない。
確かに、直人のおばさんはいつも、光野が彼を気にかけていることを説明していた。ただし、仕事が忙しいために感情を表現するのが苦手なだけで、誤解が生まれるのだと。しかし、子供にとってはこういった話は理解しがたいものだ。
それほど忙しいのか?
一晩でもいい、自分と一緒に寝る暇もないのか?
直人はまだ12歳で、この問題について少なくとも自分の半分人生の時間を使った。そして自分の推論が正しいと思っていた。
正彦の家族はAlphaであり、しかも唯一の男の子。子孫繁栄、家業の継承、それは人生の重要な出来事だ。光野は直人の妻として、家族にプレッシャーされ、嫌々ながらでも子供を産むことが普通だろう。
生むだけで、好きでもないし、面倒も見ない。
俺で、まじ可哀そう。
直人は鼻をすするような気持ちになり、毛布を目の下に持った。
光野は、この年齢の男の子なら、会話の内容はゲームや異性に興味を持つことが多いだと思っていた。しかし、直人が家族の倫理について直接質問してくるとは思っわなかった。彼の親が自分に無関心で愛が足りなかったと知っていたが、それでも心の準備はできていなかった。




