第十六話 こっくりさん①
直人は物をなくしていない。その原因は噂されている寮はOmega棟ではないからだ。光野は寮に戻り、シャワーを浴びて出てくると、正彦が物を探しているようだ。元々乱雑な部屋は、服と漫画の山で埋め尽くされ、ますます混沌になった。
「何を探している。」
「物がなくなった。」
泥棒を見つけられないから、霊の騒ぎだって。
光野の頭にはTwitterのリプライが浮かんだ。背まで寒いと感じた。
「何をなくしたんだ?」
正彦は答えなかった。
失くしたのは、光野が書いたラブレターだ。それは漫画の間にしまい込んでいて、一度読んだ後は取り出すこともなかった。
誰があの手紙が突然消えると予想できるんだ!
これって言えるか?
言えない!
光野はそのラブレターに気づかない様子だ。まるで自分が書いたものではないようだ。
実際、光野はラブレターを書いたことはない。それは直人が書いたもので、口調や文字のフォントもまったく異なっていた。
「重要な物じゃな。」
重要じゃない?光野は乱雑な部屋を見つめた。うーん、確かに重要じゃない。
「何のもの?見たことあるかも?」
正彦は身を起こして光野を見つめ、その視線が光野を不快にさせた。少し迷って、正彦は口を開いた。
「ラブレターだ。」
「ラブレター?お前が書いた?」
「他人からもらった。」
光野は、その日正彦が病気で保健室に休み時のメッセージや電話を思い出した。彼の印象では、親しい関係以外でこんなに頻繁に連絡を取ることはしない。それなら、やはり……
「見たことあるか、黒くて金縁の。」
「ない。」
誰がラブレターを黒い紙に金縁で書くんだ。外国人でやりたい放題だな。光野の穏やかだった顔が再び冷たくなった。正彦まで空気のおかしさを感じていた。
「妬いた?」
「死ね。」
正彦は光野の返事を聞いて、相手が気にしていないと思って、探し続けた。光野が部屋に戻る前に一度振り返ったが、これほど大事なラブレターのか?外国の彼女が書いたもの?
見えなくなれば気にしないだろうと考えていた光野はドアを閉める準備時、電気が点滅して消えた。光野は後ずさりして壁に背中を預けた。
その公園、心霊現象がありそうだ。
光野は頭を振った。考えるな、そんなことを考えるなと自分に言った。
「なんだ、停電か!」
「夏だぞ!熱中症になれつもりか!」
「シャワー中だぞ!」




