第二十二話 婚約④
雅子の答えを聞いて、拓弥はまるで詰まったパイプから塞がれたような感覚がした。彼はまず顔を揉んで、笑い、最後に呆れたように首を振った。感情が落ち着いた後、彼は手を顔から離した。
「光野は、あなたが実の母親ではないと思っているんだよ。」
「?」
「彼はあなたが義母だと思っているんだ。」
「えっ?」
雅子は光野を引き寄せ、無理やり光野を自分の目線に合わせた。
「そう思ってた?」
光野は頷いた。
違うのか?
雅子は最初に顔をしかめ、そして腰に手を当て唇を噛み、その場で2周歩き回った。最後に憤然として顔を上げた。
「このくそ…自分がどうやって母親のお腹から出たのかも忘れたのかい?」
…自分がどのように生まれたか覚う人いる?
「その時お前をお腹に抱えてビクビクして、お前の父は私たちのためにお前の祖父の前でひざま…」
「んっ、ん!」
拓弥は雅子の言葉を遮り、せきばらいをした。
「十五年前のことね、私とお母ちゃんは結婚式を挙げた。でも、内密で、証明書はなかった。お前も知っているはずだ、祖父は結婚対象についてかなり厳格だった。彼は私とお母ちゃんが一緒にいるのを認めなかった。」
「駆け落ち?」
…そういう言い方もあるけど。
「でも最後はお前の祖父に捕まった。その時、雅子はすでにお前を産んでいた。」
「……」
入院手続きを通して捕まったのか?
「しかし、兄の家では…兄はずっと子供がいなかった。お前の祖父は様々な理由で、生まれたばかりのお前を兄に譲った。兄に継承者ができたため、お前の祖父はやっと私たちの関係を承認した。」
「婚前妊娠?」
「ちゃんと式を挙げた!参加した人は私たち2人しかないけど。」
…婚姻届は受け取らなかっただろう。光野は覚えている。拓弥と雅子の結婚式の写真が祖父の家に見たことある。その結婚式のアルバムの中に、ある家族写真がいる。その写真の中で、自分が祖父の膝の上に座っていて、祖父の後ろには自分の両親、そして拓弥と雅子が写っている。
だからその写真が正式な結婚式だろう。