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モヒトは酒じゃないⅠ  作者: 清蘭
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第十六話 こっくりさん④

 正彦の部屋は散らかっていて、誰も座れない状態だった。直人たちは廊下に座るしかできない。光野の部屋の前には誰も座る勇気がなかったが、直人は平気で座っていた。半分の尻が光野部屋の地面に入っている状態だ。




 来る人はちょうど四人だ。正彦は次のラウンドで参加することを示し、堂々と光野の部屋に入り、椅子を持ってベッドの脇に座った。直人はわざと後ろを振り返って光野が寝ているベッドを見た。ベッドには確かに人影があり、毛布にまるまって身体全体が隠れているようで、本当に寝ているようだ。




 部屋には懐中電灯の光束しかなく、光野は身をよじって右手が正彦がベッドに置いた手に触れた。

指先と指先の接触、闇の中で触覚の感知が増幅された。光野は一瞬ためらった後、手を引っ込めようとしたが、その瞬間に手を正彦に捕まえられてしまった。




 直人は両親の後ろの小さな動きに全く気付いていなかった。彼は硬貨を取り出して紙の上に置いた。




「俺が最初に質問する!」




 光野は毛布の中でもがいたが、手を引っこ抜くことができなかった。彼の顔は赤く、目を閉じ、眉間がピクピクと動いていた。心の中で正彦を呪った。




「こっくりさんこっくりさん、この世で一番カッコイイ人は誰?」




 直人は虔誠な気持ちで手を合わせ、目を閉じて質問した。山崎は見ていられなかった。




「兄ちゃん、質問するときに少し気を使えよ。指で硬貨を触れよ。」




「そうだよ、最初の質問はこっくりさんが来たかどうかじゃないか。」




 稲葉も我慢できずにツッコミした。




「その質問をする必要がある?答えは絶対俺だろうが。」




 声が後ろから聞こえた。直人は振り返って見た。懐中電灯の光の中で、正彦の白いな歯が見えた。笑っているようだ。彼の足も得意で、震えを抑えないようだ。




「お前、何やってんの。思春期か。」




「そう?笑ってるか俺。」




 正彦は顔を触ってみた。答えもずれてるし。直人は正彦がおかしいと思った。




「やり直し!」




 正彦のもう一つの手が毛布の中で光野と力比べている。光野は何度も振り払おうとしたが、逆に騒ぎを大きくしてしまった。直人は好奇心を抱いて再び振り返った。




「またなんだよ。」




「何にも、猫に撫でてだけ。」




「えっ?猫を飼ってるの?寮でペットを飼える?」




 みんなが好奇を持って、猫を見たくなった。しかし正彦はいま光野の部屋にいたため、山崎たちは光野に近づくことを恐れていた。直人が立ち上がろうとするが、正彦が口を開いた。




「うちの猫は凶暴だ。俺が飼い主として手に4、5本の引っ掻き傷を作られたこともある。お前、最初に質問をするつもりだろ?」




 山崎はすぐ正彦が直人を近づけたくないと察した。




「そうだ、そうだ。お前が出て行ったら、俺が先に質問するぞ。」




「それはだめだ!」




 直人は再び座り、四人は硬貨に指を置いた。

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