第十四話 胃が痛い⑤
正彦はよく見た。傷は手のひらにあり、擦り傷で、指には影響しなかった。彼は直人の襟をほどいた。
「試験頑張れよ。」
「頑張れ?あんたのほうだろう。」
正彦は答えなかった。直人は思い出した。オヤジが中間試験のTOP50に入ってようだ。古典と日本史は0点けど。チックショー、今回超えるからな!
学校は不正行為の可能性を減らすため、高校3年生を除く高校1、2年生に試験席の抽選をさせた。全部で10クラス、このままでは知り合いにも会えて、天の計らいとしか言いようがない。
なぜこの教室にいる。
光野は早く来た。正彦が教室に入った時、彼はすでに席に座っていた。
正彦が現れると、教室には何人かの女の子の目が光った。
女の子に好かれるな。
「ねね、前回何点?」
「80点。」
80点。
優等生だ。
「80点!じゃテスト中助けてくれ!」
「俺も俺も。」
「俺もだ!」
正彦の前に座っていた女子が中間試験の点数を話したところ、周囲からお世話にする声が相次いだ。この女の子は目を後ろに向けて、勇気を出して振り向いた。
「あの、黒田さんは?私は答えを伝えます……」
周りの同性の嫉妬と異性の軽蔑の目の中、彼女の声がどんどん小さくなる。正彦は答えなかった。教室でブーイングが起こり始め、気まずい場面になった。
「ちょと、彼女は聞いてるぞ。」
正彦の後ろに座っていた男子は不満した。
「いらない。」
「じゃ、答えを伝えて。」
「ことわる。」
後ろ座った男子は不満で、文句を言おうとしたとき。正彦は左に座っていた光野のいす脚を蹴った。
「彼女の数学前回80点。お前は?」
光野は学校で有名な氷河だ。全身が冷えきっていて、女子たちはチラッと見ているだけ。正彦以外、誰も話しかける度胸がない。
光野は正彦を無視した。
正彦は顔色をうかがうことはしない。光野が無視すると、彼は二度といす脚を蹴った。
「返事しろ。前回何点。」
「100点」
「満点か。ちょうど、俺もだ。」
二人の会話を聞いて、前の女の子を振り向かせなかった。その後の9つの試験でも声をかけなかった。




