第十一話 何か忘れたような⑤
「一人は直人のお父さんね。もう一人は誰だけ?同級生?正彦の付き人かな…」
直人はすぐに光野に電話をかけたが、出てこなかった。直人は正彦の携帯番号を持っておらず、靴を履くと階下の寮へと走り出した。寮は2棟あり、毎棟5階建てだ。直人は2棟に住んでいる。2棟の4階と5階にはomegaの住む場所。1棟の4階と5階にはAlphaの住む場所。残りの階はbetaの部屋だ。Alphaとomegaは相手の寮に入ることは禁止だ。
直人は正彦いる1棟に最速で乗り込んだ。警備員の叫び声をともせず、狂ったように5階に向かって走っていった。
「ポンポン、ピンポンピンポン、ポンポンポンポン」
正彦が横になって漫画を読むばか、チャイムの音とともにドアがたたかれた。
「誰だよ。」
正彦はドアが開いた瞬間、直人は彼を捕まえて逃げた。
「なんだ!」
正彦は捕まった手を引き返し、不満だった。
「光野は危険だ、火事にあった!」
「火事?」
「こら!ハハ…出、出て行け!ここはomegaが、ハハ…立ち入り禁止だ!」
この時、警備員のおじいさんが息を切らしながら追いてきた。彼は直人を引っ張って階下に引く。直人は振り返って声を張り上げて叫んだ。
「彼は今晩ご飯を食べない。低血糖があるから部屋に出られない!」
「こら、なにすんだ!」
直人は叫んだ後、警備員の手を振りって、階段を飛び降りた。警備員は仕方がなく、直人が寮を飛び出すのを見るしかない。
火事?低血糖?何を言ってる。正彦は状況がわからなかったが、直人を追って光野の住む場所へと向かった。
直人は5分ほど走ると、木の焦げ臭いにおいがした。夜は暗くて黒煙は見えないが、直人が顔を上げ、やはり遠くないところで炎が動いているのを見えた。彼は走りながら消防隊に電話した。
火事は隣家から伝わった。隣家は誰もいなようで、今夜はけが人はない。伝わった火はすでに光野の家屋を半分焼いた。
直人は焦った。ドアはロックされて、入らない。彼は家の後ろに回って、石で窓を割った。割れた窓は風を帯びて、中の炎をピューピューと鳴らす。光野の一戸建ては2LDK。直人は入って、先に出口のドアを開けた。そして2階へ直行。
幸いなことに、光野の寝室は火事の反対側だ。彼は低血糖のため、ブドウ糖を食べ、ベッドに寝ている。
「光野?光野!」
「……」
直人の声?光野は目を開けようとしたが、開けられなかった。直人は光野が目を覚ませないのを気づいて、光野の手を肩に置いた。彼は光野の体を引きずって階段口に向かった。だが、この速度では遅すぎる。
「トン」
直人は階段の曲がり角で、燃え盛る炎が玄関に到着した。木材が燃えて変形するにつれて、ドアも地面に倒れてしまった。炎が出口をほとんど塞いだ。




