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モヒトは酒じゃないⅠ  作者: 清蘭
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第二十二話 婚約③

 拓弥は黙った。




 ただの仮標記で、裁判所に持ち込んでも実質的な罪状が立証されることはできないだろう。光野は心の中で嘆息したが、拓弥は光野がいじめに遭ったことで、いつもの厳密な論理思考を失っていたことに気づかなかった。雅子は再び光野に問いかけた。




「嫌いなのか。その、仮標記は……黒田しかできないの?」




「他のAlphaのフェロモンに拒否反応がある。」




「そんな…」




「そんな……」




 雅子は2度言いかけ、目に涙を浮かべた。




 光野は深呼吸し、ついに顔を上げた。




「お父さん。私は小さい頃、特に何も望んだことはありませんでした。でも今回は、自分で決めたいんです。私、腺体摘出手術を受けたいんです。」




 光野の目は固く、拓弥はどう口を開ければいいかわからなかった。




「なんで? 黒田がそんなに嫌いなの?」




 で、何で敬語?疑問があるが、雅子は聞きなかった。




「あいつ、好きな人いるかも。」




「かも?」




 学校で何度か見かけたことがある、正彦の周りにいるさまざまな女の子。そして、病気のときに、頻繁にかかってきた電話。名前からして彼の家族ではないようだ。自分の感だが、そういう行動できる人は、正彦とて普通の関係ではないと判断できる。




「光野、ただの可能性のために自分の将来を台無しにすることはできないんだ。」




 拓弥が口を開いた。彼は光野の決定を否定するつもりはなかったが、彼の気持ちを取り戻そうとしていた。




「その理由は、黒田だけの問題じゃないんだね。他にも理由があるか?」




 やはり目を合わせることができない。拓弥の視線は光野を見透かすようで、隠すことはできなかった。今、光野には自分の心配を話すしかなかった。理解してもらえることを願いしかない。




「いいえ、もしくは自分の人生を救うチャンスだと思いました。」




「?」




 雅子は頭が混乱して息子に見つめた。




「実は私、結婚は恐怖だと思ってます。私は母と同じ、結婚で命を落とすの運命を怖くている。」




「母と同じ?」




 雅子はそれが不思議だった。彼女は元気に生きている。




「そう。正彦は好きな人がいる可能性があります。感情の面でも不安定な人なら、私は手術を選びたいです。」




「ちょっ、まっ、待って。」




 拓弥はすごく違和感と感じた。自分と雅子はいつも仲が良く、自由な恋愛婚だった。光野に結婚恐怖症を与えたとは考えにくい。昨夜眠れなかった拓弥はソファにもたれ、眉をひそめて目を閉じ、鼻筋を押していた。そして、何かを思い出した。




「雅子、彼の出身について説明しなかった?」




「説明?」

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