第十五話 発見された②
正彦は病気中、力が弱く、仮標記の夜には及ばなかった。しかし腰に乗せた手には千金の重みがあったようで、正彦のフェロモンも体の中で祟っている。光野の腰から上が硬くなっていた。
立ち上がれなくなった……
光野の顔が熱い。保健室のドアを突然開ける人がいるのも怖い。
彼は何度も口を開けたが、声を出さなかった。5分後、こわばった背中がだるくなり始めた。この瞬間、彼は正彦を寮に連れ戻ないことを後悔した。
「痛いよ。」
「甘えるな。午後まだ試験ある。」
光野はようやく自分の声を取り戻した。正彦が答えなかったが、フェロモンが変わり始めた。
正彦のフェロモンは横暴だ。ラム酒は強い味がして、レモン匂いも酸っぱい。しかし今、ラム酒のアルコールは蒸発したように、まろやかさだけが残っていた。ほのかな甘みのレモンが、可憐に光野をグルグル回っている。
「行かないで……」
強硬さがなくなり、ふわふわしている。光野は鳥肌までも立った。
「分かった、行かないから、フェロモンやめろ。」
正彦の寝顔を見て、光野は考え込んだ。いつのまに正彦と仲良しなった?
「ブィブィ」
正彦がベッドサイドテーブルに置いた携帯が振動した。正彦も目を覚まさなかった。光野は覗き準備をしていなかったが、メールが次々と続き、携帯の振動が止まらなかった。
仕方ない。光野は携帯を手に取った。振動は木製のテーブルの上で音が大きく、正彦の睡眠に影響を与える恐れがある。しばらくすると携帯が静かになった。光野は再び携帯を元の場所に戻した。
結局、戻したところで、連続した振動が再び伝わってきた。
電話だ。
光野は再び携帯を握った。何秒後、携帯に出ていない電話が表示された。光野が携帯を元に戻そうとすると、再び振動してきた。
面倒くさい、誰だ!
さっきと同じ人。Eleanor?英文?で、海外の友人?
「sid?どうして返事をしないの。まだ怒ってるの?」
「ちょっ、何を!」
携帯の振動が激しく、正彦は起こされた。彼は急に腕を引き締め、苦しそうに光野の体に頭を埋めた。驚いた光野は近寄ってきた正彦を押しのけた。携帯を握った手が受信ボタンを押した。
「……」
「抱っこだけじゃん、肉を減せないから!」
「自分で寝れ!手を放せ!って」
「動かないで。体が涼しいから、俺は暑い。病人だから~」
「甘えるな!」
正彦の声は砂糖を食べすぎたようにかすれて、べとべとしている。
向こうから電話がかかってきた。光野も自分が電話を受けたことに気づかなかった。




