第二十二話 婚約②
「……」
「今のあなたたちには何の関係もありません。こんなはっきりしない状況で、感情に対する責任も果たせません。」
光野が反論しないのを見て、隆矢は拓弥に話し続いた。
「学校のことは私が解決します。光野には処分しないから安心してください。だから婚約のことは急いで否定しないでください。」
拓弥は隆矢の態度に感心し、偏見はまだ残ってるが、少し緩和されたようだ。
「私は息子の選択を尊重します。」
「ありがとうございます。では車に乗りましょう。」
食事を終えた後、拓弥は隆矢に送ってもらうことなく、長谷川が車で迎えに来るよう手配した。正彦は隆矢の車に乗り込んで黙っていた。
「優秀な子だな、好感ないか。」
「前に責任を取るって言った。」
「兄さん、嫂が養子だって聞いたんだけど?」
正彦は前の席を睨みつけた。
「なぜ知ってる。」
「さっき兄さんがお父さんに話してるの聞いちゃったよ。近くにいたから。」
車内は静かになり、隆矢が前の席を鋭く見つめた。
「養子にも養子の良さがある。時には彼らにとって家族から離れることが自由だ。」
光野の妹は学校の夏キャンプに参加していた。光野はソファに座っており、向かいの拓弥と目を合わせる勇気がなかった。
「手術には賛成しない。」
最初は黒田が手を出した。息子がいじめに遭って、なぜ手術を受けなければならないのか?本来、責任を取るべきは黒田なのだ。さらに、omegaが腺を取り除くと、ホルモンも取り除かれる。寿命や体には影響しないなど、拓弥は信じていない。
拓弥が反対すると聞いて、光野は身体を硬直させた。やはり彼は反対するのだ。雅子は光野の変わった様子に気づいたようだ。彼女は光野の隣に座り、肩に手を置いて彼の硬直した身体を感じた。
「正彦が嫌いなの?」
光野は雅子の問いに耳を傾け、指を握り締めた。
「…うん。」
「彼が強引だっただろう。もしそうなら、法的手続きを取る。」
息子が相手を好きでないことを聞いて、拓弥はさらに怒りが湧いてきた。すでに裁判所に行く方法を考えていた。
「そんなこと言うな、黒田が刑務所に入ったら、光野は手術を受ける道しか…」
「……」