第二十二話 婚約①
やはり親は親で、直人は恐怖を感じると、つい正彦に寄りかかった。正彦はそれがどうしたのか不思議に思っていた。
「お前、今日は変じゃないか?」
「エレベーターの近くで見たんだ。」
「怖がるな、声をデカすぎ。」
直人が怖がっているのを見て、光野は正彦に批判した。
「怖がる?お前、ただお腹が空いてるだけだろ、食べないと大きくなれないぞ。さっ、ご飯しに行くだ。」
隆矢の車のそばには見知らぬ顔があった。直人は自分のおじも来たことに気付いた。この叔父は正彦の継母が連れてきた子供で、正彦は彼を嫌がっていた。
「何しに来た?」
「母ちゃんに挨拶しに来いって言われたんだよ。嫂に。」
「宣明?いつ帰った?」
「今朝。昨日夏休みに入ったから帰ってきた。」
隆矢は正彦の気性を知っていたので、すぐにその2人の会話を遮り、正彦が話すのを止めた。
「まだ正式に付き合っていないんだから、そんな風に呼ばないで。」
宣明はコンビニから出てくる光野の両親を見て、微笑みを現れた。
「大丈夫、聞こえないから。」
雅子は全員に水を買って分けていたときに宣明を気づいた。隆矢は紹介し、宣明も礼儀正しく挨拶した。
「隆矢、二次分化は大変なことだ。私と子供の父親は話し合って、他の病院に行ってみるつもりだ。」
「さっき病院で会った医者は、東京医師会の副会長家村の弟子だ。若いのにすでに有名、彼は駄目だと言ったら、それが事実なことだ。」
「それじゃあ…」
「二人の子供に婚約させたいと思っているんだ。」
隆矢は真剣な目つきで、雅子のそばに立っている拓弥を向いた。
「嫌です。」
その答えは隆矢の後ろに立っていた光野から返ってきた。
彼は一番最初に反応し、正彦よりも早く答えた。拒絶されることも隆矢の予測の範囲内だ。この優秀な子はやはり正彦に興味を持っていないんだ。
正彦が答えようとしたが、光野に先を越された。彼の同意は喉までつかえ、光野の答えに不満を抱いていた。
早すぎだろう。俺をこんなに嫌っているのか?少しでも好意も持ってないのか?
隆矢はうなずいた。
「これは単の提案です。あなたたちの意志も尊重しなければなりません。」
正彦は光野を見て、報復心を抱いていたようだ。彼は隆矢の耳元で光野の身元について小さな声で話した。隆矢は聞いて、表情は一切変化しなかった。
「木村くん、あなたが反感を抱くのはわかっていますが、医者からも聞きました。二次分化の仮標記は些細なことではありません。回数が多くなるとフェロモンの依存が生じます。」